この記事は2007年8月に掲載されたものです。
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中央線快速が止まったとき

カテゴリー: fringeのトピック以前 | 投稿日: | 投稿者:

●「fringe blog」は複数の筆者による執筆です。本記事の筆者は 荻野達也 です。

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JR中央線は人身事故が多発することで知られています。観客にとっても沿線の劇場にとっても悩ましい話ですが、中央線沿線の劇場で公演する場合、開演30分前の時点で事故が発生していたら、開演時間を15分遅らせるタイムスケジュールを予め組めないものでしょうか。中央線が人身事故の場合、快速の運転を取りやめて各停のみになることが多いのですが、私の経験では都心を横断しようと思っているときに、この差が約15分つきます。この約15分を担保することが出来れば、新宿以西の遅れはギリギリなんとかなるんじゃないかという発想です。

上演時間の制約があるとは思いますが、それさえクリア出来れば決して不可能な話ではないと思います。いまは携帯で鉄道の運行状況が確認出来ますし、ルールを決めてこの措置を周知徹底しておけば、定刻に来た観客も納得するでしょう。テレビでもスポーツ中継を延長する可能性がある場合はその旨を周知し、視聴者はそれを織り込んで次の番組を留守録しています。平日19時開演の場合など、社会人は仕事終わりギリギリで劇場に急いでいると思います。そんなとき、事故が多い中央線沿線の劇場で上演するのなら、なんとかしてあげたいと思いませんか。

私が最近遭遇したのは、8月17日ソワレにザ・ポケットであった黒色綺譚カナリア派。中野へ向かう途中、中央線快速に乗ろうと神田駅にいたときに事故発生のアナウンスが流れました。あわてて秋葉原経由で各停に乗りましたが、劇場に着いたのは定刻5分後でした。このときは混雑で開演が押しており、幸い冒頭から観ることが出来ましたが、私はネット予約の当日精算だったので、もう少しで座席がなくなるところでした。本来は劇場へ遅れる旨の電話をすべきでしたが、必死に乗り換えていてタイミングを逸しました。自分が当事者になってみて、この辺を切実に思ったわけです。

黒色綺譚カナリア派の受付の態度から察するに、中央線快速が止まっていることを知らなかったようです。開演押しで慌しかったこともあるのでしょうが、こういうときに嘘でもいいから「お待ちしておりました」のひとことが言えたなら、ずいぶん好感度が増すのにと思いました。連絡のない遅れで予約キャンセルになるのは仕方ないと思いますが、仮に立ち見になっても受付の対応でずいぶん心象が違うものです。予約のメモを片付けられてしまうのと、待ち続けていたように置いておくのとでは、全く違います。

黒色綺譚カナリア派は、開演前の携帯電話に関する注意も甘いと思います。「サイレントモードに」とのアナウンスでしたが、中央通路に近い前方の席で、メール着信のLEDが開演直後から終盤まで点滅している携帯があり、光が視界に入って非常に目障りでした。足元のバッグに入れているため本人や周囲は気づいていないようで、離れた観客のほうが迷惑なのですが、距離があって注意出来ません。終盤に客席を使ったシーンがあり、そこで振り向いてやっと気づいたようです。こういう客もいるわけですから、必ず電源から切るよう徹底してほしいものです。

今回、動員を約1.5倍にして1,000名突破ということですが、内容的には前作『繭文~放蕩ノ吊ラレ作家~』が目の覚める三塁打だったのに対し、『リュウカデンドロン~サーカステントか幼馴染の赤いスカート~』は送りバントの印象を受けました。悪いとは言いませんが、青山円形劇場へつなげる重要な時期の公演として、私は物足りませんでした。サーカスというそれ自体幻想的な世界を舞台にするなら、よほどの物語が必要なわけで、すべてが想定の範囲内に収まってしまっていたと思います。動員が増えたのは初見客が多かったわけで、その観客にザムザ阿佐谷時代のクオリティを伝えられなかったことは、深刻に受け止めるべきだと思います。