この記事は2010年9月に掲載されたものです。
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もう「楽日を何曜日にしたらいいか」なんて議論からは卒業しよう

カテゴリー: フリンジのリフジン | 投稿日: | 投稿者:

●「fringe blog」は複数の筆者による執筆です。本記事の筆者は 荻野達也 です。

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地域では、いまだに公演の楽日を何曜日にするのが最も効果的かという議論がある。週末に来場した観客のクチコミを広げるには、日曜で終わるのではなく、平日にこぼれさせて土日を観逃した観客を拾うべきで、休日が週末ではない業界の観客も呼びやすくなる。だからといって水曜日まで上演出来るかというと、これは次の仕込みの関係で難しい。わかりやすく解説しよう。

どのカンパニーでも、集客が最も見込める週末の土日を軸に公演日程を組みたいと考える。土曜は2ステ上演が普通なので、金曜を初日にしてしまうと、土曜に手直しをする時間が取れない。作品の完成度を高めるためには、初日の翌日に手直し出来る日程が望ましい。そう考えると、初日は最短で木曜になり、仕込みは前日の水曜になる。従って、1週間単位の上演サイクルで考えると、公演を延長出来るのは火曜までということになる。

水曜……仕込み
木曜……ゲ ネ/ソワレ
金曜……手直し/ソワレ
土曜……マチネ/ソワレ
日曜……マチネ/ソワレ
月曜……    ソワレ
火曜……    ソワレ/バラシ

楽日を何曜日にしたらいいかを議論するまでもなく、劇場使用期間が1週間なら、水曜仕込み・火曜楽日がベストプラクティスである(祝日がない場合)。カンパニーだけでなく、劇場側にとってもこれが最も運営しやすいはずである。

1週間借りる予算がない場合は、週末の前後どちらかを短縮しなければならないが、地域の劇場は月曜火曜が使われていないことが多い。ならば交渉しだいで月曜火曜を格安にしてもらったり、月曜千秋楽でバラシを火曜昼間に無料でさせてもらうことも可能だろう。劇場側も稼働率を高めて賑わい感を創出したいはずで、公演日程を1週間に近づけることは地域のカンパニーにとって決して不可能ではない。

そもそも楽日を何曜日にしたらいいかは、公演日程が数日間しかないからこそ起こる議論だ。公演期間が1週間になれば、上記のように火曜楽日と自然に決まってくるし、もっと長くなれば議論にならなくなる。制作者が考えるべきことは、数日間の短い公演をどこに設定するのかではなく、まずは公演を1週間にすることだ。8ステージも集客出来ないなら、1週間の中でステージ数を間引いたり、ワークショップを組み合わせるなど、様々な手法がある。具体的には[ナレッジ]の「公演日程の工夫」にまとめてある。

地域で1週間の公演を阻んでいるのは、ほかにも劇団員の仕事や劇場そのものの環境によるところが大きいと思う。そうした条件下で数日間の公演になってしまっているのなら、発想を転換し、どういう条件なら1週間の公演が出来るかを考え、仕事が終わってから小屋入り出来る開演時間を設定し、それが実現可能な劇場探しから始めるべきだろう。そうした前向きな議論なら、fringeもぜひお手伝いしたい。