この記事は2010年11月に掲載されたものです。
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山本忠氏と日活JOE氏が一日限りの俳優復活

カテゴリー: フリンジのリフジン | 投稿日: | 投稿者:

●「fringe blog」は複数の筆者による執筆です。本記事の筆者は 荻野達也 です。

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六甲ヒルトップギャラリー「加藤文太郎展」

神戸・六甲山に登る六甲ケーブル「六甲山頂駅」天覧台内に、六甲ヒルトップギャラリーという施設がある。ここで神戸ゆかりの登山家・加藤文太郎の企画展が10月22日~11月17日に開かれているが、その関連イベントとして昨年の第16回OMS戯曲賞大賞を受賞した故・大竹野正典氏の遺作『山の声』のリーディング公演が11月13日にある。水難事故で昨夏急逝した大竹野氏が、加藤文太郎とパートナーの遭難を描いた二人芝居だ。加藤文太郎は新田次郎著『孤高の人』のモデルとして知られる著名な登山家だ。

これに出演するのが、2001年10月の遊気舎以来9年ぶりの俳優復活となる山本忠氏と、同じく1998年1月のファントマ客演以来ほぼ13年ぶりではないかと思われる日活JOE氏だ。二人は90年代前半にこれっきりハイテンションシアター(現・ファントマ)で活躍。山本氏は94年に遊気舎『交響詩・大森良雄』に客演し、その演技に惚れ込んだ後藤ひろひと氏が三顧の礼で96年に遊気舎へ迎えた名優だ。『ダブリンの鐘突きカビ人間』など、山本氏がいなければ誕生しなかっただろう作品も多い。JOE氏もこれっきりハイテンションシアターで数々の主役を務め、そこから自身のユニット・日活浪漫劇場を主宰した。

この公演の仕掛け人はcommon cafeプロデューサーで、大阪ガス近畿圏部の山納洋氏。山カフェプロジェクトが運営する六甲山カフェ(大谷茶屋)、そして大阪ガスが主催するOMS戯曲賞の両方に携わる山納氏ならではの企画だ。山納氏の8月27日付日記によると、JOE氏は山と渓谷社大阪支社編集長を経て、現在も山雑誌の編集に携わっている。山カフェプロジェクトにも関係し、そこからキャスティングが決まったようだ。山本氏とJOE氏の共演は95年以来になる。山本氏から直接聞いた話では、動きのある演出になりそうで、二人で話し合いながら稽古を進めているらしい。

ちょっと信じられないキャスティングで、90年代の関西小劇場界ファンにはたまらない公演ではないだろうか。派手に宣伝しているわけではないので、気づいていない方のほうが多いと思う。定員50名で2ステージのみという、とても贅沢な公演だ。興味のある方はぜひ予約していただきたい。

『山の声』は大竹野氏主宰のくじら企画による追悼公演第三夜として、1月21日~23日にin→dependent theatre 2ndでも上演される。こちらは大竹野演出を忠実に再現した本格的再演となる。

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