観客にとってチラシ束を魅力的にする方法第3弾。現状のチラシ束を受け取って感じるのは、あまりに情報が整理されていないということだ。チラシごとには整理されているのだが、それが無秩序に折り込まれているので、観客心理として「情報を受け取った」というより、「紙の山を受け取ってしまった」と感じる部分があるのではないだろうか。自分に必要なチラシだけ抜き、あとはイスの下に置いていく観客を散見するが、たぶんそうした感情からではないかと思う。
作成者別アーカイブ: 荻野達也
演劇祭なら単独チラシはつくらず、統一チラシだけにしよう
観客にとってチラシ束を魅力的にする方法第2弾として、演劇祭では参加団体が独自にチラシをつくらず、事務局が作成する統一チラシだけにすることを提言したい。
本番まで実態のない演劇公演にとって、チラシはアイデンティティをカンパニーに与える力があり、それだけにこだわりを見せる主宰も多い。参加団体が独自のデザインで単独チラシをつくりたい気持ちもわかるが、その費用を持ち寄って統一チラシを作成したほうが、演劇祭としての一体感が強まるし、観客にとっても1種類のチラシで全情報を得ることが出来る。
チラシ束に公演チラシしか入れないことから始めよう
ネビュラエクストラサポート(Next)が、6月20日~8月8日に上演されるNODA・MAP『ザ・キャラクター』へのチラシ折込代行で、主催者側(この場合はNODA・MAP)が折り込む10団体を事前に選ぶ「主催者セレクト方式」を試験的に実施している。
Nextでは、これまで折込団体数を先着順で制限することはあったが、内容での選別は「折り込み機会の公平性を維持する」観点から行なっていない。制作者から「チラシの宣伝効果を高めるため従来の方法を見直すべき」という声が広がっていることを理由にしているが、売上に影響を与えかねない委託団体の選別は、Nextにとっても英断と言えるだろう。
舞台芸術に関わるならパブリックコメント提出を
文化庁が7月9日締切で、文化審議会文化政策部会「審議経過報告」に対するパブリックコメントを募集している。
劇場法(仮称)や文化政策についてセミナーで議論するのもいいが、このパブリックコメントが私たちの考えを行政に伝える公式な手続きである。反対意見がある人はもちろん、賛成意見の人もその旨をきちんと表明すべきである。
ここで意見せずに、どこで意見を言うのか。舞台芸術に関わる全員がコメントを寄せるべきである。
(参考)
劇場法(仮称)に関する議論まとめ(2010年4月11日現在)
劇場法(仮称)に関する議論まとめ(2010年5月16日現在)
劇場法(仮称)に対する私の考え
劇場法(仮称)と新たな助成制度
視野を広く、もっと広く
「INDEPENDENT」全国ツアーが意味するもの
視野を広く、もっと広く
劇場法(仮称)のことを考えていると、調べなければいけないことがどんどん増える。幅広い議論をするためには、舞台芸術だけでなく、その周辺のことも知らなければならない。演劇人はもっともっと勉強すべきだと思う。
例えば、「図書館法や博物館法があるのに、なぜ劇場に関する法律がないのか」と言われると、演劇人は「そりゃそうだ、劇場法(仮称)をつくろうぜ」となってしまいがちだが、その前に少し立ち止まって、現在の博物館法についてどんな議論がなされているかを調べてほしい。
劇場法(仮称)と新たな助成制度
劇場法(仮称)に対する私の考え
波紋を呼んだ朝日新聞大阪本社版3月19日付夕刊記事(以後「朝日新聞記事」)、それに対する平田オリザ氏の青年団サイト4月1日付「新年度にあたって 文化政策をめぐる私の見解」(以後「4月1日付見解」)、そして平田氏自身が「それをお読みいただければ、おおかたの誤解は解ける」とした日本劇団協議会機関誌『join』68号のロングインタビュー(以後「『join』68号」)と、この話題を巡る情報は一定のレベルで共有されつつある。平行して文化審議会文化政策部会の議論も進み、劇場法(仮称)は法制化に向けて着実に進んでいるようだ。この時点での私の考えをまとめておきたい。
『映画館(ミニシアター)のつくり方』
座・高円寺は学芸事業のネーミングに配慮を
座・高円寺が3月27日~28日に開催した子供向けワークショップの発表会タイトルが、「飛ぶ劇場」となっている。演劇界で「飛ぶ劇場」と言えば、当然ながら北九州のカンパニー・飛ぶ劇場を思い浮かべるわけで、私もこのタイトルを最初目にしたときは、「こんな時期に飛ぶ劇場の東京公演ってあったっけ」と戸惑った。飛ぶ劇場主宰の泊篤志氏も東京の友人から連絡を受けて驚き、個人ブログでこう書いている。
「飛ぶ劇場」というネーミングは確かにありがちで、小劇場に詳しくない人なら使ってしまうかも知れない。このワークショップも外部のアートNPOに運営を委託しているようで、彼らが北九州の飛ぶ劇場を知らなかったのかも知れない。けれど、このタイトルを見た座・高円寺の学芸スタッフや広報スタッフは当然小劇場の専門家のはずだから、その時点で変えるようアドバイス出来たのではないだろうか。
商標登録されている名称ではないので、使っていけないということはない。演劇以外のジャンルなら、勘違いする人もいないだろう。しかし、座・高円寺という小劇場演劇を軸にした専門劇場で「飛ぶ劇場」を使ってしまうのは、いくら学芸事業でも配慮に欠けるのではないだろうか。誤解を招くこともそうだが、この名前を長年使っているカンパニーに対するリスペクトを持ってほしいと思う。「鳥の劇場」も同じ理由で使えないと思う。
(2010年3月31日追記)
本記事掲載直後、座・高円寺広報より連絡をいただいた。
飛ぶ劇場の存在は承知していたが、ケストナーの『飛ぶ教室』を強く意識した佐藤信芸術監督の要望により、敢えて事業名として使用したという。ただし、カンパニー側にその旨を伝えていなかったのは軽率であり、カンパニー側に早急に連絡を取ってお詫びするとのこと。
3月30日付のブログトマリ「続報、『偽の飛ぶ劇、東京に現る?』」によると、劇場から連絡があり、この名称は今後も使用したいが、同一表記を避けるため、「とぶげきじょう」のようなひらがな表記を考えていきたいという。