精華小劇場の存続について、毎日新聞大阪本社版12月16日付夕刊が事務局の丸井重樹コーディネーターによる提案を掲載しています。
毎日.jp「新ビジネス創世記:精華小劇場 芝居の地に踏ん張り時」
この記事でも、先に紹介した日経大阪12月2日付夕刊の記事でもそうですが、有料での貸館については、これまで民業圧迫にならないよう控えてきたと書かれています。いまになってこんなことを言い出すのは、非常に疑問に感じます。
精華小劇場がこれまで貸館を控えてきたのは、なにより無料によって劇場での充分なリハーサル期間を保障し、作品のクオリティを上げることが重要だと考えていたからではないでしょうか。そもそも扇町ミュージアムスクエアや近鉄小劇場の代替劇場の役割を担っていたわけですから、民業圧迫は最初から棚上げだったのではないでしょうか。
もし、本当にこれまで民業圧迫という意識があったのなら、今回の貸館開始は「民業圧迫になっても構わない」と読み取れてしまいますが、それに対するエクスキューズはなにも書かれていません。読んでいて非常に矛盾を感じます。
私は、公共ホールが本当に公共にしか出来ない理念ある活動を行なうのなら、結果的に民業圧迫になっても構わないと思っています。公共にしか出来ない仕事というものがあるはずですから、そこは民間劇場と棲み分けをすればいいと思います。だから、精華小劇場の劇場費無料によるクオリティ向上は意味あるものだと思ってきました。それを、いまさら民業圧迫を考えていたと言われても理解に苦しみますし、劇場としての理念のブレを感じます。
丸井氏は世田谷パブリックシアターを例に挙げていますが、学ぶべきは設備や体制ではなく、その理念と自主事業への志ではないかと思います。現在の「無料の貸館」と思われても仕方がない自主事業=精華演劇祭の制度を改め、収入面も含めて真の劇場プロデュースに近づけていかないと、劇場側も打つ手がなくなるし、カンパニー側も甘えてしまうと思います。
丸井氏は一方で京都芸術センター「演劇計画」という理念の集積のような企画を手掛けています。その手腕を精華小劇場でも発揮していただきたいと感じます。取材で答えるだけでなく、公式サイトでコンセプトのブレを修正し、その上で関西小劇場界のあるべき姿を提言すべきではないでしょうか。
(参考)
精華小劇場の貸館開始を問う