この記事は2011年6月に掲載されたものです。
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意見募集したのなら、きちんとプロセスを踏んでほしい

カテゴリー: フリンジのリフジン | 投稿日: | 投稿者:

●「fringe blog」は複数の筆者による執筆です。本記事の筆者は 荻野達也 です。

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日本芸術文化振興会によると、「文化芸術活動への助成に係る新たな審査・評価等の仕組みの在り方について(報告書案)」に関する意見募集は合計141件だったそうだ。

このうち主な意見は、6月10日午前に開催された第9回研究会で配布された。報告書案について意見募集したのだから、本来なら意見を踏まえた議論が行なわれ、それを経てから報告書の最終まとめになると思うのだが、日本芸術文化振興会は「今後の取組の参考にさせていただきます」としただけで、そのまま6月10日付で報告書を完成させ、6月13日に公表した。このスケジュールでは、集まった意見を報告書にフィードバックすることを、最初から考えていなかったとしか思えない。

報告書をまとめるのは日本芸術文化振興会なので、最終的に意見が反映されなくても、それは仕方がない。だが、意見募集したのなら、少なくともその吟味にそれなりの時間を割くのが募集する側の倫理だと思うが、いかがだろうか。主な意見を配布した第9回研究会と同じ6月10日付で報告書を公表すること自体が、意見募集に応じた人を無視することにならないだろうか。今回のような専門的な内容に対しては、文化行政に関心が高い人ほど熱心に意見を提出したはずだ。それを形式的に済ませては、そうした人に文化行政への不信感を招きかねない。

この日本版アーツカウンシル案の基になった、文化審議会文化政策部会の「審議経過報告」のパブリックコメント募集では、募集締切後1か月半をかけて意見をまとめ、そこから4か月以上かけてヒアリングや審議を重ね、答申に持っていっている(「審議経過」参照)。いくら時間がないとはいえ、今回の進め方はプロセスを欠いているのではないか。

今回のプロセスの是非について、文部科学省や文化庁に意見を送ることを提案する。メールの方法は、「文化庁の施策などに関する御意見・お問い合わせ」で紹介している。