この記事は2018年7月に掲載されたものです。
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【芸術文化基金】助成手続きをより煩雑化することは、慎重の上にも慎重に

カテゴリー: さくてき博多一本締め | 投稿日: | 投稿者:

●「fringe blog」は複数の筆者による執筆です。本記事の筆者は 高崎大志 です。

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 これは正確な情報に基づくわけではなく、非公式な情報ないしは噂に属する情報に基づきます。

 芸術文化基金の助成申請の要件や手続きのハードルが上がり、申請や報告の手続きが今後さらに煩雑化していくのではないかという見通しについて耳にしました。

 私は、他分野の芸術シーンについてはわからないのですが、国内の演劇シーンで私の目に見える風景から言えば、これはちょっと良くないのではないかという印象を持っています。
 もし、そうなれば国内の演劇シーンにとって、デメリットが大きいのではないかと思います。

 手続きを複雑化するメリットは、不正手続きの防止でしょう。手続きを複雑にすることで、不正な申請を防止する効果は確かにあるでしょう。

 しかし手続きを煩雑化することによって、デメリットもあります。まっとうに助成制度を利用している多くの団体の申請コストが増すことです。
 そして、そのデメリットは小さいものではありません。申請コストの増大は、作品作りに投入されるカンパニーのリソースが減ることにつながります。

 文化庁補助金が対象としている団体は、規模も大きいでしょうから多少の煩雑化は現体制で吸収できるでしょう。しかし、芸術文化振興基金助成が対象としている団体は必ずしもそうではありません。

 不正防止は、手続きの煩雑化で行うべきではなく、ふつうの団体に迷惑をかけない方法で行うべきでしょう。

 例えば、不正を防止するなら、やったところを厳罰に処すのが一番安上がりで、効果も高いと思われます。
 また、申請様式を工夫し、申請の手間はかからないが不正は防止しやすい申請様式を考える余地もあるだろうと思います。

 また、今の国内の演劇シーンでは「省エネ化」がどんどん進んでいるようです。短編作品やリーディングに近い形式の公演が増え、照明や装置をしっかり作った本格的な演劇公演が減っている傾向にあるようです。
 申請手続きの煩雑化は、この傾向を助長するでしょう。

 もうひとつ、芸術文化振興基金助成の申請手続きが煩雑化すると困る問題があります。

 芸術文化振興基金が使っている申請書の様式を流用している地方の助成制度というのがあるわけです。参考にしているというところまで広げれば、ほとんど多くの自治体が参考にしていると思われます。
 芸術文化振興基金の申請手続きが煩雑化すれば、後追いで、地方自治体のやっている助成まで、煩雑化することが予想されます。

 地域の芸術団体の制作力を伸ばしていくためには、助成制度に段階的なハードルがあるのがベストです。一例を示しますと、以下のように段階分けされているのが良いと思います。

演劇分野の助成額

・文化庁補助金・・・・・・・・平均800万円・・・(高額 煩雑)
・芸術文化振興基金助成・・・・平均180万円
・地域の助成・・・・・・・・・ 10~50万円・・・(低額 簡素)

 日本芸術文化振興会は、日本のアーツカウンシルにあたるわけですから、自分たちの組織的な事情だけではなく、そして一部の地域のことだけではなく、さらには短期的な時間軸だけではなく、広い視野で長期的な展望を見据え、事業の運用や工夫によって日本の舞台芸術シーンを活性化してほしいと思います。