この記事は2012年2月に掲載されたものです。
状況が変わったり、リンク先が変わっている可能性があります。



大阪の文化政策への一意見

カテゴリー: とある制作の観測的ブログ | 投稿日: | 投稿者:

●「fringe blog」は複数の筆者による執筆です。本記事の筆者は 間屋口克 です。

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前回のように、月末ギリギリになる前に書くつもりが…むしろ日付が変わってしまいました!!
一月遅れですが、あけましておめでとうございます。大阪の間屋口です。

途中まで書きかけていたんですが、あ、これも書きたい! これも触れなきゃ!とか思っているうちに月末になりました。

さて、言い訳はこれぐらいにして、2012年は大阪は激動と転換の年になりそうです。

大阪で、その大きな流れにの中心にあるのは、やはり橋下新市長と維新の会です。
大阪市は非常にざっくりと言ってしまいますと、職員によるボトムアップ型の組織であったらしいですが、強力なリーダーシップを市長と議会が協力して取る体制が生まれたためにトップダウン型の組織に移行しようとしています。
これが、文化・芸術の分野でもいろんな影響を与えてきているように思います。

その代表的な例は、前回書きました、精華小学校跡地の活用方法の見直しであったり、そして、12/24に報道されていた「橋下市長がアーツカウンシル設置を指示」というものでした。

http://www.asahi.com/kansai/entertainment/news/OSK201112240053.html

これを受けて、年明け早々の1/9にシンポジウム『大阪の転機に、アーツカウンシルを』が「大阪でアーツカウンシルをつくる会」の主催で開かれました。

「アーツカウンシル」は「劇場法」の議論とあわせて、近年大きな関心を集めておりますが、「大阪でアーツカウンシルをつくる会」は、2007年に発足しています。行政主体で実施を見据えてというよりは、民間の中の研究会のような形で発足しているようです。
残念ながら、私の不勉強で、勤めていた精華小劇場の近くのremoやcocoroom、應典院でイベントが行われていたのですが、足を運ぶ機会がなかった

ため、立ち上げの経緯などはよく分かりません。

しかし、下記の素晴らしいレポートを読むことで、当時の活動を知ることができます。

http://dl.dropbox.com/u/29179291/2008osakacreport.pdf

この時期に活動が開始された理由を推測しますと、2007年に前回の大阪市長選がありました。サイト(http://osakaac.exblog.jp/)を見ていましても、2008年ごろから一時活動を中断しておりますので、市長選に向けた政策提言などを一つのきっかけにしておられたのかなと思います。
特にこの頃は、指定管理者制度の導入、フェスティバルゲートや精華小学校の売却、近代美術館の建設などを巡って、大阪の文化・芸術分野に関して多くの争点があり、また2001年に大阪市が策定した「芸術文化アクションプラン」からの揺り戻しのような時期でもありましたので、市長や行政の担当者の交替に影響されにくい、アーツカウンシルのような組織の必要性を多くの人が感じていたのではないでしょうか。

さて、前置きが長くなりましたが、当日の模様は、下記のtogetterや、当日の配布資料をお読みいただければよくわかるかと思います。

2012/01/09 大阪でアーツカウンシルをつくる会 シンポジウム「大阪の転機に、アーツカウンシルを」
http://togetter.com/li/239126

当日配布資料
http://osakaac.exblog.jp/17198196/

個人的には、2時間で9人の方が話されるということで、ちょっと盛り込みすぎな印象が事前にはありましたが、流石に話しなれている方々で、吉本さんのアーツカウンシルの概要に始まり、各分野の方の現状認識まで、幅広くポイントを押さえて現在の状態を理解できました。
「議論の場ではない」と仰っていたように、ここで何か主張や意見が出されたわけではありませんが、現在の状況や「大阪にアーツカウンシルができること」について多くの人が興味を持って考え始めるいいきっかけであったと思います。
また、特定のいくつか分野での話にならずに、広い分野で考えていこうとする主催者の意図が多様な方のお話に表れていたように思います。

もっと早くこの報告をしたかったんですが、ちょっと忙しさにかまけておりまして…。

さて、この話から3週間ほどたった現在では、府市統合本部で会議がどんどん進んでおります。

http://www.city.osaka.lg.jp/seisakukikakushitsu/page/0000151065.html

特に演劇関係者にとって重要なのは、1月25日の「大阪のグランドデザインについて」「都市魅力創造について」でしょうか。
今年は予算を年度内に成立させずに、7月ごろまで後ろ倒しをすると言われていましたが、その際に影響のある文化関係の事業一覧が上がっています。

http://www.city.osaka.lg.jp/seisakukikakushitsu/cmsfiles/contents/0000151/151065/3shiryo221.pdf

昨年、大阪中の話題となったナレッジ・キャピタルとナレッジ・シアターはどうしたんだろうと探すと、堺屋特別顧問の意見に「世界的名物になるように改善する(ビル全体に付加価値がつくように「儲かるアイデア」が必要である)」という提案がありました。

http://www.city.osaka.lg.jp/seisakukikakushitsu/cmsfiles/contents/0000151/151065/3sakaiyakomonshiryo.pdf

この内容に対して、演劇人としては反発する気持ちはあります。
ただ、この「10大名物創り」のアイデアの内容自体には(まだ発案段階ということもあるでしょうが)ちょっと首をひねるものも多いですが、個人的には「分散総花的になっている」「国際的全国的知名度や競争力がない」「経済性が軽視されて、自律的拡大力を持たない」という骨子にはおおむね賛成です。

今後の文化政策に対して、バランス感覚は必要ですが、このような面が重視されていくべきだとは思います。
その中で、ナレッジ・キャピタルが本当に国際的競争力を持てるかという観点であれば、この提案には賛成です。
きちんと論議して国際競争力を持つ施設にするのに、必要であればさらに予算を追加するなどして欲しいと思います。

かなり長くなったのですが、最後にもう一つ!

この継続事業の中に、大阪市舞台芸術活動振興事業助成金がありませんでした。
この助成金は、大阪市内での公演に対して、5~20万円程度の助成金が出るもので、民間劇場中心の大阪での助成の在り方として、長らく親しまれてき

ました。また、年2回公募があったりと、長期的な計画を立てにくい若い劇団でも挑戦しやすく、大阪の劇団が助成金を得るようになる登竜門的な役割も果たしていました。
個人的にも何度もお世話になり、若い劇団にとっては大きな公演の助けになっていることも実感していました。

この助成金については、数日前から応募者などに連絡があったようですが、予算が決定しないことなどから、平成24年度上半期分は中止に。そして、今後の先行きも分からない状態になっているようです。

ただ、これについては、いろんな人から反論されると思いますが、個人的にはこの助成金は廃止か少なくとも形を変えた方がいいと思っていました。

その最大の理由は、助成の目的と成果がはっきりしないからです。
最初のアーツカウンシルの議論ではありませんが、額が小さい代わりに年間100団体以上が受けるのですが、事務局機能はほとんどないので、事前・事後の調査がほとんどできていないように思います。

その結果、知名度や活動年数で額が決まり、受ける方としても応募段階でも報告段階でもアドバイスや要求がほとんどないので、団体や個人の成長に繋がりにくい点が問題だと思っていました。

もちろん、私も舞台芸術に携わっている人間ですから、ただ助成金がなくなるのではなく、ここに使われているお金がもっと効果的な形で舞台芸術の振興のために使われて欲しいという意図で、上記のことを発言しています。

例えば、少し前にfringeブログでも関西でのロングランの減少と、それが劇場の経営圧迫、観客の現象に繋がっているという指摘がありましたが、それが正しいのであれば、「ロングラン公演への助成」などに変えて、今の数も1/10程度の団体にしか出さないが、10倍ぐらいの額が出すなどの変化はあってもいいかなと思います。このぐらいの額であれば、小劇場の1~2週間公演であれば劇場費を全部この助成金で賄うことができます。

そのようにコンセプトを明確にして数も絞れば、長期的な公演を実現するための企画性や作品性をきちんと審査することもできますし、その公演の成功点や問題点をきちんと調査していけばロングランのための知識の蓄積ができます。そして、この助成機関がロングランを今後していこうとする、次世代の劇団や団体をより効果的にサポートできるのではなどと思っていました。ここらへんは、先ほどの「分散総花的になっている」という意見に賛同する部分です(堺屋氏はもっと広い視野で指摘していると思いますが…)。

まぁ、上記は理想論ですが、少なくとも先ほどの「ナレッジシアターを世界的拠点にするための追加資金に」ぐらいは言ってもらわないと!という気持ちはあります。

悲観的な話が多いですが、7月まで予算は決まらないわけですから、こういった新しい枠組みの支援の在り方を大阪の演劇人の間で検討して、市や府に提案していくことも重要かと思われます。

ちなみに余談ですが、大阪にも千島財団の助成金のように明確なコンセプトがある助成金も出来てきました。

http://www.chishimatochi.info/found/?page_id=15

大阪は、今が悪い方に向かっている時期ではなく、変化の時期で、それがどっちにいくかを決めるのは我々の活動かなと、偉そうに思っています。まぁ、そう考えないと、大阪で活動するのがしんどく感じちゃいますからね(笑)

ひたすら長いうえに、駆け足なので叩かれそうな内容ですいません。
ご意見あればぜひ! 来月こそはこまめに丁寧に書けるように頑張ります…。