ウッドショックを可視化してみる

カテゴリー: フリンジのリフジン | 投稿日: | 投稿者:

●「fringe blog」は複数の筆者による執筆です。本記事の筆者は 荻野達也 です。

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演劇のチケット代を押し上げる要因の一つとなっている木材価格の高騰。コロナ禍によるサプライチェーンの停滞とコンテナ不足、それに米国の住宅建設ブームが重なって発生し、ウッドショックとも呼ばれる。

ウッドショックは過去にも発生していて、fringeでは2007年に次の記事を掲載している。ベニヤが340円という記述もあり、いまでは夢のような価格である。
fringe「舞台美術家・大道具製作会社を悩ませる輸入合板高騰、舞台費を直撃」

このときの原因は森林伐採の規制強化で、材料をラワンからラーチに変える動きも見られた。小売価格の体感では、1年で2倍になったような感覚だったと思われる。この記事で使用した東京木材問屋協同組合「木材価格市況標準相場」は、その後も「一丁一本参考価格表」として公表が続いているので、これでウッドショックが可視化出来るのではないかと思い、グラフを作成してみた(クリックで拡大)。

木材相場推移
木材相場推移

長期の調査なので品名が変わっているものもあったが、舞台美術によく使われる赤松・合板の代表的材料の価格推移を毎年4月の数値で追ってみた。新木場での店頭渡し価格なので、小売価格は当然これより高くなる。過去分については、Internet Archive「Wayback Machine」を参照した(保存されていない場合は3月分)*1 。平割・桟木の(日/現)は、日本挽き・現地挽きのことで、近年は(現)、つまりロシア国内製材工場製品となっている。

06~07年の前回ウッドショックが落ち着いたあとは、11年の東日本大震災による合板工場の被災、2回の消費税増税に伴うと思われる価格上昇が見られるが、今回のウッドショックはそれを上回る急激な上昇だったことがよくわかる。これまでは内部の努力でチケット代に吸収していたものが、他の要因も重なって不可能になったと考えられる。現在も高止まりの状況は続いており、舞台美術のリユースを改めて考えていく参考にしてもらえればと思う。

  1. 2006年6月~2010年4月はInternet Archive「Wayback Machine」(2022年1月27日保存)、2011年4月~2017年3月はInternet Archive「Wayback Machine」(2021年11月26日保存)、2018年4月~2022年4月はInternet Archive「Wayback Machine」(2022年10月3日保存)参照。最初に公表が始まった2006年6月は、2006年7月分に前月として記載されている。前回ウッドショックの2007年1月を加えた。 []