最近読んだサービス関係のビジネス書で、いちばん印象に残ったのがこれ。
マスコミで取り上げられることも多い星野リゾートの運営を、様々なスタッフの立場から描いたもので、『日経ベンチャー』(現『日経トップリーダー』、日経BP社)の連載をまとめたものだ。星野佳路社長はほとんど登場せず、たまに会議に参加したり、メールでアドバイスする程度である。現場のスタッフたちが、すべて自分で考え、自分で行動している。
顧客満足度をいかに上げるかという難問に対し、スタッフたちの悪戦苦闘が続くわけだが、中でも最初に収められているアルファリゾート・トマム索道部門のエピソードには感動する。スキー場のリフトやゴンドラを管理運営する索道部門が、それまでの業務と全く異なる「雲海テラス」を始めるまでを綴ったもので、ゴンドラ整備で接客経験のなかった男たちがカフェ研修を積む有様は、胸が熱くなる。
お客様からいちばん遠い存在と思われていた裏方の索道部門が、いまや夏の北海道を牽引する観光スポットを創出させた。その魅力はクチコミで広がり、「雲海テラス」を一目見るために毎年何千人もが全国から訪れるという。雲海は、地元で生まれ育ったスタッフにとっては見慣れた光景だった。それが観光客にとっては一生の思い出になる。同じように、演劇もまだまだ出来ることがあるのではないか。制作者だけでなく、裏方・表方すべてのスタッフが観客の視点で考えるべきではないかと思う。
なお、当然ながら経営のためには顧客満足度と利益率が両立しなければならない。お客様が喜ぶからといって、いくらでも費用をかけられるものではない。それが出来るのが真のプロフェッショナルである。
日経BP社
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