この記事は2009年3月に掲載されたものです。
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京都市青少年活動センターの上げ幅に驚く

カテゴリー: fringeのトピック以前 | 投稿日: | 投稿者:

●「fringe blog」は複数の筆者による執筆です。本記事の筆者は 荻野達也 です。

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京都市青少年活動センターがこれまで無料だった23歳~30歳を有料化する条例改正案ですが、この問題を考えるとき必要な視点は「京都市のポリシー変更」「金額の妥当性」の2点ではないかと思います。

京都橘大学の小暮宣雄教授に引用していただいたとおり、私は行政が取り組むべきは劇場より稽古場施設だと考えています。しかしながら、全国的に見ると公共稽古場施設でも有料が一般的で、京都市が無料というのはとても恵まれていると思います。また、無料制度が必ずしも優れているわけではなく、有料にしたほうが遅刻が減って引き締まった稽古が出来るでしょうし、チケットをもっと売ろうというモチベーションの向上につながるでしょう。ワークショップでも無料にするとレベルの低い人材が集まる傾向があり、意図的に有料にして本人の意欲を問うことがあります。

その一方で、京都市がこれまで30歳以下を無料にしてきた現実があり、これを変更することは大きなポリシー変更になります。京都市が若手を育てるため、意図的に30歳以下を無料にしてきたのなら、これは京都独自の文化政策と言えるでしょうから、財政難を理由に簡単に変えていいものなのかどうかを、京都市民自身が考えるべきではないかと思います。学生の街である京都には独特のモラトリアムがあり、その環境が育んだ表現も確かにあります。無料稽古場がそのインフラになっているのだとしたら、長期的な影響も踏まえて真剣に議論すべきことでしょう。

有料化の金額については、京都新聞の記事に「中会議室600円」とあります。京都市青少年活動センターの料金体系は現在2時間単位ですので、私はてっきり2時間600円だと思っていたのですが、京都市会サイトで議案を見てみると、なんと1時間あたりの料金でした。例えば中京青少年活動センター中会議室の場合、下記のようになります。

(現在)
青少年等……無料
それ以外……2時間2,100円(1時間1,050円)

(改正案)
23歳未満……無料
青少年等(23歳~30歳)……1時間600円
それ以外……1時間1,200円

カンパニーに人気の東山青少年活動センター創造活動室はもっとすごいです。

(現在)
青少年等……無料
それ以外……2時間5,200円(1時間2,600円)

(改正案)
23歳未満……無料
青少年等(23歳~30歳)……1時間1,500円
それ以外……1時間3,100円

1回3時間(18時~21時)使用すると、中会議室なら1,800円、創造活動室なら4,500円必要になり、1公演の稽古時間を約200時間とすると、中会議室だけでも約12万円の稽古場代が新たに必要になります(稽古後半は舞台サイズに合わせた稽古が必要ですので、実際はもっとかかるでしょう)。

中京青少年活動センター中会議室は定員27名ですが、東京の世田谷区立区民センターだと定員25~30名の会議室が4時間240~800円なので、1時間60円~200円になります。京都はこの3~10倍で、冷暖房が不可欠な気候を考慮しても、上げ幅として高額すぎるのではないかと感じます。一般利用の半額を設定しているようですが、上げ幅という観点で考えると、23歳~30歳については検討の余地があると思います。

私自身は必要最低限の有料化が悪いとは思いませんが、今回の改正案についてはまず上げ幅が乱暴に感じます。そして京都市の文化政策を考えたとき、せっかく築いてきた街の個性を失う危険性があるだけに、「京都として若手アーティストとどう向き合っていくか」という視点から是非を問い、住民税を支払っている京都市民自身がジャッジを下すべき問題だと思います。

京都舞台芸術協会の主張を読むと、無料にこだわっている部分が大きいようですが、今回は上げ幅自体がとても大きいので、具体的な改正案を引きながら、金額の妥当性についても検証することが重要ではないかと思います。


京都市青少年活動センターの上げ幅に驚く」への1件のフィードバック

  1. 高崎大志

    今のご時世に舞台芸術だけを聖域化した話は難しく、他の福祉や少子化や医療の問題も念頭においた上で、舞台芸術への公的支援を論ずるべきだろうと考えています。
    なのですが、今回の「ちょっと上げすぎでは?」という趣旨には、疑問無く賛同するものです。

    さらに「青少年活動センター」施設利用有料化に反対する請願を読んだ所、考えを変えました。これは説得力のある文章になっていると思います。私は有料化反対になりました。

    議長へ文書を出すのに加えて、京都の演劇人が集まりツテをたぐり党派を超えて全ての市議会議員と面会し、この請願の説明をするのがよいかもしれません。

    さらに、請願に加えるとすれば、この有料化で利用率がどれくらい落ちると市当局が推測しているのを尋ねることと、京都のカンパニーへの独自調査を行い「この有料化の結果、施設を利用するかどうか」の独自調査の集計を議員にも手渡すくらいのことはやってみてもいいかもしれません。

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