この記事は2016年7月に掲載されたものです。
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「事前精算限定のチケット販売システム」アンケート結果を見て考えたこと――当日精算の連絡なしキャンセルが10%いるのなら、ソーシャルチケットサービスの手数料相場5%のほうが安い

カテゴリー: フリンジのリフジン | 投稿日: | 投稿者:

●「fringe blog」は複数の筆者による執筆です。本記事の筆者は 荻野達也 です。

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決済機能を持ったチケット販売システムを検討するため、3月に有限会社レトロインク(東京都三鷹市)がオンラインアンケートを実施した。2週間で118名から回答があり、集計結果を基に関係者が意見交換を重ねたが、次の2テーマに解決策が見出せなかったため、当面はシステムの製作を見合わせることを6月16日発表した。

この企画は「当日精算のお客様が当日来場しない問題への対策」および「当日の受付作業の手間の軽減」を主なテーマとしていましたが、前者については「企画の求心力としては不十分」であり、後者については「期待しているような成果を上げるのは困難」であると、判断せざるを得ませんでした。

事前の関係者のツイートで、このシステムは決済後もキャンセル可能な仕組みにして、事前決済のハードルを下げることに取り組むように感じられ、それなら新規開発する意義があるのではないかと思っていたので、残念である。

集計結果は公開されているので、それを使って分析をしてみたい。PCの方はInternet Explorerでは正しく表示されないので、Google Chromeで見てほしい。

有限会社レトロインクサイト/アンケート集計結果「事前精算限定のチケット販売システム」について*2

設問3の券種を見ると、チケット全体に占める割合は次のとおり。当日精算が非常に多いことがわかる。

  • 前売券  31.6%(各種決済の合計)
  • 当日精算 42.3%
  • 当日券  11.2%
  • 招待券  10.1%

設問6は今後増やしていきたい券種を複数回答可で尋ねているが、上位はすべて前売券。しかもコンビニ決済やクレジット決済が銀行振込より上。当日精算を増やしたい人はほとんどいない。新しいシステムを使って事前決済させたいと、回答者の2/3以上が考えているのだ。

  • 前売券(コンビニ決済)  83名
  • 前売券(クレジット決済) 82名
  • 前売券(銀行振込)    55名

設問10は現在のシステムを複数回答可で尋ねているが、このうちコンビニ決済やクレジット決済が使えるものを合計すると延べ97名で、仕組みは違えどそれなりにシステムを導入していることがわかる。Peatixが健闘していることもわかる。一方で、設問3の当日精算が42.3%と多いのは、販売チャネルはあるのに前売券がさばけていないことを意味する。当日精算の柔軟性を兼ね備えた事前決済システム、つまり「一定期間まで日時変更やキャンセル可能なシステム」が求められているのではないだろうか。

設問12は前売券の受付方法を複数選択可で尋ねているが、これは不思議な結果になっている。

  • 当日引き換え(お客様に名前を申し出てもらう)     71名
  • チケットもしくは引換券を受付に提示(または受付不要) 58名

前売券なら受付不要が普通だと思うが、この当日引き換えはなにをしているのだろう。銀行振込でチケットを当日渡すのだろうか。前売券なのに受付が必要な仕組みがこれだけあるのなら、ここを分析すれば改善につながるのではないだろうか。

設問16は当日精算の受付での課題を尋ねているが、自由記入の回答に見るべきものが多いので引用したい。

直前の役者直接の予約が反映しきれない・関係者受付分とのタイムラグ

お客様のリストがお客様から見えてしまうので、他のお客様の情報が漏れてしまう

実際には予約してない方が「あれ?多分予約したんですけど?」のような曖昧な言い分で入れてしまう可能性があること。

関係者のご紹介ですかという質問で身内客問題を引き起こしてしまう。

関係者が招待としてA様二枚をご用意しているけれど、A様方は招待扱いなのを知らずに、お金を頂戴してしまうことや、ご一緒に来られているB様がお名前を仰るために確認の手間を取ってしまう。

うなずくものばかりだが、私が不思議に思ったのが、釣り銭の準備という回答がないこと。釣り銭自体は当日券や物販のために必要だが、当日精算がなければ金額を減らせるのではないか。釣り銭の準備は制作者の大きな負担なので、これが軽減出来ればうれしい。

そして、気になる当日精算のキャンセル率が設問17に。

  • 来場あり             72.5%
  • 来場なし(キャンセルの連絡あり) 12.1%
  • 来場なし(キャンセルの連絡なし) 10.0%

なんと、連絡なしキャンセルが10%に上るという。設問3で当日精算は42.3%と出ているので、そのうち10%だとすると、全体の4.23%が連絡なしキャンセルになる。動員1,000名なら42名、500名なら21名だ。

設問14の前売券を取り扱わない理由として、「販売システムの手数料が割高」が最も多かったが、連絡なしキャンセルが10%だとすると、当日精算の売上の10%が失われていることになる。そう考えると、ソーシャルチケットサービスの手数料相場は5%なので、「手数料が割高」は理由にならない。これまでの回答から、前売券移行のハードルがあることはわかるが、少なくとも手数料が高いというのは思い込みではないだろうか。

連絡ありキャンセル12.1%に対応する手間も考えると、前述した「(決済後も)一定期間まで日時変更やキャンセル可能なシステム」が実現するのなら、需要はあると思う。レトロインクはアンケートが示した結果を見つめてほしい。

(参考)
fringe「チケッティング」

  1. サイト閉鎖中のため、Internet Archive「Wayback Machine」(2022年7月7日保存)へリンク。 []
  2. サイト閉鎖中のため、Internet Archive「Wayback Machine」(2022年1月27日保存)へリンク。 []
  3. サイト閉鎖中のため、Internet Archive「Wayback Machine」(2022年1月27日保存)へリンク。 []