劇場法(仮称)の議論について、前提条件の部分でなにか引っ掛かるものがあった。それを言語化すべく、「劇場法(仮称)が総論賛成各論反対になる理由――推進派はここをもっと説明すべき」を書いて以降、ずっと考え続けてきた。言葉が悪いが、やはり現在の議論では民間劇場はないがしろにされてしまうとの思いがあり、公共にしか出来ないことはなにかを突き詰めて考える作業をした。その答えがこの文章である。
カテゴリー別アーカイブ: フリンジのリフジン
コアなファンが全員観るのは当然、その上を目指さないと話にならない
『BRUTUS』12月1日号特集「映画監督論」の覆面座談会で、長年アート系映画を手掛けてきた配給会社代表の方が、こう語っている。
これに対してコアな演劇ファンの数を考えたとき、こまばアゴラ劇場の支援会員数が一つの目安になると思う。平田オリザ氏は劇評サイト「ワンダーランド」が2009年に行なったインタビューで、支援会員制度に基づくコアな観客数を400人ぐらいだと答えている。アゴラ界隈で上演されるアーティスティックな作品に足を運ぶ観客数として、体感的にもそれぐらいではないかと思う。
「小劇場劇団の制作担当者検定」と「代表者検定」
「Yahoo!みんなの検定」に、「小劇場劇団の制作担当者検定」と「小劇場劇団の代表者検定」があったのでやってみた。
検定というよりアンケートのような設問で、どれか一つが絶対正しいと言い切れないものもある。両方の検定にダブって出題されている設問もあった。
私の結果は次のとおり。
「トップレベルの舞台芸術創造事業」(仮称)で旅費・運搬費が対象外なら、「舞台芸術の魅力発見事業」を復活出来ないか
候補作が上演台本中心となったいま、白水社は岸田戯曲賞の推薦・選考時期をずらすべきではないか
劇場法(仮称)が総論賛成各論反対になる理由――推進派はここをもっと説明すべき
劇場法(仮称)に関する演劇界の議論は一巡し、総論賛成各論反対の印象が強い。各論の部分に様々な思いが交錯し、論点が見えにくくなっているように感じる。私個人は5月16日に「劇場法(仮称)に対する私の考え」を記し、劇場法(仮称)の提言自体には賛成を表明したが、合意形成にもっと時間をかけること、民間劇場に対する優遇措置を条件としてきた。この半年間の経緯を踏まえ、私なりに各論部分の問題点を解きほぐしていきたい。
劇場法(仮称)以前に興行場法を改正すべきでは
劇場法(仮称)に関する議論は、専門職員の配置やアーツカウンシルの在り方に収斂してきた感があるが、ここで原点に立ち返って劇場を巡る法律について考えたい。ハードとしての劇場を規定する法律は建築基準法、消防法、興行場法などがあるが、かつて平田オリザ氏は根拠法のない劇場についてこのように書き、自分たちでなにも決められない劇場を嘆いていた。
劇場法(仮称)推進派はこのインタビューを読むべきだ
劇評サイト「ワンダーランド」のインタビュー記事「芸術創造環境はいま―小劇場の現場から」第3回の上田美佐子氏(シアターΧプロデューサー兼芸術監督)が素晴らしい。拙速な劇場法(仮称)制定に警鐘を鳴らしている上田氏のまとまった考えが読める。
これを読んで、一人一人が改めて劇場法(仮称)について考えてほしい。推進派から考えを変える方もいるのではないか。それくらい心に響く内容だ。
山本忠氏と日活JOE氏が一日限りの俳優復活
神戸・六甲山に登る六甲ケーブル「六甲山頂駅」天覧台内に、六甲ヒルトップギャラリーという施設がある。ここで神戸ゆかりの登山家・加藤文太郎の企画展が10月22日~11月17日に開かれているが、その関連イベントとして昨年の第16回OMS戯曲賞大賞を受賞した故・大竹野正典氏の遺作『山の声』のリーディング公演が11月13日にある。水難事故で昨夏急逝した大竹野氏が、加藤文太郎とパートナーの遭難を描いた二人芝居だ。加藤文太郎は新田次郎著『孤高の人』のモデルとして知られる著名な登山家だ。
これに出演するのが、2001年10月の遊気舎以来9年ぶりの俳優復活となる山本忠氏と、同じく1998年1月のファントマ客演以来ほぼ13年ぶりではないかと思われる日活JOE氏だ。二人は90年代前半にこれっきりハイテンションシアター(現・ファントマ)で活躍。山本氏は94年に遊気舎『交響詩・大森良雄』に客演し、その演技に惚れ込んだ後藤ひろひと氏が三顧の礼で96年に遊気舎へ迎えた名優だ。『ダブリンの鐘突きカビ人間』など、山本氏がいなければ誕生しなかっただろう作品も多い。JOE氏もこれっきりハイテンションシアターで数々の主役を務め、そこから自身のユニット・日活浪漫劇場を主宰した。
『シアターアーツ』44号は精華小劇場の現状にフォーカス――DIVEとLLPアートサポートは未来を共に考えていくべき時期
第3次刊行となった『シアターアーツ』(発行/AICT日本センター、発売/晩成書房)の2号目となる通巻44号が9月に出た。これまでの『シアターアーツ』は演劇専門誌というより学術誌と呼ぶべき内容で、よほどの評論好きしか手に取らないと思っていたが、第3次からは創造環境を巡る時事的・制作的な話題も多く、これまでに比べて近寄りやすくなった。私は演劇評論というものは作品だけを対象にするのではなく、創造環境全体を含めて対象にしないと同時代に語る意味がないと考えているので、今回の編集方針は評価したい。
第3次では毎号時事的な論考に加え、地域からの情報発信にもページを割いている。43号の論考は劇場法と支援制度の見直し、そして柴山麻妃氏(劇評誌『NTR』編集長)が福岡の90年代以降の歩みを概観している。『シアターアーツ』読者層を想定した鋭い分析が読めるので、福岡の演劇人はぜひ目を通すべきだろう。福岡の抱える課題をここまで端的に指摘した文章を、私は読んだことがない。