この記事は2005年1月に掲載されたものです。
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地点を巡る劇評

カテゴリー: fringeのトピック以前 | 投稿日: | 投稿者:

●「fringe blog」は複数の筆者による執筆です。本記事の筆者は 荻野達也 です。

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劇評サイト「Wonderland」の特別企画「振り返る 私の2004」に、「X-ray」を主宰する熊上みつみ氏が文章を寄せています。ウェブログでのレビューは爆発的に増えたが、「強烈な劇評には、なかなか出会うことができない」として、読み応えのある文章が少ないことを嘆かれています。

確かに指摘されている傾向はあると思いますが、演出家・三浦基氏(青年団リンク・地点、4月に青年団から独立して京都移転)への評価などは、賛否両論が拮抗する面白い展開になっています。最新作『雌鶏の中のナイフ』では双方からレビューが出ていますが、例えば「ine’s daypack」の「三浦演出の今日性」は、批判的立場の論評として非常に説得力あるものです。ダンス評論を主とする方々から意見が出ているのも興味深いところです。

京都は歴史的に先端の表現を受け入れる土壌があり、舞台芸術の面でも多くのアーティストを輩出してきました。地点が絶賛され、拠点を移すのもそうした背景があってのことでしょう。それとは対象的に京都は集客に苦しみ、まだ演劇が身近な存在とは言い難い状況にあるのも事実です。この矛盾が京都の抱える大きな課題であり、視点を変えれば大きな可能性でもあります。地点に限らず、今後京都のカンパニーに対して活発な批評がなされていくことを期待したいと思います。

熊上氏の文章にはもう一つ気になることがあって、観劇人口が増えないことが杞憂だと書かれていますが、昨年1月に内閣府が発表した世論調査では、演劇を年に一度でも鑑賞する人12.9%(前回比3.4ポイント減少)という結果が出ています。ここで根拠にされている「2004年の盛況ぶり」について、具体的に説明していただけたらと思います。


地点を巡る劇評」への1件のフィードバック

  1. 熊上

    Wonderlandさんへの寄稿にトラックバックをいただき、ありがとうございました。

    何を根拠に杞憂だの盛況だのと書いているのか、具体的に説明せよとのことですが、私の個人的な体感だけで、何らかのデータに基づくものではありません。「いい加減なことを言うな」とお叱りを受けるかもしれませんが、特別人気の公演ばかりを狙って観ているわけでもないのに、どこの劇場にいつ行ってもほぼ満席であるというような、極めて表面的なことです。

    荻野さんが反論の例に出された世論調査の結果にしても、(1)アの「直接鑑賞しなかった理由」が解消すれば、(3)今後もっと鑑賞したいと思う文化芸術では、演劇・演芸(26.1%→29.0%)と、前回調査より上昇しています。楽観視はできませんが、私は、データも読み方次第であるという考えです。

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