この記事は2008年7月に掲載されたものです。
状況が変わったり、リンク先が変わっている可能性があります。



反・貧困キャラバン

カテゴリー: 紫川子連れ狼 | 投稿日: | 投稿者:

●「fringe blog」は複数の筆者による執筆です。本記事の筆者は たにせみき です。

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「反・貧困キャラバン2008」の西日本ルート出発式が明日に迫りました。
西日本の基点は「北九州」です。もちろん昨年の餓死事件を受けてのこと。
記念講演はNNN「ネットカフェ難民」ディレクターの水島宏明氏。

「式」までの全行程の中に、演劇的手法を取り入れたシーンが2つあります。

ひとつは「ダンボールハウス体験」。
まだまだ「野宿なんて好きでやってる」「気ままで楽しそうなダンボール生活」と、本気で思っている方がおられる日本。
ではその「楽しそうな」ダンボールハウスに入って、突然蹴られたり、行き場がないのに「出て行って下さい」と言われたりする「体験」をしてもらおうというもの。
(「出て行って下さい」の呼びかけには、何度言われても「行くところが無いのです」と答え続ける、というルールがあります。)

もうひとつは地元のホームレス支援機構が提出した資料による「野宿実態」に関する寸劇。
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/fukuoka/news/20080707-OYT8T00862.htm

私はこの台本の執筆と「ダンボールハウス体験」のアドバイスを担当しました。
依頼された時、演劇が持っている作用的な力を、演劇畑じゃ無い人達が「知っている」ということに新鮮な驚きを持ちました。(もちろん「プロパガンダ演劇」というのは太古の昔からあったわけなのですが。)

状況から「ひとり芝居」形式で書きましたが、「こうすべきだ!」と訴えるわけではなく、野宿経験のある方の実情をトレースし、そこで何が彼を変えたか、について切り取ってみました。
ほんの10分で共感を得るのは難しいかもしれませんが(出演も俳優ではありません)、アート(表現)は、世界(社会)の中で「そこにあるのに見えないものを見えるようにする《窓》(門・穴)である」と思って活動を続けてきた私には、かいのある現場です。

惜しむらくは、地元でこういう場合の「執筆適任者」が思い浮かばなかったこと。
僭越ながら、久しぶりに台本を書かせて頂きましたが、過去のどんなイベント台本よりも、遥かに戯曲として深いものになったと自負しており、機会を与えられたことに感謝の気持ちです。