この記事は2005年7月に掲載されたものです。
状況が変わったり、リンク先が変わっている可能性があります。



演劇ライターは不足している

カテゴリー: fringeのトピック以前 | 投稿日: | 投稿者:

●「fringe blog」は複数の筆者による執筆です。本記事の筆者は 荻野達也 です。

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このタイトルを見て、逆に「演劇ライターは飽和状態ではないか」と思われた方も多いと思います。どの雑誌を見ても、演劇ライターの顔ぶれはだいたい同じですからね。私自身、最近まで演劇ライターは充分足りていると思っていたのですが、よくよく考えてみると、「顔ぶれが同じなのは演劇ライターが不足しているからこそではないか」と感じるようになったのです。

どの業界もそうですが、優秀な人材がいれば少ないパイでもそれを奪い取って、シェアを変えていきます。演劇ライターも全く同じはずで、現在の顔ぶれが変わらないのは競争にさらされていないからでしょう。演劇はメディアに記憶されないので、観劇歴が物を言うところも新参者を阻んでいると思います。そうした「演劇ライターになる余地がない」という錯覚が、ますます演劇ライターの硬直化を招いていると思います。

演劇ライターになりたい、演劇ジャーナリストになりたいという方は、どうか物怖じせずにご自分を売り込んでください。競争がないところに、真のジャーナリズムは生まれないと思いますので。

現在の、圧倒的に演劇評論家は男性、演劇ライターは女性という色分けも変わるべきだと思います。男性客を開拓するために、男が観たくなる記事をもっと男性ライターに書いてほしいものです。

(7月19日追加)

このアーティクルに対して、FEMINEM-blogからトラックバックをいただきました。そちらにコメントしようと思いましたが、コメント欄がオフになっていますので、こちらに追記しておきます。

「男性客を開拓するために、男が観たくなる記事をもっと男性ライターに書いてほしいものです」の意味ですが、私も書く内容が性別によって左右されるとは全く考えていません。内容ではなく、現在の演劇ファンが女性中心なのは事実ですから、それを変えるために男性ライターが演劇を薦めるという行為自体に期待しているのです。


演劇ライターは不足している」への8件のフィードバック

  1. FEMINEM-blog

    別に、女子だから女子向けに書いている訳ではないんでは…?

    fringe blog|演劇ライターは不足している

    演劇ライターがいない、ということは前々から私は実感していますので、記事そのものには大賛成なんですが…

    現在の、圧倒的に演劇評論家は男性、演劇ライターは女性という色分けも変わるべきだと思います。

    まあ、変わ…

  2. tokunaga

    演劇ライターが不足しているかどうかは僕にはわからないし、さほど関心もないんだけど、「売り込んでください」という物言いには違和感を覚えますね。

    自分から売り込んだりしたら、つけこまれるだけだと思います。ただひたすら書きたいことを書けばいい。一昔前だったら発表の場がなかったわけですが、今はネットがあります。

    僕がライター業を始める前というのは、とにかく書かずにいられなくて、でも発表の場なんか無かったから、「投稿魔」になってました。そのうちにお声がかかったという次第。

    よほど達者な文章が書けるなら別ですが(そうだったら小説家か、ジャンルを限定しない評論家、エッセイストの類を目指せばいいと思いますが)、なにかを書きたい、伝えたいという欲求が第一にあるなら、売り込もうなんて考えずに、まず書いて発表すべきだと思います。それを拾い上げるのは編集者の役目。

    もしそれを否定するなら、ライター以前にメディアの必要性から論じるべきだと思いますね。僕は演劇雑誌の類はほとんど買いませんが、そんなもの本当に必要ですか?

  3. tokunaga

    すみません、「必要ですか?」は言いすぎでした。必要でないと言いたいわけではないので、最後は取り消します。

  4. 荻野達也

    当然、まず書く行為が先にあるべきでしょう。
    その書いた原稿を読んでもらうために、売り込んだらどうかというのです。
    いわゆる原稿の持ち込みですね。投稿も広義の売り込みだと思います。

    演劇の特殊事情は、レビューとプレビューが明確に分かれていることです。
    私は魅力あるプレビューの書き手を増やしたいのですが、公演前の短い期間しか成立しないプレビュー原稿は、これまで書くこと自体に障壁がありました。ネットはこの問題を解決しましたので、魅力ある個人サイトが編集者の目に留まるよう、サイトの売り込みがあってもいいんじゃないかと思います。

  5. tokunaga

    そうですね。僕も後から「あれ、投稿って結局売り込みみたいなものか?」と思いました。当時はそんな意識はほとんど無かったのですが。

    ただ、より多くの人に向けて情報を発信することが目的であれば、「演劇ライター」っていうステイタスにこだわる必要もないはずだし、普通にアクセスが増える努力をすればいいんじゃないですかね。

    魅力ある個人サイトが存在すれば、それを検索で見つけるのはそんなに難しくないと思うんですよね。「売り込み」もあっていいかもしれないけど、どちらかといえば、まず編集者の側が「演劇ライターを発掘しよう」という意識を持つべきじゃないか、ということです。

    あと、敢えて「売り込む」としたら、「ライターとしての自分」を売り込むよりは、読者の心を掴みそうな「企画」、すなわちアイディアを売り込めばいいと思います。手前味噌だけど僕が今某音楽雑誌でやってる連載は自分で企画出しましたから。

  6. 大岡淳

    はじめまして。面白い問題提起ですね。出版業界におけるライター稼業って、他の業界と同程度には参入障壁があると思うんですけど、どうでしょうね。ネットでいくら面白い文章を書いていても、編集者がそれを直接拾い上げることって、よほどのヒット数を稼いでいない限りは難しいんじゃないでしょうか(「電車男」や「鬼嫁」クラスで、初めてアンテナにひっかかるみたいですね)。現実には、むしろ「他の出版媒体で書いたことがある」とか「単行本を出している」とかいう業績の方が有利に働くのでは。とすると、演劇以外のもっとハードルが低いジャンルで参入して、業績をあげてから演劇のことも書く、というふうにコンバートする方がてっとりばやいような気がするんですけどね。

    それはともかく、tokunagaさんが触れておられるように、そもそも演劇にとって出版媒体って本当に必要なのかというのは、いっぺん真剣に考えてみる必要がありそうです。地方在住者にとっては、例えば「演劇ぶっく」の舞台写真って、東京の舞台を知るための貴重な糸口になっていると思いますけれども(違うかな?)。関東や関西のような都会の観客にとっては、もう「初日通信」すら必要ではなく、「2ちゃんねる」の口コミでじゅうぶん情報は取れそうですね。私も以前は「ぴあ」で細かく情報を収集していましたが、例の「登録料3万円」以来小さな劇団の情報は載らなくなったので、今はネットでの情報のとりこぼしがあった場合にのみ、「ぴあ」や「シアターガイド」を参照しています。

  7. curibobow

    初めまして。ケンカふっかけてるかのようなトラックバックにきちんとお応えいただいてありがとうございます。
    遅くなりましたが追加部分へのお返事をFEMINEM-blogに追加しました。
    ので、こちらの件はわたくしどものブログをご参照ください。

    で、演劇にとって出版(印刷?)媒体が必要かどうか…

    わたくしは地方在住者なので演劇ぶっくもシアターガイドもぴあも、あってくれた方が便利です。
    ネットでももちろん情報は拾いますが、雑誌はページの制限により、ある程度絞られた(選別された)情報になっている部分で参考になります。例え、広告とかツテとかシガラミとか絡んだとしても「編集」されて「整理」された上での情報も欲しいなあ、と。
    地方だと、確実に再演とかツアーとかなので、初演のときの雑誌の扱いで演劇の質もある程度分かりますし。

    ただし、地方在住のコアな演劇ファンでない人へ舞台をススメるツールとしてはどうなのかなぁと思います。(地方公演があっても載ってないし、映画と違って作品が地方にやって来るときには旧い情報だし。)

  8. 荻野達也

    >クリボボさん

    追記に対する見解を、そちらのコメント欄に書かせていただきました。
    コメント欄が長文を受け付けないので、3分割になってしまいましたが、ご了承ください。

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