演劇公演でポスト・パフォーマンス・トーク(アフタートーク、シアタートーク、ポストトーク等とも言われます。以下、トークとします。)が開かれることが盛んになっています。作品創作の裏話が聞けたり、作家・俳優の素顔を覗ける機会として観客に人気があり、主催者側としては動員増を見込めるイベントです。
しかしながら、トークに参加した観客がいつも満足して帰れるわけではありません。トークの質によっては、かえって印象を悪くするリスクもあるのです。
シャウビューネ劇場『ノラ』は原作を大幅に変える脚色をしており、衝撃のラストシーンが用意されていました。演出家のトーマス・オスターマイアーさんが出演するトークには大勢の観客が残っており、観客の頭の中に残された大きな「なぜ?」に対して、オスターマイアーさんは真摯に、丁寧に応えてくださいました。
司会の松井憲太郎さん(世田谷パブリックシアターのプログラム・ディレクター)の的確な進行もトークの成功の大きな要因だったと思います。白熱しがちな観客の質問を松井さんがうまくまとめてくださって、終わり方もスマート。大人がしっかり満足できるトークでした。オスターマイアーさんと松井さんが親しそうにお話されていたのも心地よかったです。出演者と司会者の意思疎通がスムーズであることはトークの重要なポイントですね。
MIKUNI YANAIHARA Project Part 1『3年2組』のトークは作・演出の矢内原美邦さんに加え、ゲストにチェルフィッチュの岡田利規さん、司会に演劇ライターの徳永京子さんという豪華キャストでした。つっこんだ話がたくさん出て刺激的な内容になったのは、演劇・ダンスに造詣の深い司会者が中立の立場として存在していたからだと思います。主催者側もゲストも気兼ねなく自分の意見が言えるんですよね。観客は安心して聞いていられるし、質問もしやすいです
きらり☆ふじみでつくる芝居『Pictures』のトークには作・演出の明神慈さん(ポかリン記憶舎)、美術の杉山至さん、そして演劇・舞踊ジャーナリストの堤広志さんが出演されていました。堤さんはポかリン記憶舎を初期の公演からご存知で『Pictures』初演もご覧になっており、作品はもちろんのこと、劇団や作者のこれまでの変遷について詳しく教えてくださいました。劇団の歴史を知っている見巧者を持つことは、劇団の財産になります。
グリング『カリフォルニア』ではトークの司会としてなすびさん が登場し、不器用な(?)作家・キャスト陣にまんべんなくお話を振りながら、観客もリラックスできるような楽しいトーク空間を作られていました。多才なゲストに司会をしてもらった賢い例ではないでしょうか。
小劇場では作・演出家が司会を兼ねることもよく見られます。五反田団の前田司郎さんは驚くほど機転が利く方で、話が面白いのはもちろん観客へのサービス精神も旺盛です。作品の内容がすごく暗くても(笑)、五反田団というと私にとっては明るくて社交的なイメージがあります。
最近すっごく楽しかったのは寿団『おとこたちのそこそこのこととここのこと』の、鈴江俊郎さん(劇団八時半)と土田英生さん(MONO)のトークショーです。赤裸々な暴露話がいっぱいで、ほとんど漫才状態(笑)。司会不在とはいえ、二人ともが作品についての率直な意見、感想を話してくださったので大満足でした。質疑応答はありませんでしたが“トークショー”なので納得です。
楽しかった、良かったトークの例をいくつか挙げましたが、少し残念だった例も挙げてみます。
ギンギラ太陽’sの初東京進出公演でのトークイベントは、主宰の大塚ムネトさんが司会をつとめていらっしゃいました。特に進行のルールはなく、内容は観客からの質疑応答(というか世間話?)に終始しました。一般の観客からの質問をアトランダムに受けるので、そのクオリティ・コントロールはほぼ不可能です。質問タイムはリスクが高いのであまり長時間にしない方が良いと思います(質問タイムが全くないのは寂しいですが)。
王子小劇場が企画したリーディング公演では、王子小劇場に関係の深い作・演出家がトークのゲストとして登場しました。なぜか「観客も既に知っているだろう」という前提の会話が多かったのが気になりました。初日で、いつもより関係者が多い客席だったせいかもしれませんね。どんな企画であろうとチケットを一般発売している時点で内輪のイベントではありません。たった一人の観客にも疎外感を感じさせないよう、司会者も出演者も気を配る必要があります。
こちらの公演では大物ゲストを呼んでしまったためか、司会者が作品には直接関係のない、ゲストの話題(宣伝)ばかりを続けてしまい、途中退出する観客が大勢いました。
魅力的なゲストを呼ぶことは集客のポイントですが、トークで一番大切なのは、観客が観たばかりの作品にプラス・アルファできる情報を得られることだと思います。作品の意味の補完、創作裏話、作家・出演者の素顔披露など、観客が知りたいであろう基本的なことをまず押さえるべきでしょう。それをスムーズに実現するには、客観的な視点を持った司会者を立てることが最も無難な策だと思います。小劇場では作・演出家とその友人や関係者が登場して、なんとなくおしゃべりをする・・・というタイプのトークが多いですが、できれば制作さんが司会になるなど、進行を担当する中立の立場の人間を出演させる(トーク出演者を一人増やす)ことを考えてみてはいかがでしょうか。
センス・なし
Plan Bウェブサイトの背景を散々いじっておりますが、如何せん美術センスがないなぁとつくづく思います。
数学は得意なんですけどね……って、少し前にもこんなこと言ったような……
■ 北とぴあ演劇祭2006 舞台照明講座 ―――――
おかげさまで良い評価をいた…