NPO法人FPAPが「トヨタ芸術環境KAIZENプロジェクト」の助成先に選ばれて、本当によかったと思います。これはFPAPだけの出来事ではなく、演劇界全体がFPAPに御礼を言ってもいいんじゃないかと感じています。
こうしたジャンルを超えたアーツマネジメント系のコンペティションというのは、私の知る限り美術系からの応募が多数を占め、舞台芸術――特に演劇系は無関心という状況だったと思います。それが今回は応募79件中、演劇系から1割に当たる8件の応募があり、最終の公開プレゼンテーション大会に進んだ5件に演劇とダンスから各1本が選ばれました。そして助成先3本に演劇のNPO法人FPAP「ITを活用した、アートマネジメントセミナー等のネット配信」、ダンスの山崎広太「新人振付家育成のためのスタジオシリーズ」が採択されたのです。最終段階に残った他の企画がファンドレイジングなど、アート全般を対象にしていたことを考えると、今回は舞台芸術系の思いが美術系を上回ったと言っていいでしょう。演劇自体は総合芸術ですし、ジャンルにこだわりたくはありませんが、近年の現代美術の隆盛を見ると、正直一矢報いた気持ちになります。
この企画にはもう一つ因縁があって、FPAPは昨年の「トヨタ・アートマネジメントフォーラム2007」にも選ばれました。ここでは「アートの力、アートの社会的価値を考える」というテーマで分科会を運営し、そこで討議した内容を最後の総合セッションで、各界のパネリストと共に話し合うというものでした。事前の説明では、この場はクリニックでカウンセリングを受けるような雰囲気で進めたいとのことでしたが、FPAPの高崎さんが「去年、同じ場所でヒドイ目にあった」と書いているように、趣旨とは異なる厳しい批判の場になりました。批判自体は意義あることですが、こうした一方的な進行はどうかと思いますし、結果的に各分科会が招いたゲストを欠席裁判で批判することになり、参加者に失礼な内容になってしまったと思います。パネリストは現代アート界の著名人が揃いましたが、いくら業績があっても人としてどうかと思う尊大な態度もあり、それをたしなめないモデレーターにも疑問を感じました。私はこの総合セッションは失敗だったと思いますし、この件は事務局にもメールではっきり申し上げました。今年の企画は、きっとその反省を活かしてくださったのでしょう。審査員も美術系に偏ることなく各ジャンルから集まり、上から目線ではなく、地道な現場の改善努力へエールを送っていただいたものと思っています。
これで参加がなければ、環境を用意しても演劇系はやる気がないと思われていたかも知れません。単に福岡の一NPOが助成金を取ったのではなく、私はFPAPが演劇界を代表して存在感を示してくれたと思っています。ありがとうFPAP。すごいぞFPAP。