5月20日に発行された、AICT(国際演劇評論家協会)日本センター『シアターアーツ』(晩成書房)61号掲載の「2016AICT会員アンケート」に参加させていただいた。
日本劇団協議会機関誌『join』88号特集「私が選ぶベストワン2016」に加え、こちらにも参加したのは、アマヤドリ『ロクな死にかた』が素晴らしかったことを活字に残すためである。
自分が本当によいと思ったものは、誰がなんと言おうと、あらゆる手を使って広める――それが保存されない演劇に向き合う正しい姿だと思う。皆さんも本当によいと思える作品に出会ったときは、大騒ぎしてほしい。そうでないと、小劇場演劇の狭い世界から評価が広まっていかない。
■ベスト舞台(5作品まで、順位あり)
(1) アマヤドリ『ロクな死にかた』(作・演出=広田淳一/スタジオ空洞ほか)
(2) DULL-CORORED POP『演劇』(作・演出=谷賢一/王子小劇場ほか)
(3) 劇団チョコレートケーキ『治天ノ君』(脚本=古川健、演出=日澤雄介/シアタートラムほか)
(4) ヨーロッパ企画『来てけつかるべき新世界』(作・演出=上田誠/本多劇場ほか)
(5) 青年団『ニッポン・サポート・センター』(作・演出=平田オリザ/吉祥寺シアター)
■ベストアーティスト(3名まで)
○詩森ろば(劇作家・演出家/風琴工房)
○松本哲也(劇作家・演出家・俳優/小松台東)
○山田百次(劇作家・演出家・俳優/青年団リンク ホエイ)
■実験的・先駆的作品
悪い芝居リインカーネーション『春よ行くな、』(作・演出=山崎彬/テアトルBONBONほか)
■実験的・先駆的作品アーティスト
山崎彬(劇作家・演出家・俳優/悪い芝居)
■優秀新人アーティスト
山本タカ(劇作家・演出家/くちびるの会)
■コメント
小劇場演劇でもプロデュースやユニット公演が全盛を極める中、実力派がカンパニーであることの意義を強く訴えた。前身のひょっとこ乱舞から十五周年を迎えたアマヤドリは、大幅改訂による連続再演で壮大なドラマを現出。『ロクな死にかた』は、ライフログが残り続ける現代で、死への向き合い方を真正面から描いた群像劇。観客を取り込む多重構造で、これほど死について実感させられた作品はない。演劇を観始めたころの魂を揺さぶられる感動が甦った。こんな作品に出会うために、私は劇場に通っているのだ。
活動休止公演となったDULL-COLORED POP『演劇』は、人生そのものを演劇に見立てた究極のメタ演劇。執筆段階から情報発信を続け、劇団員との絆を印象づけた。劇場で上演される作品だけが演劇ではない。演劇人の生きる姿もまた演劇なのだ。ヨーロッパ企画『来てけつかるべき新世界』は、設定を超えた物語を紡いだ新境地。彼らのベストではないか。
■年間の観劇本数
約70本
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『join』とは指標が異なるので、異なる視点から作品・アーティストを挙げられたのもよかった。コメントで「彼らのベストではないか」と書いたヨーロッパ企画『来てけつかるべき新世界』は、このアンケート提出後に岸田戯曲賞を受賞した。これも喜ばしい。
なお、AICT会員全体での「劇評家が選ぶ2016ベストステージ」は、維新派『アマハラ』(構成・演出=松本雄吉/奈良・平城京跡)と劇団チョコレートケーキ『治天ノ君』が同点1位だった。