この記事は2007年4月に掲載されたものです。
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都市部に貸館中心の公共ホールは要らない

カテゴリー: fringeのトピック以前 | 投稿日: | 投稿者:

●「fringe blog」は複数の筆者による執筆です。本記事の筆者は 荻野達也 です。

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最近いちばん心を打たれた文章はこれです。劇場ブログのほか、die pratze公式サイトにも掲載されています。

ここに書かれていることは、民間劇場に関わる方なら誰もが感じていることだと思いますが、公共ホールを批判することは、最終的には出入りするカンパニーやスタッフの批判にもつながりますので、なかなか声高に言えない背景があります。それをここまではっきり書くのは勇気がいると思いますし、制作者も「劇場費が安いという理由だけで公共ホールを使っていいのか」と自問自答を迫られている気がします。

fringeに何度も書いてきたことですが、都市部に貸館中心の公共ホールはもう要りません。民間劇場と競合する都市部に公共ホールを新設するなら、共存のための役割分担が必要であり、本来は基本構想の段階から是非を含めて検討されるべきものですが、なぜか「公共ホールはあって当然」というところから始まっているような気がしてなりません。都市部なら同じ予算で無数のスタジオを持った大規模稽古場施設をつくったほうが、日本を代表するアーツセンターとして歴史に名を残すことが出来るのに、なぜ首長も議会もそれに気づかないのでしょうか。

公共ホールのプロパー職員には演劇人が多く、自治体からの出向者にも素晴らしい方がいます。私自身なんども助けられましたし、条例の抜け道を見つけて対応していただいたこともありました。逆に民間劇場オーナーの利益至上主義が鼻につくこともあります。要は人ではなく、公共ホールという存在そのものを考え直す時代になってきたのではないかと思います。指定管理者に受託するのなら、最初から公共ホールをつくらずに民間劇場に助成するという考え方だってあるはずです。

ここでなにを書いても世の中がすぐに変わるわけではありませんが、少なくとも制作者は劇場選択の意思決定に大きく関与する者として、「なぜその劇場を使うのか」ということをしっかり考えてほしいと思います。劇場費や設備の新しさだけではない、その劇場を使う意義というものがあるのではないでしょうか。それに応えることが小劇場演劇を支えてきた民間劇場への恩返しだと私は考えますし、これからも訴え続けていこうと思います。

fringeをご覧になっている公共ホール、文化行政関係者の方も、それぞれの立場でなにが出来るのかを考えて、それを実行に移していただきたいと思います。


都市部に貸館中心の公共ホールは要らない」への3件のフィードバック

  1. FPAP高崎の「さくてきブログ2」

    都市部に貸館中心の公共ホールは要らない?

    fringe blog都市部に貸館中心の公共ホールは要らないを読んだ。
    内容を要約すると、民間劇場立地の余地がある都市部では、貸館中心の公共ホールは不要で、民間劇場ではできない投資型の自主事業を中心とした運営をすべき。ということのようだ。
    この提言は、ひろく都市…

  2. 荻野達也

    >夏井さん

    ログを確認したところ、いただいたトラックバックはスパムフィルターの禁止文字列に引っ掛かっていました。文中の「pl」(半角)が検知されていました。「.pl」(半角)を含むトラックバックスパムが激しいので禁止文字列に登録しているのですが、ドットなしも検知してしまったようです。

    ご意見の「民間劇場も変わらなければいけない」というのはよくわかります。それを実現しようと思えば、ヨーロッパ式に芸術監督がシーズンごとのラインナップを決める体制になると思いますが、カンパニー側もそれに見合ったクオリティと計画性が求められるでしょう。劇場が変わることは、カンパニー自身も変わることを求められているのだと思います。

    カンパニー側の努力がない状態で劇場側のサービスだけが増すと、逆にカンパニーをダメにすると思います。関西では伝統的に劇場側が票券管理や広報宣伝を担ったため、カンパニー側に優秀な制作者がなかなか育たないという弊害が生まれました。サービスと平行して、ロングランの推進や批評の充実を試み、本当に意欲のある集団だけが残るシステムにしなければならなかったのだと思います。

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