この記事は2021年6月に掲載されたものです。
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芸術文化振興基金助成事業の制度見直し案について

カテゴリー: フリンジのリフジン | 投稿日: | 投稿者:

●「fringe blog」は複数の筆者による執筆です。本記事の筆者は 荻野達也 です。

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日本芸術文化振興会サイトで、6月4日に「芸術文化振興基金助成事業の令和4年度募集に向けた制度の見直しについて」が発表された。現在の赤字補填から規模に応じた定額助成へ抜本的に変更するもので、助成対象経費を3つ選択し、支払いの証憑はその3項目だけでよいとする画期的な手続き変更も同時に実施される。定額制の導入や手続きの簡略化は、文化庁「ARTS for the future!」などの影響もあるのではないかと感じる。

一方で、応募可能な件数は1分野につき1活動までとなり、さらに令和5年度募集以降は別活動であっても、舞台芸術創造活動活性化事業との重複応募は不可になるという。芸術文化振興基金は任意団体、舞台芸術創造活動活性化事業は法人という区分が鮮明になり、複数公演の助成や、もっと大きな支援が必要な団体は、法人化して舞台芸術創造活動活性化事業を目指しなさい、ということなのだろう。

この見直しは、資金のない若手にも劇場公演を可能にし、公演助成から団体助成へ誘導するもので概ね評価したいが、演劇分野の判断基準に会場キャパシティだけが使われている点はどうかと思う。この基準だと、小劇場で長く公演するより、中劇場で週末だけ公演するほうが助成金額が高くなる。また、小劇場を使ったツアーへの支援も限られた金額になってしまう。

現代舞台芸術創造普及活動の令和3年度審査基準には、「活動が社会的に開かれたものであること」「観客層拡充等の努力を行っていること」とあり、多様な観客に観劇機会をもたらす公演期間の延長やツアーの実施は、公的助成にとって採択の重要な指標だと思う。会場キャパシティだけで判断すると、これが抜け落ちてしまうのではないか。

長く公演することやツアーを実施すること自体がプロであり、それは舞台芸術創造活動活性化事業という考え方もあるかも知れないが、公的助成における公共性を考えた際に、その公演へのアクセスのしやすさは、最初から指標となるべきものではないだろうか。また、地域在住のカンパニーが評価を得るために東京公演が必須となっている現状も考慮すべきだと思う。

以上の観点から、判断基準を会場キャパシティから、ステージ数を掛けた総キャパシティにすべきではないかと考える。ツアー全体でステージ数が多い場合の救済になるかも知れない。

この見直し案は検討段階のものであり、今後変更する可能性があるとされている。それなら、いま意見を送るべきではないかと思い、日本芸術文化振興会基金部芸術活動助成課に下記を本日送付した(部分)。「現代舞台芸術創造普及活動」概要文書の末尾にメールアドレスが明記されているので、皆さんも思うことがあればメールするとよい。

6月4日に発表された「芸術文化振興基金助成事業の令和4年度募集に向けた制度の見直しについて」を拝見いたしました。

赤字補填から定額助成への変更、そのための手続きの簡略化は、資金不足で公演を打てない若手を支援するものであり、大きな改善だと思います。また、中堅以上の団体にはプロとしての自覚を促し、舞台芸術創造活動活性化事業への誘導を図る意思が感じられ、公演助成から団体助成へと、助成制度の在るべき姿を議論された結果だと思います。

ただし、再考をお願いしたい点があります。現代舞台芸術創造普及活動の演劇分野の判断基準に、公演会場のキャパシティが使われていますが、公演日数(ステージ数)が配慮されていません。この基準だと、小劇場で長く公演するより、中劇場で週末だけの公演をするほうが助成金額が多くなります。

私は小劇場・中劇場で様々な公演期間の演劇制作を経験し、fringe上でも公演費用のシミュレーションをしております。出演者の数にもよりますが、小劇場を2週間15ステージ公演するのと、中劇場を週末3ステージ公演するのとでは、中劇場にかかるイニシャルコストを考慮しても、小劇場のほうが高くなると思います。

現在の案では、会場キャパシティ300人未満が200万円、300人以上が400万円と、会場キャパシティだけで中劇場のほうが200万円高くなっていますが、公演日数(ステージ数)によっては、助成の必要性が逆転するケースも多いのではないかと考えます。

現代舞台芸術創造普及活動の審査基準では、社会性として「活動が社会的に開かれたものであること」「観客層拡充等の努力を行っていること」が明記されています。短期間の公演では、「社会的に開かれたもの」「観客層拡充等の努力を行っている」とは言えず、多様な観客が来場可能なように、公演日数は長いほど評価されるべきではないでしょうか。

その観点から考えると、小劇場で公演日数(ステージ数)を増やすことは、まさにこの社会性を満たすものであり、そうした公演にこそ公的助成を行なうべきではないでしょうか。このため、会場キャパシティだけで判断するのではなく、ステージ数を掛けた総キャパシティを判断基準にしていただくよう、再考をお願いいたします。例えば、総キャパシティ1,500人未満を200万円、1,500人以上を400万円というように。

ご検討のほどをお願いいたします。