長谷部浩氏が主宰していた劇評サイト「クリティック・ライン・プロジェクト」(CLP)が削除されてしまった。同サイト内の「ポスト・パフォーマンス・トーク・プロジェクト」(PPTP)アーカイブも消えた。
サイトの更新は2006年3月で終了し、その後はCD-ROMで関係者に配布する措置をしたようだが、ネット上の劇評サイトは、ネット上で検索エンジンにヒットしてこそ存在意義があると思うので、残念でならない。テキストベースの劇評ならデータ量もわずかで、無料スペースに移植するなど、ネット上に残す方法はいくらでもあると思う。既存の劇評サイトにコンテンツを贈与してもよいと思う。著作権を有している方はぜひ検討してほしい。
保存することが出来ない演劇という表現で、過去の道標になるのが劇評だ。ネットが当たり前のインフラになった現在では、劇評は紙に印刷されるよりも、ネット上で検索エンジンにヒットすることで記憶を補完し、未見の人への貴重な〈語り部〉となっているのではないか。
CLPの劇評は新聞記事程度の分量だが、02年~06年にかけての劇評211本が揃い、関西の「Culture Critic Clip」(CCC)と並ぶ、複数名による劇評サイトの双璧だった。CCCも更新は09年に終了したが、サイトは現在も維持されており、運営するNPO法人recipがアーカイブの重要性を認識しているのがわかる。
お願いだから、劇評サイトは更新終了後も残しておいてほしい。同じ理由で、カンパニーは解散後も公式サイトを残しておいてほしい。縮小して最低限の上演記録だけで構わない。サイトの維持費用が負担なら、URLは変わっても構わない。とにかく、検索エンジンにヒットするようにしておいてほしい。そうでないと、ネット上に作品が存在した痕跡がなくなり、本当に忘れ去られていくだけではないか。保存出来ない演劇だからこそ、ネット上で痕跡を残し続けるべきではないか。
CLPとPPTPは、いまのところInternet Archive「Wayback Machine」にデータが残っている。下記にトップページ画像とリンクを張っておく。
CLPトップページ(Internet Archive「Wayback Machine」2011年1月11日保存)
PPTPトップページ(Internet Archive「Wayback Machine」2008年6月26日保存)
Internet Archive「Wayback Machine」は検索エンジンの対象外なので、検索結果には表示されない。いまなら全コンテンツをサルベージして、別サイトに移植することも可能だ。
CLPトップページにはこう記してあった。「見ることは、批評すること。私たちは、舞台の記憶をことばに定着します」。劇評サイトの「定着」とは、ネット上にずっと残すことではないだろうか。