この記事は2018年4月に掲載されたものです。
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演劇の創客について考える/(20)チラシ・サイトの約半分を劇場体験の呼び掛けに割いたChant Theatre

カテゴリー: 演劇の創客について考える | 投稿日: | 投稿者:

●「fringe blog」は複数の筆者による執筆です。本記事の筆者は 荻野達也 です。

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●分割掲載です。初めての方は(予告)から順にご覧ください。

3月に座・高円寺2(東京・高円寺)で上演されたChant Theatre『アワーグラスと桜の木』のチラシ・チラシが創客に主眼を置いたものだったので、ご紹介したいと思います。

作品タイトルに「3月の週末を素敵にする演劇」という冠を付け、チラシ・サイトの約半分のスペースを割いて劇場体験の呼び掛けをしています。チラシはB3縦1/2変形を三つ折りした6面で、うち3面を劇場への誘いに使っています。ここまで演劇を観ること自体に力を入れた宣伝はめずらしいと思います。

演劇自体の魅力や、劇場がある街の魅力を語った宣伝はこれまでも多くありましたが、このチラシ・サイトは座・高円寺自体を詳しく紹介している点が特徴的です。チラシは2面を使って客席の写真を掲載し、次の文章を掲載しています(サイトでも読めます)。

座・高円寺2。大好きな会場です。

ここは、わたしたちがぜひご紹介したい劇場なんです。高円寺駅から線路沿いに歩いて5分の距離にある、全256席の本格的な舞台空間。吹き抜けの螺旋階段、きれいな絨毯張りの床、ゆったりとした赤い座席。私たちの大切な作品を皆さまにお届けするのに、ぴったりの場所だと確信しています。
2階には「アンリ・ファーブル」というとても美味しいレストランがあり、公演がなくても立ち寄ってしまいます。1000冊以上の絵本に囲まれた優しい空間は、おとなにとって居心地のいい、貴重な場所でもあります。
館内に3つのホールとレストラン、稽古場や演劇図書室まで備えたパブリックシアターは、本格的でありながら、しかし誰にでも開かれていて、ラフで上質な時間を過ごすのに最適なのです。

Chant Theatre『アワーグラスと桜の木』(部分)

座・高円寺で上演した団体で、ここまで劇場の紹介をしたところはなかったのではないでしょうか。

「アンリ・ファーブル」がうまくて安いことは演劇ファンなら知っていると思いますが、知らない人はそこにカフェ&レストランがあることさえ知らないでしょう。ちなみに、「アンリ・ファーブル」にはハートランドビールの生があります。ハートランドの生が飲める店は限られており、それだけで行く価値があるとハートランド好きの私は思います。

公演時間の表記でも工夫が見られました。演劇の場合、上演時間120分などと表記する場合が多いのですが、このチラシ・サイトでは「13:00~15:00」のように映画館と同じ表記を採用していました。これも初めて劇場に足を運ぶ方にはわかりやすいと思いますが、映画のように時間どおりの終演を求められると思いますので、きちんと合わせられるかが問われるでしょう。

2017年に創設された団体で、これが旗揚げ公演になるようですが、キャリアのあるICU出身者たちが参加しており、宣伝美術は細谷修三氏です。

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