Twitter上で1月22日~23日にかけ、新宿シアター・ミラクル支配人の星英一氏と、観客のK_OSANAI氏のあいだで、たいへん興味深い意見交換があった。私の書いた「いまの東京の小劇場界を盛り上がっていると感じている人は、大きな勘違いをしていると思う」にも通じるところが多いと感じるので、Togetterでまとめさせていただいた。
原点回帰
fringeは、2011年2月22日に開設10周年を迎える。
この10年間、小劇場演劇に対する創造環境整備は格段に進んだと思う。各地の劇場やサービスオーガニゼーションにより、研修・上演・交流の企画が大幅に増え、助成制度や稽古場施設も年ごとに充実してきた。カンパニー自身の意識も高まり、地域から全国へ目を向け、新たな観客を求めて積極的な旅公演を行なうようになった。こうした動きに、fringeもオンライン/オフラインの双方で貢献出来たと考えている。
その一方で10年前、いや20年前からほとんど進化していないことがある。それは首都圏以外の公演日数の短さだ。京阪神を含む地域の劇場では、未だ週末のみの公演が圧倒的で、これが観劇人口を始めとした演劇マーケットを改善出来ない要因となっている。週末だけの公演が〈負のスパイラル〉を生み出しているのだ。それ以前に、演劇というライブの表現に携わる者として、短い公演しか出来ないことを悔しがらねばならないだろう。
私が選ぶベストワン2010
多忙で2年見送っていた日本劇団協議会機関誌『join』71号特集「私が選ぶベストワン2010」に参加させていただいた。3月31日発行予定。
当然ながら、私が知り得る限られた範囲からの選択である。全国には、まだまだ素晴らしい作品が埋もれているかも知れない。
マームとジプシー『ハロースクール、バイバイ』は、記憶という行為そのものを舞台化した前例のない演出手法だ
終演後、いま観たばかりの作品を戯曲で確認したいと思うことが、私の場合は3年に一度くらいある。手元に残しておきたい珠玉の台詞、どうやって稽古したのかわからない絶妙な演出に出会ったときなど、その場で戯曲を確かめたくなる。フェスティバル/トーキョー10(F/T10)公募プログラムで11月24日に拝見したマームとジプシー『ハロースクール、バイバイ』は、まさにそんな作品だった(残念ながら物販はなかった)。
舞台は海が近い「かもめ中学校女子バレーボール部」。これまでの作品が14歳を描いていたように、ここでも14歳の中学2年生たちが描かれる。試合時間に見立てた90分の上演中に、転校生を中心とした部員たちの身近なエピソードや練習風景が、短いシーンのカットバックで綴られる。実際のバレーボールは使用せず、演技だけの「エアーバレーボール」で表現した。
新進芸術家育成事業に期待したい
次代の文化を創造する新進芸術家育成事業の公募情報が公開されました。
赤字補填の制約から脱却し、応募できる事業の幅が広がったことは高く評価されるべきだと思います。
募集期間が短くなっていますが、制度改善に伴う今年度に限定されたものとして受け止め、全体としてはこの改正を評価したいと思います。期間が短いことはなにより事業担当者に忸怩たる思いがあるはずです。
とはいえ公開された企画提案要領に、やや違和感を感じる部分があります。
それは(1)趣旨に記載された
「本事業は、新進芸術家等が基礎や技術を磨いていくために必要な舞台などの実践の機会や、広
い視野、広い見聞、広い分野に関する知識を身につける場を提供するとともにその基盤整備を図
り、次代を担い、世界に通用する創造性豊かな新進芸術家の育成等に資するものです。」
のうちの下線部分です。
岸田戯曲賞最終候補作品発表の越年
例年12月下旬の岸田國士戯曲賞最終候補作品発表が、今回は越年となった。「候補作が上演台本中心となったいま、白水社は岸田戯曲賞の推薦・選考時期をずらすべきではないか」という声が届いたのだとしたら、うれしい。
『ドラマトゥルク 舞台芸術を進化/深化させる者』
慶応義塾大学准教授でドラマトゥルクの平田栄一朗氏が、11月25日に『ドラマトゥルク 舞台芸術を進化/深化させる者』(三元社)を上梓した。長島確氏にドラマトゥルクと名乗ることを勧めた、あの平田氏である。
ドイツ演劇研究を専門とする平田氏が、長期取材を踏まえてドイツ演劇界におけるドラマトゥルクの全体像をまとめたもので、こうした体系的な書は日本初ではないかと思われる。制作分野と密接な関わりのあるドラマトゥルク(ドラマターグ)への知見を得るため、制作者もぜひ目を通しておきたい。
地域演劇の活性化のために必要な
自戒を込めて書きますが、地域演劇の活性化の事業を行っている担当者には、地域の状況を深く洞察し、課題を解決する事業提案と、その事業を適切に執行する能力を持つことが欠かせません。
そのために、担当者には相当の努力・勉強が必要だと思います。他都市の事例についても情報収集し、相対化してその地域の状況を理解することが必要です。
地域の劇団などを実際に活動を行っている人々に広く意見を聞くことも有効でしょう。
このなかでかならずしも、その地域全体のプラスと、個別の劇団のプラスを分けて考えられない人もいるかも知れません。それらの意見を取捨選択する必要もあります。
私は必ずしも、ニーズ調査やヒアリング、アンケート等の手法が必須だとは思いません。直接の目的は各地域の状況に合わせた適切な事業を行うということで、これができているならば、それらの手法はなくても良いかも知れません。
現在、大都市で活躍している表現者やアートマネージャーが地域で活躍する時代が来るとするならば、大都市で培ったネットワークを活用するだけで終わるのではなく、その地域の演劇シーンが真に必要としていることへの分析を絶えず続けて欲しいと思います。
『「マエストロ、それは、ムリですよ…」~飯森範親と山形交響楽団の挑戦~』
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この本は売れているので、ご存知の方も多いだろう。社団法人日本オーケストラ連盟正会員の中で、本拠地の人口が最も少ない山形交響楽団(山響)の音楽監督、飯森範親氏の改革を描いたものだ。飯森氏は映画『おくりびと』出演や『のだめカンタービレ』指揮演技指導でも知られている。
音楽家と言えば、演劇人以上にアーティスト志向が強いイメージがあるが、飯森氏は「音楽家は、サービス業です」と公言し、「だって、どんなに完璧な演奏をしたって、ホールにお客さまがいなかったら意味ないでしょう?」と語る。こうしたポリシーを掲げる指揮者はほとんどいないようだ。そうした思いから生まれる付帯イベント、アウトリーチの数々は、もちろんそのまま演劇にも応用出来るだろう。
劇場法(仮称)を「公共ホール救済法」にしないためには、稽古場施設と民間劇場も対象にすべきである
劇場法(仮称)の議論について、前提条件の部分でなにか引っ掛かるものがあった。それを言語化すべく、「劇場法(仮称)が総論賛成各論反対になる理由――推進派はここをもっと説明すべき」を書いて以降、ずっと考え続けてきた。言葉が悪いが、やはり現在の議論では民間劇場はないがしろにされてしまうとの思いがあり、公共にしか出来ないことはなにかを突き詰めて考える作業をした。その答えがこの文章である。

