私に小劇場の楽しさを教えてくれたカンパニーを一つ選べと言われたら、迷うことなく劇団M.O.P.を挙げる。それは私が観客として小劇場にのめり込んでいた時期とカンパニーの成長期が重なり、奇跡のような瞬間にいくつも立ち会えたことが大きい。小劇場ファンなら誰でも、若いカンパニーが信じられない躍進を遂げていく姿を目の当たりにすることがあるはずだ。公演を一回でも観逃すと、次の公演で見違える舞台になっている。だから劇場通いがやめられなくなり、カンパニーの成長と自分自身の軌跡を重ね合わせていたりする。それが私にとってはM.O.P.だったということだ。
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劇場法(仮称)制定後の「天上がり」「制作外注」について考える
今回は、劇場法(仮称)制定後の現場の変化について考えてみたい。法案自体がまだどうなるか全く見えないが、公共ホールに専門職員を配置し、芸術家とプロデューサーの手に劇場を取り戻すという理念は変わらないと思うので、その延長で考えを巡らせると、現実問題として俎上に載ってくるのが「天上がり」「制作外注」ではないかと私は想像している。
誤解のないように記しておくが、私は別に劇場法(仮称)にネガティブな印象を与えたくてこれを書くのではない。実際にこうした状況が発生するだろうから、それについて心構えをしておくのがよいのではないかというスタンスだ。ためにする議論のつもりは全くないので、そこは間違えないでいただきたい。
演劇におけるフラッシュマーケティングの可能性
9月17日のリクルート「ポンパレード」エリア拡大に合わせてだと思うが、この数日間、テレビの情報番組が共同購入型(事前購入型)クーポンサイトの紹介だらけだった。通常は無料のクーポン券を事前に共同購入することで大幅な割引を提供するもので、制限時間と最低販売数が決められている。飲食店以外にも様々なサービス業が参加しており、東京ディズニーリゾートのシルク・ドゥ・ソレイユ『ZED』47%割引クーポンは300枚限定が完売している。
もう「楽日を何曜日にしたらいいか」なんて議論からは卒業しよう
地域では、いまだに公演の楽日を何曜日にするのが最も効果的かという議論がある。週末に来場した観客のクチコミを広げるには、日曜で終わるのではなく、平日にこぼれさせて土日を観逃した観客を拾うべきで、休日が週末ではない業界の観客も呼びやすくなる。だからといって水曜日まで上演出来るかというと、これは次の仕込みの関係で難しい。わかりやすく解説しよう。
誰にどういう立場でなにをしてもらいたいのか
公共ホールの広報担当だった方が、「京都国際舞台芸術祭2010実行委員会事務局はインターンにどんな指導をしているのだろう」の件について、なにが問題で、どうすればよかったのかをまとめている。依頼文の添削もされているので、参考になるだろう。
小劇場演劇(小劇場)の定義を再確認、「小劇団」なんて言葉はない
最近、「小劇団」という言葉をよく耳にするようになった。昔からこういう言い方をする人はいたが、あまりに増えると市民権を得てしまいそうなので、ここでダメ出しをしておきたい。なにが小さいのか不明だが、劇場のキャパシティや興行規模に関わらず、劇団は劇団だろう。大小などを付けるべきではない。
「小劇場演劇の劇団」を略しているつもりなら、それも違う。小劇場演劇(小劇場)は演劇のスタイルを示す言葉で、規模を表わしているのではない。「小劇団」などと言うと、意味がわからなくなってしまう。演劇人が自らを矮小化して口にするケースもあるようで、言葉の意味をよく考えて使ってほしい。
小劇場演劇(小劇場)はなにか言えば、fringeでは「このサイトについて」で次のように説明している。
芸術面では演出家の存在、興行面では個人客中心であること――これが守られている限り、劇場が大きくなっても小劇場演劇(小劇場)だと私は思う。この定義は私自身が長年かけて熟成させてきたもので、共感していただける方は多いと信じている。マイナー感が漂うので、小劇場演劇(小劇場)という言葉を使いたくないという若い演劇人もいるようだが、それは全くの誤りである。
大劇場で上演しているのに小劇場というのは一般客が混乱するので、そこで敢えて小劇場という言葉は使わなくてもいいと思うが、「小劇場から大劇場へ進出」「小劇場を卒業」のように、キャパや興行規模だけで語るような使い方はやめてほしい。影響力のあるマスコミは特に注意すべきだろう。
私は、これからもプライドを持って小劇場演劇(小劇場)という言葉を使っていきたい。
(参考)
小劇場の定義
制作者の必読書『世界一の映画館と日本一のフランス料理店を山形県酒田につくった男はなぜ忘れ去られたのか』文庫化
制作者の必読書『世界一の映画館と日本一のフランス料理店を山形県酒田につくった男はなぜ忘れ去られたのか』が文庫化された。まだ読んでいない人がいたら、いますぐ読んでほしい。この本を読まない人が、動員やサービスについて語る資格はないと思う。
(参考)
「世界一の映画館」に学べ
講談社 (2010-09-15)
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幻の利賀フェスティバル観劇ツアー
私が利賀フェスティバルに初めて訪れたのは、1990年のことだ。「世界は日本だけではない、日本は東京だけではない、この利賀村で世界に出会う。」をスローガンにした初代・利賀フェスが始まって9年が経過していたが、私が住んでいた関西から足を運ぶ演劇ファンはまだ少数で、知る人ぞ知る国際演劇祭といった趣だった。首都圏からのファンが圧倒的だったと思う。
関西きっての小劇場ファンを自認していた私は、利賀フェスにぜひ行かなければと思っていたが、周囲に同行してれくれる人もなく、民宿に一人で泊まるのもどうかと思われ、考えたのが関西発のバスツアーを仕立てることだった。関西からの団体ツアーは当時聞いたことがなく、チラシを劇場に折り込めば、私のような踏ん切りがつかない個人客を取り込めるのではないかと思ったのだ。
『星野リゾートの事件簿 なぜ、お客様はもう一度来てくれたのか?』
最近読んだサービス関係のビジネス書で、いちばん印象に残ったのがこれ。
マスコミで取り上げられることも多い星野リゾートの運営を、様々なスタッフの立場から描いたもので、『日経ベンチャー』(現『日経トップリーダー』、日経BP社)の連載をまとめたものだ。星野佳路社長はほとんど登場せず、たまに会議に参加したり、メールでアドバイスする程度である。現場のスタッフたちが、すべて自分で考え、自分で行動している。
顧客満足度をいかに上げるかという難問に対し、スタッフたちの悪戦苦闘が続くわけだが、中でも最初に収められているアルファリゾート・トマム索道部門のエピソードには感動する。スキー場のリフトやゴンドラを管理運営する索道部門が、それまでの業務と全く異なる「雲海テラス」を始めるまでを綴ったもので、ゴンドラ整備で接客経験のなかった男たちがカフェ研修を積む有様は、胸が熱くなる。
京都国際舞台芸術祭2010実行委員会事務局はインターンにどんな指導をしているのだろう
掲示板などに無差別に募集告知を書き込む行為については、以前「近松賞募集のマルチポストに思う」で尼崎市ちかまつ・文化振興課について書いた。ネットでの告知については、手軽で費用もかからない反面、やり方を間違えると相手の心象を損ない、告知内容そのもののイメージダウンになってしまう。それだけに担当者のリテラシーが問われるところだが、最近びっくりする事例を見た。
