公演をしていない劇場は、単に〈ホールのある建物〉だと思う

カテゴリー: フリンジのリフジン | 投稿日: | 投稿者:
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小劇場演劇を観続けて30年近くになる。この間、小劇場を巡る環境は大きく変化したが、一方で全く変わっていないと感じるものがある。それは東京以外の公演日数の短さだ。1週間単位の公演が東京で定着したのに対し、それ以外の地域は週末の数日間が相変わらず多数を占めている。

本来、公演日数は誰もが気に留めているはずだ。長い準備を重ねてきた作品が数日しか上演されないこと自体が文化的損失で、その作品を世の中に問う機会を逃している。短期間での仕込み・バラシの繰り返しは、劇場やスタッフの経済的損失につながり、業界自体が成長していかない。手軽に公演を打てるのは小劇場演劇の特徴でもあるが、それに安住して縮小再生産を続けているのが、現在の地域の実情だと思う。

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創客よりも創表現者

カテゴリー: さくてき博多一本締め | 投稿日: | 投稿者:
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地域の公共劇場の活動が充実してきています。
これは、今の日本の舞台芸術シーンでもっとも重要な課題の一つである中央一極集中の緩和に直結することで、素晴らしいことだと理解しています。

これらの公共劇場の活動は多くの人が評価するところだと思いますが、地域の人材をコアにおいて優れた作品を創り世に問う。という目的があるならば、その目的からは少し遠ざかっているようにも思えます。

地域の公共劇場の役割としてもっとも重要と思われる鑑賞事業、アウトリーチなどでは充実した活動を行い、創客にも成功している例は耳にします。また地域発の作品に取り組む劇場もあります。しかし、地域の表現者の育成で明確な成果を出した例をまだ聞きません。

演劇鑑賞を地域の住民の日常的な選択肢にするということは大切な事であり、その困難さを克服しようとする努力に頭が下がります。
しかしながら、鑑賞事業、アウトリーチ、創客と同じように大切なことは地域の表現者(特に脚本・演出家)を育成することです。

脚本・演出家の才能を東京に依存している現状は、10年かかると思いますが、変革していかなければならない現状です。優れた表現者を育成することは、創客よりも時間がかかり明確な成果もすぐには見えにくい分野です。

特に優れた劇場・音楽堂からの創造発信事業における重点支援劇場、地域の中核劇場の採択を受けた劇場には、地域の表現者人材を育成するという事業を重視してもらいたいと思います。

「Gettii」トラブルへの説明責任を問う

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ASP票券管理システム「Gettii」の不正発券が発覚し、サービスが緊急停止されたのが10月4日深夜だった。その後10日20時にクレジットカード決済とセブンイレブン発券の組み合わせを除いたサービスが再開されたが、23日現在も完全復旧には至っていない。Gettiiを採用していた各劇場やConfettiでは、この内容でサービスを継続しているが、Bunkamuraのようにオンライン販売を中止している劇場もある。Gettiiを全面採用していた楽天チケットでは、楽天市場のシステムに切り替えた。

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『演劇は仕事になるのか?─演劇の経済的側面とその未来』今週末発行

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発行が遅れていた米屋尚子著『演劇は仕事になるのか?─演劇の経済的側面とその未来』(彩流社)が、いよいよ10月21日に出るようだ。

当然ながら、本書で注目すべきは第5章「未来への選択肢、演劇の可能性」だろう。芸団協の責任者として、劇場法(仮称)の提起を背景にどんなビジョンを掲げてくれるのか、ぜひ目を通したい。第4章「隣の芝生、自分の庭」の「アマチュア文化の再評価」も、任意団体が多い小劇場関係者にとって気になる項目だ。ぜひ予約をオススメしたい。

演劇は仕事になるのか?: 演劇の経済的側面とその未来
米屋 尚子
彩流社
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平成24年度芸術文化振興基金・トップレベルの舞台芸術創造事業の変更ポイント

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平成24年度の芸術文化振興基金・文化芸術振興費補助金(トップレベルの舞台芸術創造事業)の募集案内が、日本芸術文化振興会サイトに10月3日アップされた。

トップレベルの舞台芸術創造事業は、23年度募集後に芸術創造活動特別推進事業から移行措置が取られたもので、募集案内の形で発表されるのはこれが初めてである。赤字補填ではなく、公演までの準備費用を予算内で助成するもので、なにが準備費用に該当するのか制作者のあいだでも議論になっていたが、詳細なリストがついて一目瞭然となっている。

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いまこそ劇場法(仮称)への意見を持つとき

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「ネットTAM」の「アートマネジメント事始め」に、「劇場法(仮称)入門」を連載させていただいている。概要と経緯を書いた2回分が掲載済みで、次回が課題となる。これを機に、更新していなかった「劇場法(仮称)に関する議論まとめ(2011年9月25日現在)」を掲載した。劇場法(仮称)は、早ければ2010年秋の臨時国会に提出されると言われていただけに、前回が最後の更新と思っていたが、実際には「文化芸術の振興に関する基本的な方針(第3次基本方針)」に沿って検討会がつくられ、現状の分析が続いている。この時間を利用して、劇場法(仮称)について演劇人全員が認識を深めてほしいと思う。

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身内客には招待客も含まれる

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fringe[ナレッジ]で連載中の「カンパニーを進化させ集客へと導く具体的な方法」の第3回「ロビーでの面会を禁止する」について、Next Online「News-Headline」が補足として、身内客にはマスコミや劇場関係者などの招待客も含まれると書いている。

これはそのとおりで、「カンパニーを進化させ集客へと導く具体的な方法」は集客に苦しむ若いカンパニーのために書いているものなので割愛したが、知名度が上がってきたカンパニーでは終演後にロビーが招待客であふれていることがある。

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多様性がないと文化は育たない

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サラダボール主宰で、四国学院大学(香川県善通寺市)に今春出来た演劇コース(身体表現と舞台芸術マネジメント・メジャー)の助教を務めている西村和宏氏が、個人ブログで映画『ゴーストライター』が香川県で上演されていないことを嘆いていた。

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連載予告「カンパニーを進化させ集客へと導く具体的な方法」

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fringe[ナレッジ]では、これまで共通化したノウハウを掲載することを心掛けてきたが、最も現実的な課題である集客へのヒントになるべく、新しいシリーズとして、個人的な経験に裏打ちされた具体的な方法を[ナレッジ]に連載したいと思う。これまでの[ナレッジ]が「戦略」だとすれば、これは「戦術」に相当する。

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『これからのアートマネジメント “ソーシャル・シェア”への道』

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今年発行されたアーツマネジメント関係書でぜひ手元に置いておきたいのが、フィルムアート社の「Next Creator Book」シリーズ最新刊『これからのアートマネジメント “ソーシャル・シェア”への道』だ。

同シリーズでは、2009年に『キュレーターになる! アートを世に出す表現者』を紹介したが、今回はアーツマネジメントそのものを取り上げ、しかも舞台芸術の比重が高い。類書が現代美術に偏重しがちな中、異なるジャンル同士が理解し合える稀有な内容だ。アーツマネジメントの分野で、やっと美術と演劇が対等に語られるようにようになったかという感慨さえ覚える。中川真氏(大阪市立大学教授)が編者のためか、関西の事例も目立つ。

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