この記事は2018年2月に掲載されたものです。
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演劇の創客について考える/(19)共通点があるなら映画パンフレットに演劇の広告を掲載し、映画館から劇場へ送客しよう

カテゴリー: 演劇の創客について考える | 投稿日: | 投稿者:

●「fringe blog」は複数の筆者による執筆です。本記事の筆者は 荻野達也 です。

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●分割掲載です。初めての方は(予告)から順にご覧ください。

『スリー・ビルボード』チラシ

公開中の映画『スリー・ビルボード』は、英国の劇作家マーティン・マクドナーによる製作・脚本・監督作品で、3月4日(現地時間)に発表されるアカデミー賞最有力候補となっています。ハリウッドでも低予算のインディペンデント作品を手掛ける「FOXサーチライト・ピクチャーズ」が提供し、一筋縄ではいかない人間の感情の起伏が見事に表現されています。

マクドナーが映画界でも暴れ出した。南部の片田舎の呼吸を忘れる超濃密1時間55分。奇抜が過ぎるのにどういうわけだか愛おしい。

長塚圭史

英国演劇の鬼才が3作目にして映画史に残るマスターピースを創りやがった。何もかも完璧。これぞ群像劇のお手本。嫉妬する。

ケラリーノ・サンドロヴィッチ

私も傑作だと思います。こんな傑作がミニシアターではなく、全国のシネコンで公開されているいまこそ、演劇人は足を運ぶべきだと思います。これを観ることで己の才能を自覚し、演劇から足を洗う人々が出てもいいんじゃないかと思います。それほどの内容です。

一般の映画ファンも、この作品は舞台を観ているような感覚を味わうと思います。様々な場所でのロケーション、映画ならではのカットバックはあるのですが、印象的な台詞の積み重ねで感情を紡ぎ、観客の想像に委ねる展開そのものが、良質の会話劇を目撃しているかのようです。この映画を観て、マクドナー戯曲の舞台作品を観たいと思う映画ファンもいるのではないでしょうか。

『スリー・ビルボード』パンフレット

そう思っていたら、パンフレットには長塚圭史氏のレビューと、マクドナーの主な舞台作品が掲載されていました。これまで長塚氏はマクドナー作品を3本演出し(『ウィー・トーマス』『ピローマン』『ビューティー・クイーン・オブ・リナーン』)、今年5月には2016年のローレンス・オリヴィエ賞最優秀作品賞を受賞した『ハングマン』を日本初演します。翻訳は小川絵梨子氏で、これが長塚氏との初タッグになるのも話題です。

パルコプロデュース『ハングマン』広告

そして、なんとパンフレットの表3部分にパルコプロデュース『ハングマン』の広告が。映画のパンフレットに演劇の広告が掲載されるのは極めてめずらしいと思います。まさに『スリー・ビルボード』を観た観客を劇場に誘う広告で、全国ツアーを予定している演劇公演にぴったりです。

これぞと思われる映画パンフレットに演劇の広告を出す。パルコの判断を高く評価したいと思います。

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