作成者別アーカイブ: 荻野達也

「トップレベルの舞台芸術創造事業」(仮称)で旅費・運搬費が対象外なら、「舞台芸術の魅力発見事業」を復活出来ないか

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芸術文化振興基金・芸術創造活動特別推進事業の締切(11月19日消印有効)が迫り、制作者はいま申請書作成の佳境を迎えていると思う。

平成23年度芸術創造活動特別推進事業は、予算要求が通れば「トップレベルの舞台芸術創造事業」(仮称)への移行が予定されており、公演本番にかかる費目が支援対象外になる代わりに、公演以前の芸術創造活動は黒字であっても支援される予定だ。詳細が募集案内では不明瞭だが、11月1日に発行された日本演出者協会機関誌『ディー』5号のインタビューで平田オリザ氏はこう答えている。

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候補作が上演台本中心となったいま、白水社は岸田戯曲賞の推薦・選考時期をずらすべきではないか

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演劇関係者による岸田戯曲賞候補の推薦締切が今週だった。例年12月下旬に最終候補作が発表され、1月下旬~2月上旬に選考会が開かれて決定するスケジュールだが、そうなると11月下旬~12月に上演された作品はどうなるのだろうか。

白水社の公式サイトでは、「選考対象は、原則として1年間に雑誌発表または単行本にて活字化された作品とする。ただし、画期的な上演成果を示したものに限って、選考委員等の推薦を受ければ、生原稿・台本の形であっても、例外的に選考の対象とすることがある」とあるが、近年は小劇場系の上演台本が多数を占めており、そうなると11月下旬~12月に上演された作品の扱いが気になる。

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劇場法(仮称)が総論賛成各論反対になる理由――推進派はここをもっと説明すべき

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劇場法(仮称)に関する演劇界の議論は一巡し、総論賛成各論反対の印象が強い。各論の部分に様々な思いが交錯し、論点が見えにくくなっているように感じる。私個人は5月16日に「劇場法(仮称)に対する私の考え」を記し、劇場法(仮称)の提言自体には賛成を表明したが、合意形成にもっと時間をかけること、民間劇場に対する優遇措置を条件としてきた。この半年間の経緯を踏まえ、私なりに各論部分の問題点を解きほぐしていきたい。

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劇場法(仮称)以前に興行場法を改正すべきでは

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劇場法(仮称)に関する議論は、専門職員の配置やアーツカウンシルの在り方に収斂してきた感があるが、ここで原点に立ち返って劇場を巡る法律について考えたい。ハードとしての劇場を規定する法律は建築基準法、消防法、興行場法などがあるが、かつて平田オリザ氏は根拠法のない劇場についてこのように書き、自分たちでなにも決められない劇場を嘆いていた。

現実には、劇場を管理する法律、すなわち劇場の、表現の場としての権利と能力を守り促進する法律がないために、劇場は消防署と保健所の管理下におかれているのだ。

平田オリザ著『芸術立国論』p.171(集英社、2001年)

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劇場法(仮称)推進派はこのインタビューを読むべきだ

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劇評サイト「ワンダーランド」のインタビュー記事「芸術創造環境はいま―小劇場の現場から」第3回の上田美佐子氏(シアターΧプロデューサー兼芸術監督)が素晴らしい。拙速な劇場法(仮称)制定に警鐘を鳴らしている上田氏のまとまった考えが読める。

プロデューサーというのは、どうしても実現したくてやったもので赤字をつくったら自分で背負う、そのくらいの覚悟でやるべきものなのですし、企画だって現在こそやるべき課題を見出し試みつつ「道なき道」を探求、葛藤を継続する。お金を積まれたからって拡ける道程ではない。簡単に上から若き未熟者を配してやれる、そんなことは妄想じゃないかと思います。

上から法律化されたものを当てがわれるのは絶対に違うと思いますね。大事なのは年取った世代であろうが、活躍中であろうが、新人であろうが、問題を提起する場を創造現場からつくることじゃないかと思います。

これを読んで、一人一人が改めて劇場法(仮称)について考えてほしい。推進派から考えを変える方もいるのではないか。それくらい心に響く内容だ。

山本忠氏と日活JOE氏が一日限りの俳優復活

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六甲ヒルトップギャラリー「加藤文太郎展」

神戸・六甲山に登る六甲ケーブル「六甲山頂駅」天覧台内に、六甲ヒルトップギャラリーという施設がある。ここで神戸ゆかりの登山家・加藤文太郎の企画展が10月22日~11月17日に開かれているが、その関連イベントとして昨年の第16回OMS戯曲賞大賞を受賞した故・大竹野正典氏の遺作『山の声』のリーディング公演が11月13日にある。水難事故で昨夏急逝した大竹野氏が、加藤文太郎とパートナーの遭難を描いた二人芝居だ。加藤文太郎は新田次郎著『孤高の人』のモデルとして知られる著名な登山家だ。

これに出演するのが、2001年10月の遊気舎以来9年ぶりの俳優復活となる山本忠氏と、同じく1998年1月のファントマ客演以来ほぼ13年ぶりではないかと思われる日活JOE氏だ。二人は90年代前半にこれっきりハイテンションシアター(現・ファントマ)で活躍。山本氏は94年に遊気舎『交響詩・大森良雄』に客演し、その演技に惚れ込んだ後藤ひろひと氏が三顧の礼で96年に遊気舎へ迎えた名優だ。『ダブリンの鐘突きカビ人間』など、山本氏がいなければ誕生しなかっただろう作品も多い。JOE氏もこれっきりハイテンションシアターで数々の主役を務め、そこから自身のユニット・日活浪漫劇場を主宰した。

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『シアターアーツ』44号は精華小劇場の現状にフォーカス――DIVEとLLPアートサポートは未来を共に考えていくべき時期

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第3次刊行となった『シアターアーツ』(発行/AICT日本センター、発売/晩成書房)の2号目となる通巻44号が9月に出た。これまでの『シアターアーツ』は演劇専門誌というより学術誌と呼ぶべき内容で、よほどの評論好きしか手に取らないと思っていたが、第3次からは創造環境を巡る時事的・制作的な話題も多く、これまでに比べて近寄りやすくなった。私は演劇評論というものは作品だけを対象にするのではなく、創造環境全体を含めて対象にしないと同時代に語る意味がないと考えているので、今回の編集方針は評価したい。

第3次では毎号時事的な論考に加え、地域からの情報発信にもページを割いている。43号の論考は劇場法と支援制度の見直し、そして柴山麻妃氏(劇評誌『NTR』編集長)が福岡の90年代以降の歩みを概観している。『シアターアーツ』読者層を想定した鋭い分析が読めるので、福岡の演劇人はぜひ目を通すべきだろう。福岡の抱える課題をここまで端的に指摘した文章を、私は読んだことがない。

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『ポスターを貼って生きてきた。 就職せず何も考えない作戦で人に馬鹿にされても平気で生きていく論』

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ポスターハリスカンパニー代表取締役の笹目浩之(さすがわささめ)氏がパルコ出版から半生記を上梓する。「普通の就職をするのではなく、芸術の周辺で仕事をしたいと思っている人必読の一冊」とのこと。これは読まねば。装丁は同じ1963年生まれの東學氏(188)。

朝日新聞特集「文化変調 芸術とカネずさん」は助成制度の本質を見ていない

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朝日新聞東京本社版10月16日付朝刊の「文化変調 芸術とカネずさん」という特集記事はちょっとひどい。

国からの文化助成金・補助金に不正が相次ぎ、制度そのものが見直しを迫られているという趣旨で、舞台芸術と発掘調査の分野でそれぞれ具体的事例を挙げている。これ自体は間違いではないが、見出しや記事のトーンから現在の助成制度すべてが悪いように感じられ、これを読んだ一般読者の多くが「不況なのに芸術文化への助成なんて必要なのか」と思うはずだ。見出しがすごいので、ぜひ実際の紙面(3面)を見ていただきたい(ブログ「WIND MESSAGE」が画像をアップしている)。

芸術とカネずさん

演劇制作会社 国の助成金欲しさに出演料水増し

助成制度「無法地帯のよう」

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アーティストの評価は誰がやるべきか――平田オリザ氏のポスドク起用案に反対する

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日本でも国のアーツカウンシル試行的導入が平成23年度文化庁概算要求に計上されたが、全国のアーティストを誰が評価するかについて、平田オリザ氏はポスドクで調査組織をつくり、夜行バスで全国を回らせることを主張している。10月18日に開催された世田谷パブリックシアター特別シンポジウム「劇場法を“法律”として検証する」でも同じ趣旨のことを述べており、持論は変わっていないようだ。

30名ほどの若い専門家集団を作り、彼ら、彼女らに、深夜バスで全国の舞台芸術をつぶさに見て回らせる。ディスカウントチケットの飛行機と夜行列車で、世界中のフェスティバルを調査させる。その成果を報告書として評議委員会にあげて、助成金の配分や事後評価を行う恒常的なシステムを構築しなければなりません。

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