この記事は2004年6月に掲載されたものです。
状況が変わったり、リンク先が変わっている可能性があります。



外来語バンザイ

カテゴリー: fringeのトピック以前 | 投稿日: | 投稿者:

●「fringe blog」は複数の筆者による執筆です。本記事の筆者は 荻野達也 です。

Pocket

国立国語研究所外来語の言い換え提案に積極的ですが、カタカナのおかげで印象が明るくなったり、違った価値観を抱くようになった言葉も多いと思います。

例えば、演劇界でもよく使う「ワークショップ」は、これ以外の言い方はもう考えられません。でも、国語研究所の言い換え提案では「創作集会」。それはないだろうと思います。「集会」を使うと暗くなるのがわからないんですかね。委員には演劇評論家の松岡和子氏も入っているので、これには断固反対していただきたかったです。

「アウトリーチ」も、初めて聞いたときは誰が使うのかと思いましたが、新しい概念を表現する言葉として、すっかり定着してしまいました。無理やり言い換えると「普及活動」になると思いますが、それではこの言葉が持つニュアンスが伝わらない気がします。

演劇のイメージを払拭し、これまで劇場に足を運んだことのない人々を取り込むために、意図的に新しい外来語を使うのも一計ではないかと、私は以前から考えています。

外来語が新しいイメージを与えた実例は、私たちの生活にもあふれています。例えば「ガーデニング」。この言葉が一般的になったのは90年代半ばになってからで、それ以前は「園芸」でした。いまでは環境志向で土をいじること自体が素敵なことに思えますが、私の中学時代は「園芸」のイメージは相当違っていました。必ず入らなければならない全校クラブ活動という時間があったのですが、園芸クラブは希望者が皆無で、希望クラブの抽選にはずれた者が最後に回ってくるところでした。

農学部が「バイオテクノロジー」で脚光を浴び、自然回帰がブームになり、「園芸」が「ガーデニング」で新しい価値観を持ち、いまでは「園芸」という言葉も輝いて見えます。既成概念のある日本語だけでは、その言葉の向こうに広がる世界を伝えるのは、難しかったのではないかと思います。

演劇でも同じ作戦は取れないでしょうか。「観劇」を全く新しい外来語で表わせないでしょうか。「観劇」と言うと、商業演劇で弁当を食べる団体客をイメージする人は、まだまだ多いと思います。都市生活者が仕事帰りに楽しむ演劇をイメージし、劇場に行くことをカタカナで言えないかと思います。

「小劇場演劇」自体は、もちろん「フリンジ」でしょう。普通の人々が「今日はフリンジを観ていくよ」と言える世の中になれば、演劇の地位は確実に変わると思います。


外来語バンザイ」への3件のフィードバック

コメントは停止中です。