(2008年04月29日の続きです。)
税金の考え方の一つに、地方交付税不交付団体というものがあります。これは、一定の基準を満たした財政的に豊かな地方自治体には、地方交付税は交付されない。というもので、東京都や愛知県がこれにあたります。
この考えからいうと、国から団体に交付される芸術文化振興基金の助成は、これらの地域に交付しなくて良い。という考え方もあるだろうと思います。
そういう視点から見れば5倍の差を許容することもおかしいとなるでしょう。しかし、それも極端だと思いますし、特に首都圏の芸術団体は、世界と渡り合えるような先進性がある高水準の作品を創らねばならないという役割があるのではないかと考えています。
そういった作品は、多様な方向性の作品が重層的に成立しうる環境、つまりこれまでの先人の成果を目の当たりにできる環境から生まれてきやすいものだろうと思います。
この環境が成立しているところはおそらく首都圏にしか無く、他の地域にない役割を背負っている分は考慮していいのではないかと思います。
ここから他の地域の15倍の格差はあってもよいという考え方もあるかも知れません。
しかしそれでも感覚的に15倍の格差はどうにもおかしいだろうと思います。国政選挙の一票の格差というところを準用したいと思うのですが、やはり5倍の格差が合理的なラインだろうと思います。
この項では、地域間格差が許容できる範囲の例として「地域文化施設公演・展示活動:文化会館公演活動」をあげ、許容できない範囲の例として、「現代舞台芸術創造普及活動(演劇)」をあげました。
この両者の予算を比較してみると
「地域文化施設公演・展示活動:文化会館公演活動」約1.4億
「現代舞台芸術創造普及活動(演劇)」約4.3億
と約3倍の差があります。
これは、演劇部門の芸術文化振興基金全体としてみても、許容できない格差のあるほうに3倍の重点がおかれているということです。
地域間格差がないの前者と、首都圏に偏重する後者の予算配分が逆だろうと思います。
この問題について意思決定する立場にある人には、ぜひこの問題を直視してもらいたい。そして、そういった人に近いところにいる方は、なにかの機会にこのことを遠回しでも控えめでもいいので言って欲しい。
この芸術文化振興基金、意思決定する人も、その人に大小の影響を発揮できる人も大半は首都圏に在住している方なんですよね・・・
そういった方が首都圏のメリットを超えて、国内全般の文化芸術のメリットを考えてくれるようただただ祈るばかりです。
首都圏のカンパニー数がそれだけ多いというのも事実です。他地域の15倍はあるでしょう。現代舞台芸術創造普及活動は育成のためではなく、一定の成果を出しているところへの助成だと思いますので、カンパニー数に比例するのは当然ではないでしょうか。
もちろん、いくらなんでももう少し増えてもいいだろうと思う地域もあります。それは選考委員が首都圏中心だったり、申請そのものに消極的という事情が影響しているのだろうと思います。そうした点を少しずつ改善していくことが重要ではないでしょうか。
高崎さんの地域格差に関する一連の主張は、気持ちとしてはわかります。創造環境の整備は、少なくとも同じスタートラインに立たせたいということだと思いますが、地域の方が思うほど首都圏が恵まれているとは思わないし(カンパニーが15倍あるということは、劇場も15倍あって地域と同じことになります)、「芝居をつくる」という一点に限ると、地域のほうが恵まれている面もあるのではないかと思います。
「観客に見せる」「演劇を仕事につなげる」ということになってくると、自助努力だけではどうにもならない面があると思いますが、少なくとも「芝居をつくる」ことは、そんなに差がないんじゃないかと思います。では、なにが見えない創造環境の格差をもたらしているか。それは演劇以外も含めた人の集積による本気度だろうと思います。
下記の斎藤努さんのブログを見てもそう思います。
http://154.seesaa.net/article/103260301.html
http://154.seesaa.net/article/103339967.html
本気度、という点で、荻野さんの意見に賛成です。
平均的な関係者の気合いの入り具合
http://fringe.jp/blog/archives/2007/12/31132337.html
で、書いたとおりです。
個々の努力と環境の問題は、どちらか一つだけに100%の原因があるということは難しいだろうと思っています。たいていの場合両方に原因があると思います。
役者や関係者に覚悟が足りないと説く方は比較的多いので、私は環境のことを論じたいなぁと。どうにも少なそうなので。
>地域のほうが恵まれている面もあるのではないかと思います。
「面もある」という表現においては、まったく賛成です。
総合的にどうかというと、彼我の差は甚だしいというのが実情かなぁと考えています。
>カンパニー数に比例するのは当然ではないでしょうか。
カンパニー数に比例していると格差がさらに開くというのも事実なので、「国」(及びその外郭)の政策としては不適切だと思います。「国」の文化政策が、芸術文化環境の地域間格差を助長してどうするんだ。と思います。
例えば、首都圏の人口3000万人だとして国会議員の約1/4が首都圏選出になるとこれはやはりまずいかなぁと思います。なので、許容出来る範囲の一票の格差があり、国全体の均衡を保っているということなんだろうと思います。
助成金については、団体数割だけではなく地域割という考え方を導入してもらいたいです。
芸術の成果に対する助成を、予め地域割するのはおかしいと思います。
それだと奨学金になってしまいませんか。
高崎さんの論旨で私が同意出来ないのは、環境のせいにする部分が多すぎることです。
環境の地域格差を是正することは大切ですが、環境の範囲を広く取りすぎていると思います。
この件については、別アーティクルで書かせていただきます。
全面的に奨学金になるのは、私もどうかと思います。
多少の奨学金性がまじるのは、それが地域間格差の緩和に資するところがあり、現在の「国」の制度として、手当が不十分なところなので、いいことだと考えています。
なので、ここはバランスだろうと思います。
全体予算の8割を地域割り配分するのは、私もどうかと思います。かといって全体予算の2割では少ない。
全体予算の4割位を地域割り配分とするのが適正だろうと考えています。