すごいタイトルの本が8月25日に出る。社団法人日本芸能実演家団体協議会(芸団協)・芸能文化振興部部長の米屋尚子氏による『演劇は仕事になるのか?─演劇の経済的側面とその未来』だ。
米屋氏といえば、芸団協セミナーの責任者として、制作者向けに数々のマネジメント講座を企画してきた人物だ。支援申請や契約といった必須の実務から、支援制度見直しや新公益法人制度の啓蒙、基本となる財務会計の強化に力を入れてきた。いま日本の演劇制作者になにが不足しているのかを的確に把握し、人材育成の形で支援を続ける存在だ。米屋氏の奮闘によって、これまで社会的にはサークルの域を出なかった小劇場系カンパニーが、少しずつ演劇業への道を歩み始めているのではないだろうか。
その米屋氏が制作者向けに直接執筆するのだから、期待しないわけにはいかない。これまで演劇とはなにかを語った演出家や俳優向けの本は多いが、プロのカンパニーについて考え、業として食べていくための方法を客観的に扱った本は限られている。目次を見ると基礎的な内容から核心に進んでいくようで、若手・中堅のカンパニーが自分たちの歩むべき道を考えるために使ってほしい。ポストゼロ年代の『現代演劇のフィールドワーク』になるかも知れない一冊である。
演劇は仕事になるのか?: 演劇の経済的側面とその未来
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米屋 尚子
彩流社
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