この記事は2015年2月に掲載されたものです。
状況が変わったり、リンク先が変わっている可能性があります。



福岡・福津市文化会館の指定管理者変更で考えさせられる、公共ホールでの芸術団体レジデント・フランチャイズの継続性

カテゴリー: フリンジのリフジン | 投稿日: | 投稿者:

●「fringe blog」は複数の筆者による執筆です。本記事の筆者は 荻野達也 です。

Pocket

福岡の公益財団法人福津市文化振興財団が、福津市文化会館(カメリアホール)の2015年度からの指定管理者選定に敗れ、3月末で解散すると報じられている。新たな指定管理者はシダックス大新東ヒューマンサービス九州支店とのこと。カメリアは椿のことで、同じ名前のホールは全国に複数あるが、これは福岡の話である。

毎日新聞ニュースサイト「福津市文化振興財団:解散へ 『収入の道なく、組織の存続無理』 会館の指定管理者変更、大きな波紋 2団体も追随 /福岡」 ※要会員登録
http://mainichi.jp/area/fukuoka/news/20150109ddlk40040291000c.html

劇場を運営する自治体の外郭団体が、指定管理者選定に敗れた直後に解散した例としては、かめありリリオホール、かつしかシンフォニーヒルズを運営していた東京の財団法人葛飾区文化国際財団が知られている。06年度からの指定管理者選定に敗れ、06年3月末に解散した。それまで経営改革のお手本として全国に紹介されていた優良財団の解散は公共ホール関係者に衝撃を与え、指定管理者制度の功罪が議論されるきっかけとなった。

今回の報道で注目すべきは、福津市文化会館をフランチャイズにしていた津屋崎少年少女合唱団、勝浦人形浄瑠璃保存会も解散するとされたことだ。福津市は指定管理者が変わっても支援は続けるとしているが、芸術団体側は財団と「二人三脚で活動してきた」ことを理由にしている。心情は理解出来るが、芸術団体にとって最も重要なのは表現活動を継続することであって、それが保証されるのに解散するというのは、残念と言わざるを得ない。

その後、勝浦人形浄瑠璃保存会は会員全員で話し合い、活動継続に転じたが、津屋崎少年少女合唱団は3月解散のままのようだ。

毎日新聞ニュースサイト「勝浦人形浄瑠璃保存会:活動継続決める 福津市 /福岡」 ※要会員登録
http://mainichi.jp/feature/news/20150126ddlk40040220000c.html

前述の葛飾区文化国際財団の場合、かつしかシンフォニーヒルズのレジデントオーケストラとして、市民オーケストラの葛飾フィルハーモニー管弦楽団があったが、新たな指定管理者から支援が継続され、年2回の定期演奏会を続けている。大人数のオーケストラにとって、練習場の確保と大型楽器の保管がどれだけ大変かは、演劇関係者も容易に想像がつくだろう。公共ホールでのレジデントやフランチャイズが広がり始めた現在、たとえ指定管理者が変更になったとしても、その意思はきちんと継続されなければいけない。そこを制度的に確約させないと、どんなに意義のある支援事業であっても、指定管理者が変わるたびに白紙に戻る可能性がある。指定管理者の契約年数を超えた長期事業が出来ないこと自体が、そもそもおかしい。

芸術監督などを置き、その責任でレジデントカンパニーを選ぶ場合は別だが、劇場が意思を持って地域の芸術団体を長期支援しようとする場合、指定管理者の変更とは関係なく活動が継続されることを、指定管理者の募集要項に明記し、レジデントになる芸術団体側も契約書で同意しておきべきではないだろうか。専門性が高すぎ、そうした継続性を担保するのが困難だというのなら、そもそも公共ホールに指定管理者制度を導入すること自体が馴染まないということになる。

今回の選定結果だが、福津市公式ホームページでは、議事録の表紙しか公開されていないようだ。公益財団法人の解散につながる重要な決定であり、ぜひ評価の詳細を公開してほしい。