作成者別アーカイブ: 高崎大志

創客よりも創表現者

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地域の公共劇場の活動が充実してきています。
これは、今の日本の舞台芸術シーンでもっとも重要な課題の一つである中央一極集中の緩和に直結することで、素晴らしいことだと理解しています。

これらの公共劇場の活動は多くの人が評価するところだと思いますが、地域の人材をコアにおいて優れた作品を創り世に問う。という目的があるならば、その目的からは少し遠ざかっているようにも思えます。

地域の公共劇場の役割としてもっとも重要と思われる鑑賞事業、アウトリーチなどでは充実した活動を行い、創客にも成功している例は耳にします。また地域発の作品に取り組む劇場もあります。しかし、地域の表現者の育成で明確な成果を出した例をまだ聞きません。

演劇鑑賞を地域の住民の日常的な選択肢にするということは大切な事であり、その困難さを克服しようとする努力に頭が下がります。
しかしながら、鑑賞事業、アウトリーチ、創客と同じように大切なことは地域の表現者(特に脚本・演出家)を育成することです。

脚本・演出家の才能を東京に依存している現状は、10年かかると思いますが、変革していかなければならない現状です。優れた表現者を育成することは、創客よりも時間がかかり明確な成果もすぐには見えにくい分野です。

特に優れた劇場・音楽堂からの創造発信事業における重点支援劇場、地域の中核劇場の採択を受けた劇場には、地域の表現者人材を育成するという事業を重視してもらいたいと思います。

アーツカウンシル検討委の報告書案を深く憂慮する

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「文化芸術活動への助成に係る新たな審査・評価等の仕組みの在り方について(報告書案)」に関する意見募集の実施について
を拝読しました。

この報告書案が全体の中でどういう位置づけなのか、PD・POは何名くらいのイメージなのか、先行二分野と演劇分野への適用の関係などが、出てないので十分な検討ができない部分はありますが、それでもパブリックコメントに付したことについては、まず、評価されるべきだと考えます。

この報告書案は大雑把に言えば、日本芸術文化振興会が行う助成制度をよりよいものにするためにアーツカウンシルを設置する。そのアーツカウンシルの在り方についての提言とみていいでしょう。

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国政府が文化政策を考えるとき、7割位は東京のことしか考えてない

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タイトルは仮説にすぎません。また演劇分野に限ってのことでもあります。
が、文化庁系助成の数字を検討していくと、私が印象としてもっていたタイトルのような比率を、より強く感じさせるようになりました。

3月30日に、独立行政法人 日本芸術文化振興会のサイトで
・芸術創造活動特別推進事業(以下「補助金」)
・芸術文化振興基金(以下「基金」)
の結果が公開されました。

ご存じのとおり、この二つの制度は、目的を異にしており、おおざっぱに言えば、補助金は国内トップクラスの事業、基金は全国区クラスの事業を対象にしているといえばわかりやすいでしょう。

私はこれまで、基金の地域バランスの不公平についてこのブログで繰り返し述べてきましたが、補助金については述べていませんでした。それは補助金については現時点で東京に集中するのは妥当性があると考えていたからです。

このため、補助金について注意してみてなかったことが悔やまれます。

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四国・松山に狼煙あがる|C.T.T.in松山

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作り手の育成を主眼とした試演会企画であるC.T.T.が、さらに新たな地域の広がりを見せています。
その作品上演と意見交換会が四国・松山で開催されます。C.T.T.については、以前もfringeブログでふれましたので、詳細は避けますが、東日本の震災がなおも予断を許さぬなか行われるこの企画に新たな意義を見いだしています。

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アーツカウンシル検討委員は、特定地域の偏向が過ぎる

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 日本芸術文化振興会は日本版アーツカウンシルを導入するため、「文化芸術活動への助成に係る審査・評価に関する調査研究会」を立ち上げました。
 (会の正式名称が長すぎるため、ブログタイトルでは会の趣旨を要約しましたが、正式名称は「文化芸術活動への助成に係る審査・評価に関する調査研究会」)

 私は劇場・音楽堂法への移行も賛成ですし、将来的に道州ごとに設置されるアーツカウンシルに一定の権限を与えるという分権的な方針にも賛成です。この研究会の設置を評価します。

 しかし、どうにも違和感を拭えないのは首都圏の委員があまりにも多いことです。11人の委員中、首都圏の委員が10人を占めているようです。(正確な拠点地域は詳細に調べれば誤差がでるかもしれません)
 私が知る限り、個々の委員が優れた見識の持ち主であることはわかります。ひとりひとりに瑕疵があるわけではない。しかしながら11名そろった名簿を見ると、これはひどい状況と言わざるを得ません。

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新進芸術家育成事業に期待したい

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次代の文化を創造する新進芸術家育成事業の公募情報が公開されました。
赤字補填の制約から脱却し、応募できる事業の幅が広がったことは高く評価されるべきだと思います。
募集期間が短くなっていますが、制度改善に伴う今年度に限定されたものとして受け止め、全体としてはこの改正を評価したいと思います。期間が短いことはなにより事業担当者に忸怩たる思いがあるはずです。

とはいえ公開された企画提案要領に、やや違和感を感じる部分があります。
それは(1)趣旨に記載された
「本事業は、新進芸術家等が基礎や技術を磨いていくために必要な舞台などの実践の機会や、広
い視野、広い見聞、広い分野に関する知識を身につける場を提供するとともにその基盤整備を図
り、次代を担い、世界に通用する創造性豊かな新進芸術家の育成等に資するものです。」
のうちの下線部分です。

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地域演劇の活性化のために必要な

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自戒を込めて書きますが、地域演劇の活性化の事業を行っている担当者には、地域の状況を深く洞察し、課題を解決する事業提案と、その事業を適切に執行する能力を持つことが欠かせません。
そのために、担当者には相当の努力・勉強が必要だと思います。他都市の事例についても情報収集し、相対化してその地域の状況を理解することが必要です。

地域の劇団などを実際に活動を行っている人々に広く意見を聞くことも有効でしょう。
このなかでかならずしも、その地域全体のプラスと、個別の劇団のプラスを分けて考えられない人もいるかも知れません。それらの意見を取捨選択する必要もあります。
私は必ずしも、ニーズ調査やヒアリング、アンケート等の手法が必須だとは思いません。直接の目的は各地域の状況に合わせた適切な事業を行うということで、これができているならば、それらの手法はなくても良いかも知れません。

現在、大都市で活躍している表現者やアートマネージャーが地域で活躍する時代が来るとするならば、大都市で培ったネットワークを活用するだけで終わるのではなく、その地域の演劇シーンが真に必要としていることへの分析を絶えず続けて欲しいと思います。

舞台芸術の地域間格差の緩和こそ急務

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荻野さんが書かれた劇場・音楽堂法への考察は、さすがに考えさせるものがあります。民間劇場への配慮など、この時期に考えるべきことは少なくないと再認識しています。

しかし、それでも私は、舞台芸術の地域間格差の緩和こそ急務であり、そのために劇場・音楽堂法の早期の成立を希望する立場です。

ほとんどの劇場・音楽堂法の議論は、大都市の演劇関係者からでてくる意見です。これは有識者のほとんどが大都市にいること、地域での制作専門職の少なさなどからやむを得ないと思います。

私が、早期に劇場・音楽堂法の成立を希望するのは、地域の演劇シーンは砂漠化がすすんでおり、早急な対策が必要と実感しているからです。この砂漠化は進めば進むほど回復が困難です。

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「芸術創造環境はいま―小劇場の現場から」第3回を読む

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劇場付きのプロデューサーとしての信念や生き様、これまでの実践に深く感銘を受けました。文字通り心に響く内容でした。

私が東京で一番最初に見た芝居はシアターXでのつかこうへいさんの芝居です。もう15年以上前のことだったと思います。こういう方の実績により、当時の私がそこでつかさんの舞台と出会えたのだなぁという感慨があります。

しかし劇場・音楽堂法に反対する意見は、感情論レベルのものが多いようです。
具体的な挙証がほとんどなく、「経済不況なので政府がファシズム化のための準備をしている。」というのが根底にあるようです。

法律制定への拒否反応にも違和感を感じます。
芸術文化振興基金も、なんらかの法律に基づいて行われていることと思います。そちらの法律には拒否反応を示さず、劇場・音楽堂法には強い拒否反応を示しています。

また残念なのは、東京一極集中の偏った環境への疑問的視点がないことです。東京一極集中の緩和は、相対的に見れば東京に落ちるお金が減ることにつながることを想起させます。なので既得権益を守ろうとすれば、反対するのは理解できなくはありません。
民間劇場への配慮も十分なされるべきだろうと思います。

劇場・音楽堂法には、より検討すべき緻密な指摘を提示している方がいらっしゃいます。私はそのような指摘の方が重要だろうと考えています。

私が東京で対話する演劇関係者の多くは、一極集中の緩和にそれほど否定的ではない。むしろ新たなチャンスがそこにあるように見ている。
このことに期待したいと思います。

繰り返しますが、私がどうかと思うのは、このインタビューの1/3をしめる劇場・音楽堂法の部分だけであり、大半を占めるそれ以外の部分については、大変感銘を受けております。すばらしいプロデューサーで模範とすべき方だと感じています。

劇場・音楽堂法の議論について

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福岡の高崎です。
劇場・音楽堂法の議論については、落ち着いてきた感がありますが、福岡という地域で活動する立場からの考えを書いてみようと思います。

これまでの議論や多くの人の意見を聞くところによると、演劇分野では劇場・音楽堂法に賛成する人が多数という印象を持っています。
若干補足すると、劇場・音楽堂法について(現在入手しうる情報の範囲で)十分な理解のある人の多数は、と補足した方が良いかもしれません。

有識者の多くは「総論賛成、でもこの一部分には配慮が必要。」という姿勢の方が多いようです。
この場合の意見表明では、総論賛成は一言ですんでしまいますが、各論への言及はそれなりに文章量が多くなるので、印象としては反対意見に見える向きもあるかもしれません。
しかし、ちゃんと読んでいけば、十分な理解がある人の大半は劇場・音楽堂法に賛成であることが分かると思います。

今後、劇場・音楽堂法の理解がすすめば、この多数は圧倒的多数に進むことも間違いないでしょう。現時点において、劇場・音楽堂法が成立するかどうかは流動的ですので、関係者の大半が賛成であるということが正しくこの業界から発信されることが、もっとも重要だと考えています。

劇場・音楽堂法に期待している効果は、舞台芸術の地域間格差の是正が一気に進むという点です。私はこの問題を、今の日本の演劇環境でもっとも重要かつ緊急に取り組む問題とみていますので、劇場・音楽堂法はできるだけ早い成立を望んでいます。

もちろん各論の部分で、配慮して欲しいこともあるのですが、そこへの言及は、印象として、私の賛成という意図があやまって伝わる可能性もありますので、時期を改めたいと思います。