これは快挙と言っていいでしょう。
愛知県文化振興事業団が公募していたAAF戯曲賞ドラマリーディング、4作品とも東京のアーティスティック系カンパニーが独占しました(Ort-d.dは宮崎と東京の2拠点制)。東京勢の応募の噂を耳にし、彼らの実力なら2作品は取れるだろうと確信していましたが、まさか全部取ってしまうとは思いませんでした。主催者が地域感情を抜きにして、実力本位で選考した結果だと思います。敬意を表したいと思います。
たぶん、4カンパニーともfringeを見て応募してくれたのではないかと思います。私はいろいろな場を通じて、東京のアーティスティック系カンパニーがもっと旅公演に出るよう鼓舞してきたつもりですので、この結果は非常にうれしく感じています。僭越ですが、fringeが少しは小劇場界に結果を出すことが出来たかなと考えています。
関西からの応募が1件しかなかったのは残念ですが、この背景にはリーディング公演への偏見があるのかも知れません。オリジナルの新作を発表し続けるカンパニーにとって、既製戯曲のリーディングというのは、とても地味に映るのではないかと思います。しかし、そういう制約があるからこそ、逆に演出家の手腕が試されるわけで、役者の実力アップや演出技法の開拓が図れる場として、これを利用しない手はないと思います。私もずっと関西にいたら、「なんだ、リーディングか」と思ったかも知れません。違うのです。リーディングとは、制約の中で闘う激しいバトルなのです。
この4カンパニーなら、想像を超えた演出を見せてくれるものと思います。そういうことが出来る4カンパニーが選ばれたと思います。Ort-d.d+こふく劇場の上演が高い評価を得た『so bad year』に挑むreset-Nは見ものですし、Ort-d.dが『water witch』を選んだのも興味深いです。風琴工房は手の内を知り尽くした小里清作品だけに、より大胆な演出を期待しています。最若手・shelfの矢野靖人氏は名古屋出身。北大→青年団演出部という経歴の持ち主で、凱旋公演になるといいですね。
リーディング公演でここまで出来るということを、ぜひ見せつけてください。
敢えて話題にしませんでしたが、公募期間中、4作品はPDFで全文ダウンロード可能でした。かながわ戯曲賞でも許諾が取れた作品は公開していましたが、著作権の問題があるので、とてもめずらしいことです(『アナトミア』は「READ ON」で販売しているのに!)。ちゃんと気づいてダウンロードした方は賢いです。