この記事は2011年6月に掲載されたものです。
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どうしてコンテンポラリーダンスからは声が出ないの?

カテゴリー: フリンジのリフジン | 投稿日: | 投稿者:

●「fringe blog」は複数の筆者による執筆です。本記事の筆者は 荻野達也 です。

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日本版アーツカウンシル案(日本芸術文化振興会「文化芸術活動への助成に係る新たな審査・評価等の仕組みの在り方について(報告書案)」)へのパブリックコメントは、かなり反響があったようだ。募集期間が短期間であったことから、日本芸術文化振興会が本気で意見を集めようとしていたのか、姿勢そのものが問われるところだが、それに対してそれなりの意思表明が出来たのではないだろうか。

ただし、ネット上を見る限り、意見を提出していたのは演劇分野が多く、今年度試行される音楽分野・舞踊分野からの声が少なかったと思う。当事者なのになぜ、という思いでいっぱいである。この件については、大澤寅雄氏(ニッセイ基礎研究所芸術文化プロジェクト室、NPO法人アートNPOリンク)が個人ブログで、「どうして音楽、舞踊分野からは声が出ないの?」と書いた。

これに反応した渡辺和氏(音楽ジャーナリスト)によると、「(音楽業界には)議論に乗ることそのものを拒絶する空気すらあるみたい」とのことだが、大澤氏によるとコンテンポラリーダンスは現代演劇と同じ環境にあるわけで、少なくともコンテンポラリーダンス関係者からは、もっと意見があっていいのではないだろうか。JCDNもなんの呼び掛けもしていない。コンテンポラリーダンスは、演劇に比べて公演やアウトリーチ活動で格段の行動力があるが、こうした文化政策に関する議論では、いつも演劇関係者が中心になっている印象がある。

確かに演劇人は議論好きで、まとまるものもまとまらない悪しき傾向があるかも知れないが、アーツカウンシル案や劇場法(仮称)は日本の文化政策の転機となる重大事である。いま意見しないで、いつ意見するのか。パブリックコメントは締め切られたが、今後も継続的に動向を注視し、演劇以外の分野からもきちんと意思表明されることを望む。もちろん、演劇人も門行人氏(舞踊批評)が書かれているように、一時のお祭りにならないよう気を引き締めて。