兵庫県の尼崎市ちかまつ・文化振興課が無差別マルチポストをかけている近松賞(近松門左衛門賞)戯曲募集の告知、これっておかしいと思いませんか。
演劇情報ポータルに書くのなら理解出来ますが、全国のカンパニーの掲示板、至るところで目にします。公演情報なら、そのサイトを訪れた読者に周知したいという目的があると思いますが、戯曲募集ならターゲットはそのカンパニー自身であるはず。だったら掲示板に書き込む必要は全くなく、カンパニーに直接メールすれば済むことです。なぜ掲示板に書くのでしょう。
近松賞は広告も出し、戯曲を書いてみようと考えている層にはもう充分認知されているはず。マルチポストという最も安易な方法で場の雰囲気を損なうのは、非常に逆効果だと思います。
もう一つ不思議でならないのは、行政が主催する戯曲賞なのに、問い合わせ先のメールアドレスがhotmailであること。こんなところでフリーメールを使っていては信用に関わると思いますが、なぜcity.amagasaki.hyogo.jpのアドレスをつくらないのでしょう。
近松賞はたった2回で休止発表したものを市議会の要求で5か月後に復活させたという、尼崎市の混乱ぶりを全国に知らしめた経緯があります。募集方法も含めて、厳しい目でウォッチしたいと思います。
荻野さんこんにちは。
私はもちろん内部の事情など知るよしもありませんが、尼崎市の担当職員(メールアドレスを支給されないのは正規職員ではなく嘱託職員だからかもしれない)はこうした種の経験に乏しいので、知名度をあげる→応募数を多くするために思いつくことを手当たり次第やっているのだと推測します。とりあえず復活はしたものの、応募数がある程度なければ市民の理解は得られない、応募数の多寡によっては今後再廃止もあり得る、というような厳しい状況に置かれているのではないでしょうか。もちろん、荻野さんが批判されている大本であるところの行政の演劇に対する理解のなさ、という部分は弁解のしようがありませんが、実際に携わる職員の意識はそれとはまた別かもしれません。
百歩譲ってそうだとしても、インターネットのマナーではマルチポストは「荒らし行為」ですから、その自覚を持っていただきたいと思います。どうしても複数の掲示板に書きたいのなら、掲示板ごとに別の挨拶文を添えるぐらいの配慮をすべきでしょう。
応募数が少なければ再廃止もあり得るというのは私も考えましたが、無自覚なマルチポストは演劇の振興よりも、結果的に賞の存続や尼崎の名前を売るほうが重要に映るのです。本音では重要でしょうが、それを露骨に出してはいけません。
「崇高な目的の為なら、多少の犠牲や迷惑はやむを得ない」というのでは、それは(大げさに言えば)ブッシュの理論とあんまし変わりない印象を受けます。結果として、近松賞へのイメージダウンに繋がるだけではないのでしょうか。荻野さんがご指摘なさっているフリーアドレスについては、さらに残念に思います。広告付フリーアドレスは、皆で平等に負担すべきインターネットの運営維持費を、メールの受信者に一方的に押しつける行為であると、認識するべきです。
指摘されて初めて、「ああそう言われれば」と思ったんですが、目障りなだけで大して迷惑でもないし、目くじら立てるほどじゃないんじゃないの、というのが率直なところです。
それこそメールで指摘してあげればいいんじゃないでしょうか。
尼崎市民が「市のイメージダウンだ!」ということで憤るならわかるんですが。
自治体主催のイベントってことでは、もうみんな忘れてると思いますが、
東京都がやったコレ↓
http://www.metro.tokyo.jp/INET/OSHIRASE/2000/04/20A4R700.HTM
なんかどうなんでしょうねえ。
相当な額の税金を使って大騒ぎした割には、大した成果は無かったと思うんですが。
こちらは都民として住民税払ってますし。
最初に書こうと思って忘れていたんですが、そもそもこれは「マルチポスト」なのか、という疑問もあります。本来の「マルチポスト」、つまりネットニューズや同一掲示板の複数スレッドへの同時投稿と違って、ネット上に散在する複数の掲示板に同じ投稿を行うことをマナー違反だと責めるのは酷なのではないでしょうか。テレビを見ていて同じコマーシャルがたまたま複数の番組で流れている、というのと同じ感覚で看過すればいいように思いますが。
また、広告付フリーアドレスについての東内さんの指摘は、失礼ながらいささか的はずれではないでしょうか。P2Pで動画ファイルを交換する時代に、たかだか二三行の広告で消費される帯域などたかがしれています。インターネットの運営維持にかかるコストを誰が負担するのか、という問題は、民間のプロバイダが登場した段階で議論しても無駄、ということになっているはずです(一応誤解のないように申し添えておきますが、負担の不公平はいまでも存在しますし、私も組織のネットワーク管理者の一人として、通常のユーザ以上の負担を強いられている、という思いはあります)。
要するにですね、芸術の保護育成についても素人だしインターネットについても平均的なユーザなみの知識しか持っていない行政の一職員に対して、その道のプロである荻野さんがインターネットのマナー云々を言うのは、角を矯めて牛を殺すことになりはしないか、というのが私の危惧なのです。徳永さんが千年文化芸術祭について言及しているのでそれとの関連でいえば、某イベント会社(?)に丸投げして(=税金も相応に投入して)形だけは立派なものができあがってくるのと、いかにも素人くさい近松賞の運営と、どちらが好感が持てるかといえば、私は後者です。
皆さん、いろいろご意見ありがとうございます。
ひびのさんが書かれた
> テレビを見ていて同じコマーシャルがたまたま複数の番組で流れている、というのと同じ感覚で看過すればいいように思いますが。
というのは、これが多数の読者に向けた公演案内だったら私もそう思います。でも、特定のターゲットに向けた戯曲募集を一般読者が多い掲示板に書くのは、私はちょっと性格が異なるように感じるんですね。
例えば、いまサッポロビールが「麦芽とホップが、すべて『協働契約栽培』になった」というキャンペーンを張って、CFを多数流しています。これを見ても気になりませんが、もし「協働契約栽培を結ぶ農家募集!」みたいなCFをガンガン流したら、気になると思います。それなら、直接農家と交渉したらいいじゃないかと思うわけです。
世の中に掲示板しか手がないというなら別ですが、近松賞は演劇雑誌に広告掲載しているし、資料請求すれば無料送付すると書いていることは、郵送費も潤沢にあるはずです。当然、DMも多数出しているでしょう。だったら、演劇情報ポータル以外の掲示板に書くのは、もう遠慮すべきじゃないかと私は思うのです。戯曲を書きたい人なら、近松賞の存在はもう充分わかっているはずです。
小劇場は観客とつくり手の距離が近く、それはいい面もあるのですが、観客=つくり手と受け取られると、部外者には非常に閉ざされた世界に見えるという弊害があります。内部にいる人間が自覚して情報をコントロールしていくことが、私は演劇人口を増やすために重要なのではないかと思うのです。
当該の書き込みについては、広告投稿の少ない、劇団と観客のコミュニケーションに寄った掲示板において、確かに違和感を醸し出している、と思います。
無関係の劇団の公演告知や、演劇と関係ない広告投稿についてはすぐ削除する態勢のところでも、何となく扱いに困ってか、放置している印象です。
私のマルチポストの基準の一つは「それにレスポンスしても、見てはもらえないだろうな」ということです。
近松賞の投稿に「お疲れ様です、準備は如何ですか?」などレスしてもなぁ・・という気持ちにさせるところが、コミュニケーション掲示板において違和感を生んでいるのだと思います。
(知ってる劇団の公演告知だったらレスつけますし、お客さんも、その劇団との関係性を読むことができます)
いずれにせよ、このような場で論の対象になってしまう事や、フリーアドレスに違和感を持っている私のようなヒトに反感を買う(劇団員諸氏なら何とも思いませんが、行政のやる事じゃないですよコレ)事によって、「好感を与えるための広告」としては、すでに失敗しているのではないでしょうか?
この問題は私も気になっていました。
世田谷パブリックシアター技術部の舞台技術者養成講座のマルチポストも目につきましたが、こちらはメールアドレスもありませんでしたね。
荻野さんのご指摘はプロデューサーの視点から
公立劇場の広報の在り方に異議をとなえ、広く舞台制作者のメディアへの意識を高めようとされているのだと思います。
「看過すればいい」「直接メールすれば」といった意見はそもそもfringeの趣旨からいってお門違いでしょうね。
東京都千年文化芸術祭についての不満はちょっとよくわかりません。本題から離れて「こちらのほうが気になる」というようなことをいう意味もわかりませんし。それこそ都知事か、都政の相談窓口にでもメールなさるのがよろしいかと。
ちょっと言葉が足りませんでしたが、荻野さんの問題提起自体はまっとうなものだと思います。もっと賢くやろうぜ、ということですよね。それはそう思います。
千年文化芸術祭は選考方法等いろいろ問題があったと思っていますが、要は税金の使い方(おそらく賞金総額の数倍の額)として近松賞の方が幾分ましに思えるということで、日比野さんが簡潔に言及してくださった通りです。個別の事例について是か非かを論じるなら、他のケースと比較したくなるのは自然じゃないですかね。
ちなみに具体的な問題点の指摘は当時、事務局の方にメールで送りましたが、明確な回答はありませんでした。
訂正。
>ちなみに具体的な問題点の指摘は当時、事務局の方にメールで送りましたが、明確な回答はありませんでした。
と書きましたが、返信が無かったわけではありません。全体としては納得し難かったのですが、一点だけ明確に回答していただいたのを思い出しました。
「審査員(一般公募の特別都民審査員ではなく作品賞を選定した審査員)の氏名は公表すべきではないか」という指摘に対しては
「公表しないことを前提にお願いしたので公表できない」
というお答えだったと思います。
ええと、だから、自治体の税金の使い方についての話題ではもともとないので千年文化芸術祭批判が出てくることがとても突飛に思えるということです。だって、荻野さんは近松戯曲賞に税金を使うなと主張されているわけではないですよ。
まったくとはいいませんが性質もスケールも違う別個の問題として考えるのが妥当ではないかと思います。
>夏井さん
それはおっしゃるとおりで、僕としてもふと思い出して言及しただけで、ことさらに蒸し返そうという意図はありませんし、千年文化芸術祭よりましだから近松賞は問題なかろう、などと主張するつもりもありません。
ただ、近松賞だけに目を向けて「尼崎市はけしからん」みたいな雰囲気になるのも怖いので、他の事例を思い出してみるのも無意味ではないのではないかという気がします。
>夏井さん
fringeの趣旨から「公立劇場の広報の在り方に異議をとなえ、広く舞台制作者のメディアへの意識を高めよう」という意図が荻野
さんの問題提起にあったことは、この議論に参加している人はみなわかっていると思います。
最後の発言で明確にしているように、そもそもの私の主張は荻野さんの意図を踏まえた上で、(1)異議を唱えるほど尼崎市の「広報の在り方」がおかしいとは思えない、(2)市行政が力を入れていない現状で外野が色々云うことはせっかく(再び)出た芽をつぶすことにならないか、というものでした。
したがって、夏井さんと違って「自治体の税金の使い方についての話題ではもともとない」という把握は私はしていません。尼崎市の行政が近松賞に対してもっと理解があれば、東京都のように潤沢な予算のもと、プロフェッショナルを雇い、もっと洗練された広報活動を行っていたはずです。
しかし内実はおそらくそんな状況ではないでしょう。荻野さんが「近松賞は演劇雑誌に広告掲載しているし、資料請求すれば無料送付すると書いていることは、郵送費も潤沢にあるはずです。当然、DMも多数出しているでしょう」と書いていらっしゃいますが、ご存じのとおり演劇雑誌の広告掲載料は微々たるものですし、資料請求はこれまでの応募者数を考えればそれほど多くないはずです。予算規模はおそらく賞金・上演にかかる諸費用込みで五百万そこそこといったところではないでしょうか。
それでも「これだけ予算を使っているのにもかかわらず、応募者数が二百超というのはどういうことか」という議論が市議会などで出てくるはずです。今年度はそのような事態を避けたい、でもこれ以上お金は使えない、という担当者の必死の思いが今回の大量投稿につながったのだ、と私は考えます。
自治体の演劇行政は一般的にいって貧しい状況にあることはみなさんご存じだと思います。多くの担当者は配置転換で来ただけで演劇行政について詳しくないし、詳しく、かつ熱意を持った担当者がいても、周囲や議会の支援がなかなか得られない。荻野さんが演劇制作者の意識を高めようと日々努力をなさっていることには敬服の限りですが、このような状況で、民間の演劇制作者と、行政における演劇育成支援担当者を同断で計ることは難しいし、外部からの批判があると、「それ見たことか、だからこんなことに無駄金を使わないでもっと市民のためになることに使おう」と言い出す議員や職員が出てくる、という事態を私はいちばん恐れます。
念のために確認しておきますが、私は「だから行政のやっていることにケチをつけてはだめだ」と主張したいわけではありませんよ。ただ判断がわかれるグレーゾーンの行為についてうるさく云うのはどうなのか、ということです。とくにそれが一般的なインターネットのマナーということであれば、荻野さんその他が出張って云うことでもないでしょう、ということです。
>ひびのさん
近松賞の予算は上演経費も含めて約3,000万円です。神戸新聞2003年11月12日付朝刊が伝えています。賞金300万円に著名な選考委員を集め、受賞作はプロデュース公演で巡演するわけですから、500万円では不可能です。
近松賞の休止は、尼崎市の経営再建プログラムに盛り込まれたものですが、市議会の強い意向で復活しました。市自身も「全国的にも大きな注目を浴び、劇作家を志す多くの人たちの目標となっている」(市民局)と表明しています。
尼崎市経営再建プログラム(「近松賞」で検索してください)
http://www.city.amagasaki.hyogo.jp/public/kaitou/15015.htm#kekka
考えてもみてください。市の組織名に「ちかまつ・文化振興課」と付けるほど、近松は尼崎市の看板なのです。一部の職員が無理解の中、手づくりでなんとか運営しているのではなく、市の看板事業として行ない、議会も支持しています。それなのにマルチポスト、hotmailはおかしいと言っているのです。
「応募者数が二百超というのは」、これはすごいことなんですよ。前回の応募作品272本は、未発表戯曲を対象にした賞では日本記録だそうで、サイトでもそれを力説しています。
第2回「近松賞」応募状況
http://www.city.amagasaki.hyogo.jp/web/contents/info/city/city03/chikamatsu/boshu/oubjokyo-2.html
今回のマルチポストは、再度日本記録更新を目指して、事務局が確信犯でやっているという気がしてきました。これでもそっと見守るべきだと思われますか?
本当に逆境の中やっている賞なら、私もこんな問題提起はしません。その辺はわきまえているつもりです。
予算規模3000万円ですか…それは失礼しました。それだったら荻野さんの言っていることのほうが正論ですね。どうも最近、地方自治体での演劇育成支援について暗い話を聞くことが多く、その類推で議論をふっていました。思い込みでものを言って申し訳ありませんでした。今度開場する某公共劇場の年間予算より多いのですね…