演劇の創客について考える/(18)票券管理システムで取扱者別URLを発行出来るのなら、観客にも開放してアフィリエイトすればいい

カテゴリー: 演劇の創客について考える | 投稿日: | 投稿者:

●「fringe blog」は複数の筆者による執筆です。本記事の筆者は 荻野達也 です。

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●分割掲載です。初めての方は(予告)から順にご覧ください。

新しいジャンルの表現に触れてみたいと思ったとき、私が最も参考にするのは信頼出来る友人知人の推薦です。自分の感性に近いと思える人はわかっていますので、その人が強く薦めるものなら、自分が普段接していないジャンルでも、足を運んでみようという気になります。Twitterも同じ使い方をしており、アンテナ代わりにさせていただいている方が何人かいて、その方が薦めることで観たものがたくさんあります。著名人による推薦は気になる場合もありますが、その著名人の仕事に惚れ込んでいない限り、それほど影響は受けません。やはり相手の人となりを知り、感性を理解していることが重要だと思います。

劇場での演劇鑑賞というハードルの高い世界へ新しい観客を誘うには、だからこそ演劇ファンの友人知人の存在が欠かせません。慣れてしまえば演劇はむしろ一人で浸りたい世界ですが、最初は背中を押してくれる人が必要でしょう。「この人がここまで薦めるのなら、一度観ておこうかな」と思わせる友人知人が、これを読んでいるあなたの観劇歴の最初にもいたのではないでしょうか。

一方で、演劇の場合は実際に幕が開いてみないと、本当に推薦に値する作品かどうかわからないという、舞台芸術の宿命があります。「どんなカンパニーも傑作が3本続くことはまずありません」というのが私の持論です。自分が観てからでないと、自信を持ってオススメすることは出来ません。しかし、観劇後の推薦では上演期間が短く、予定が合わなかったり、チケットが完売のことも多いでしょう。この矛盾をどうすればいいのか、ワークインプログレスやトライアウトが普及しない限り難しいと感じていましたが、観客にとってリスクに見合ったメリットがあれば、公演前のオススメがもっと盛んになるかも知れないと考えました。

演劇のチケット販売に、ウェブ広告で活用されているアフィリエイトの考え方を導入すればいいのです。観客自身のブログやSNSでチケット販売を紹介してもらい、販売額に応じて紹介料を支払います。紹介料目当てで無責任に紹介すれば信用を失いますので、観客自身が過去の経験から本当にオススメ出来るものを厳選し、納得出来るものだけを薦めることになるでしょう。そうした考え方で、本当に期待出来る作品が事前に広まれば、読者や演劇界にも理解が得られるのではないでしょうか。秀作の再演時などにもってこいだと思います。

単なるオススメではなくアフィリエイトですので、薦める本数は厳選され、結果的に初心者がなにを観たらよいかがわかりやすくなるでしょう。来月のオススメを掲載するウェブサイトの多くは、選者1人につき3本以上を挙げていますが、初心者には多すぎると思います。1人1本に絞り、それを全身全霊を込めてプレビューしてほしいのです。観客がアフィリエイトで本気のプレビューを始めれば、そうした全身全霊のオススメが広まるのではないでしょうか。

具体的には、広く普及している票券管理システムを使用します。*1 多くのシステムが取扱者別URLを発行する機能を備えていますので、上演団体がアフィリエイトの参加者を公演ごとに募集し、一定の審査を経て個別URLを発行します。この審査では、演劇中心に書いている人よりも、幅広い趣味を持ち、豊富な話題を提供しているブログやSNSを選ぶようにします。そこで次回公演への期待を語ってもらい、参加者の感性を信じる読者に個別URL経由でチケットを購入してもらいます。なお、参加者自身が自分の個別URL経由で購入した場合は、紹介料の対象外とします。

代表的なアフィリエイトである「Amazonアソシエイト・プログラム」の現在の紹介料率は、DVD・ブルーレイが2%、書籍が3%ですが、大手プレイガイドの販売手数料が8%であることを考えると、全く新しい観客を創出するかも知れない可能性に対しては、8%の紹介料を払ってもいいのではないでしょうか。チケット代3,500円だと紹介料280円になり、自分の広めたい上演団体からこれだけ支払われるなら、参加者も責任を持って紹介するのではないでしょうか。

アフィリエイトをチケット販売に取り入れることに違和感を感じる方もいると思いますが、以前は仕組み自体がなくて不可能だったことが、インターネットの普及で簡単に実現出来ることに加え、公演前のプレビューという演劇マスコミだけに頼っていた機能を、その上演団体を観続けてきた信頼出来る観客が担うきっかけになればと思い、このアイデアを思いつきました。最初に書いたとおり、最も参考になるのは信頼出来る友人知人、Twitterでの推薦です。そうした人々が公演前にプレビューを出しにくい現状を、アフィリエイトが変える可能性があるのではないでしょうか。

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  1. チケットぴあはアフィリエイトを導入済みですが、上演団体とは直接関係がないため、本記事では対象外とします。 []