この記事は2017年8月に掲載されたものです。
状況が変わったり、リンク先が変わっている可能性があります。



公立劇場や公共ホールは「足場の組立て、解体又は変更の作業」の上乗せ規制をするべきではない。

カテゴリー: さくてき博多一本締め | 投稿日: | 投稿者:

●「fringe blog」は複数の筆者による執筆です。本記事の筆者は 高崎大志 です。

Pocket

 7月1日に労働安全衛生改正規則が施行されました。

 この改正規則によりますと、イントレや足場を組むような時に、所定の講習を受ける必要があるとなっております。

 fringeナレッジにて詳しくまとめられておりますが、幸いなことに

小劇場演劇の現場に多い個人事業主や任意団体メンバーは法律上の対象とはなりません

 とのことです。
(学生劇団の公演も対象とはならないようです。)

 一安心といったところですが、公立劇場や公共ホールが独自のハウスルールを設定して、法令の対象外である場合にも同等の対応を求めてくるケースが想定されます。

 こういうハウスルールを一般に、「上乗せ規制」といいます。

 しかしこのような上乗せ規制の設定について、公立劇場や公共ホールは慎重であるべきでしょう。

 まず第一にこのような規制は、作品製作のコストを押し上げ、その分表現の自由が損なわれます。独自のハウスルールの設定で、これまでやれていた表現方法ができなくなるということには慎重であるべきです。

 次に、劇場やホールでは舞台管理職員がいて、公演主催者とは別の立場からの第三者的な目で安全な設営が監視されています。

 今回の規制は、高層の建築に伴う足場の組み立て等に当然に適用されるものですが、まずそのような足場は高層・大規模でより長期間の使用が想定されるものです。そこではすべての作業が第三者的な目で監視されているというわけではありません。
 劇場での足場の設営は小規模なもので危険は相対的に小さく、さらには第三者の監視があり高度の安全体制があるということができます。

 上乗せ規制を独自に作って、表現団体の活動を制約する合理性はまったくないと言っていいでしょう。

 一方、直接に作業する場合は当然として、そのようなことがないとしても、舞台管理の職員が、これらの講習を受けることは良いことだと思います。

 公立劇場や公共ホールでは、職員の研修のための予算が確保されていますし、こういう法令ができた場合に、法令を根拠にして予算措置をすればまず確実に予算がつきます。
 ここは民間劇場にはない、公立劇場のアドバンテージでしょう。

 ここからは、劇団や学生劇団の方へのお願いですが、もしそのような上乗せ規制をつくるような、公立劇場や公共ホールがあったら、上乗せ規制を独自に行う理由がなんなのか、ぜひ質問していただきたいと思います。
 おそらく、危険・安全という言葉で思考停止して、規制と得られる成果のバランスなど何も考えずにハウスルールを設定したことがわかるかと思います。
  
 ちなみにおかしなハウスルールでも、一度できてしまうと、なかなかその非が認められずに固定化してしまうというのはよく聞く話です。

 できれば、このブログをより多くの公立劇場や公共ホールの関係者が目にする可能性を高めて、変なハウスルールがデキることを未然に防ぐために、ブログ冒頭の「Tweet」ボタン等をクリックしていただければと思います。

(追記)

 痛ましい事故が起こってしまいました。

 一般的な建築現場でのイントレは野外での設置であり、高層になりうることにも加えて、台風による強風と言った自然災害にも備えないといけないという点が明らかになった事故だと思います。
 自然災害へのリスクをほぼ考えなくて良い劇場内で低層のイントレを組むことのリスクとは比較にならないようです。
 
ーーー

 ちなみに、なぜこのような規制ができるのかということで、個人のブログも書いておりますので、もしよければそちらもご覧ください。

 PINstage高崎大志の「さくてきブログ2」
「演劇表現の自由な活動を少々制約する新たな規制が始まりますけども、、対策がとれそうです。 」
 http://sakuteki.exblog.jp/25153192/