演劇の創客について考える/(31)SNSやブログへ転載出来る舞台写真を提供する

カテゴリー: 演劇の創客について考える | 投稿日: | 投稿者:

●「fringe blog」は複数の筆者による執筆です。本記事の筆者は 荻野達也 です。

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●分割掲載です。初めての方は(予告)から順にご覧ください。

ここ数年、美術館へ行くと撮影OKのエリアが確実に広がっていると感じます。企画展なら記念撮影用のスポットが普通にありますし、フラッシュを焚かなければ作品を撮影出来る場合もあります。以前は権利関係や作品を傷めることへの配慮から、撮影は許されなかった印象が強いですが、ずいぶん変わってきたと思います。

撮影を許可している場合は、SNSへのアップも認めている場合が多く、これはSNSで拡散されて足を運ぶ人が増えることを狙ったものです。日本では、2017年に森美術館(東京・六本木)で開催された「N・S・ハルシャ展:チャーミングな旅」が、撮影自由にした最初の美術展として知られています。18年には日本の美術展で入場者数1位・2位になり、*1 その活動は書籍にもなりました。

一方、舞台芸術では撮影は固く禁じられていることが多く、開演前・終演後に舞台美術の撮影を認めている作品はありますが、上演中の撮影を認めている公演はほとんどありません。これは舞台芸術の性格上やむを得ないと思いますが、それなら主催者・上演団体が舞台写真を提供したらどうか、とずっと思ってきました。

いまや、舞台芸術でも最大の宣伝ツールは観客のSNSだと思います。テキストだけの感想より、舞台写真が添えられたほうがタイムラインで目立ち、より詳しい内容が伝わるのは言うまでもありません。それが認められていないため、観客は劇場入口やポスターの写真を撮るしかありません。映画の感想ツイートに宣伝用スチールを使うことが認められているように、舞台芸術も舞台写真を積極的に提供すべきではないでしょうか。

関係者に著作権、肖像権の許諾を得ておくことが必要ですが、宣伝協力として最初から契約に入れておけばよいことですし、そもそもメディアには舞台写真を提供しているはずで、だったら同じ写真を観客に提供してはいけない理由がありません。デジタルカメラの時代になり、舞台写真家からの納品時間も劇的に早まりました。限られた枚数でよいので、これはと思う数枚を先に納品してもらうことは物理的に可能なはずです。

観客が転載する際、タイトルやクレジットの記載漏れを防ぎたいなら、画像内に入れて提供すればよいと思います。タイトルはロゴの形で入れれば、見栄えもよくなります。下記は、パスプア『おくるないことば』(本拠地・札幌市)、ヨーロッパ企画『あんなに優しかったゴーレム』(本拠地・京都市)の例です。いずれもブログへの転載が認められています。

パスプア『おくるないことば』

ヨーロッパ企画『あんなに優しかったゴーレム』

ゲネ写真を初日にステージナタリーに提供している主催者・上演団体は多いと思いますが、それが実現しているのなら、Twitterを使って同じタイミングで観客にも提供出来るはずです。舞台写真があるとネタバレになってしまう、舞台写真はグッズ販売しかしないなど、明確なポリシーがある場合を除き、「創客」のためにも舞台写真を提供する公演があたりまえになればと思います。

もし、ステージナタリーに送るだけで手一杯なのであれば、文学座のようにステージナタリーから引用してもよいと呼び掛ける方法もあります。クレジットは観客に入れてもらう必要がありますが、これはこれでアリだと思います。

fringeでは、昨秋から舞台写真の提供をTwitterで提言してきました。重要なのは、公式に転載を認めていることを伝えるため、公式アカウントから発信すること。関係者のツイートでは、それが公式かどうかわかりません。必ず公式アカウントで転載許可を周知しましょう。クレジット、ハッシュタグ、画像へのタグ付けが条件なら、その記載方法も明記しましょう。最初はせめてTwitterだけでもとの思いからでしたが、SNS全体やブログへの転載も認めてもらえると、観客はうれしいと思います。

これまでTwitter上で転載許可を出した主な事例をスレッドにしていますので、下記からご覧ください。ギフトチケットを導入したブルーエゴナク『眺め』(本拠地・北九州市)の舞台写真が印象的だったので、映画と同様に引用させていただき、これを主催者・上演団体のほうから提供しませんか、と呼び掛けたのが始まりでした。

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  1. 『美術手帖』調べ []