『BRUTUS』12月1日号特集「映画監督論」の覆面座談会で、長年アート系映画を手掛けてきた配給会社代表の方が、こう語っている。
これに対してコアな演劇ファンの数を考えたとき、こまばアゴラ劇場の支援会員数が一つの目安になると思う。平田オリザ氏は劇評サイト「ワンダーランド」が2009年に行なったインタビューで、支援会員制度に基づくコアな観客数を400人ぐらいだと答えている。アゴラ界隈で上演されるアーティスティックな作品に足を運ぶ観客数として、体感的にもそれぐらいではないかと思う。
これを単純に比較すると、映画と演劇のコアな観客比率は25対1ということになる。現在のリアルな状況として、制作者が自覚しておくべき数字だと思う。数字が小さいということは、逆に言えば工夫次第でこれから伸びる余地があるということだ。小さなパイを奪い合うのではなく、マーケット全体を広げる働きかけをしてほしい。
この配給会社代表は、最近のヒット事例としてこんな数字を紹介している。
この発言で注目すべき点は、宣伝費2,000万円が安い部類ということは、コアな映画ファン1万人のチケット代以上の宣伝費をかけても惜しくないということだ。つまり、コアな映画ファンが全員観るのは当然のことで、ふだん映画を観ない人をいかに取り込むかが勝負だということを意味している。コアな演劇ファンを奪い合って満足している小劇場界とは発想の次元が違うと思わないか。興行収入1億円を得るには、6万人に観てもらわないといけない。コアな映画ファンの6倍だ。演劇もコアなファンをクチコミの伝道師にして、その何倍もの人を劇場に連れてきてほしい。