この記事は2009年8月に掲載されたものです。
状況が変わったり、リンク先が変わっている可能性があります。



大阪の動員状況についてとか

カテゴリー: とある制作の観測的ブログ | 投稿日: | 投稿者:

●「fringe blog」は複数の筆者による執筆です。本記事の筆者は 間屋口克 です。

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今回は自分がやるワークショップの宣伝のために投稿しました。
(そろそろここに投稿させてもらえなくなる気がして心配です…)

この度、私自身が所属するDIVEの5講座のワークショップのうち一つで講師をすることになりました。
数日前なのに全然宣伝できていないので、ここに投稿することにしました。

■タイトル 演劇とマーケティング
■日時   8月4日(火)19:30~21:30
■場所   ウイングフィールド

他の講座や細かい情報はこちら

今回はこの講座をやろうと思った理由について書きたいと思います。

最初に言い訳をしますと、経験も知識も浅い私自身が講師というのは荷が重いです。ちょっと名前が売れてきた若手の方がワークショップなどを開催することにあまり賛成しない立場ですので、自分がワークショップ講師になるのは気持ち悪いです。

また、「マーケティング」というタイトルもMBAとか取っていればともかく、聞きかじりばかりで話しているので正直ちょっと恥ずかしいです。

それでもやろうと思ったのは、大阪の小劇場の動員の状況・方法について考える場が欲しいと漠然と思っていたからです。

きっかけとして、平田オリザさんと内藤裕敬さんの対談で、平田さんが「(大阪では)「観客総動員数150人とかでやっている」という話を聞いて、やっと、本当に大変なんだなって思いました。」と仰っているのを読んだ時に考えるようになりました。

(http://www.banzai1za.jp/s/taidan1.html)

前後の繋がりもあるのでここだけ取り上げるのも反則ですが、初めて読んだときにちょっと違和感を感じました。
というのは、大阪の劇団の動員数はここ最近は伸びている劇団も少なくなく、底が見えないという状況ではないと感じていたからです。
200~300人の動員で低迷しているというより、500~1000人や1000人を越えたあたりで次の段階へのスタップアップを模索しているところが目立つというのが、実情に即している気がしていました。

しかし、これはオリザさんのヒヤリングが問題であるというよりは、現在の大阪の小劇場では「動員が伸びているところ」と「動員が伸びないところ」の二極化が進んでいるのだと思います。
「当たり前のことを言うな」と怒られそうですが、個人的に気になっているのが、その二極化が公演の質やジャンルというより、「動員が伸びるコツを知っているかどうか」というポイントで分かれている点です。

二極化の理由についてはいろんな要因があると思いますが、簡素化してしまうと以下のようになるのかなと推測しています。

今までの大阪の小劇場では劇団や表現者を、マスコミや劇場が観客に紹介してきて、制作者は劇団とマスコミ・劇場を繋ぐことが多かったように思います。簡単な図に書くと以下のような感じでしょうか。

劇団⇔(制作)⇔マスコミ・劇場⇔観客

これが、近年ではwebなどによる個人間の情報伝達の発達や、大阪の小劇場のボリュームの縮小の中で、マスコミや劇場が観客との接点の役割を果たしづらくなってきたのだと思います。
例えば、マスコミがブームや次の注目劇団を作ったり、劇場がある意図のもとにラインナップを揃えるという事が難しくなってきました。

こういったことは、大阪や小劇場に限らないと思いますが、Lマガの休刊や大阪での劇場すごろくの崩壊なんかは特徴的な事例だと思います。ちょっと誤解を招く言い方になりますが、大阪はここ十数年でクオリティがあれば周囲が育ててくれるミニ東京から、成長の主体性が劇団にある地方都市に仕組みが変わったような気がします。

これは限定的な知識の中で整合性をとった仮説ですので、正確かどうかはわかりません。ただ、近年の社会構造の変化が東京や他都市に比べて大阪の小劇場に大きな性格の変化を与え、その結果今までのノウハウが効率的に働きづらくなっているような気がします。
そして、従来型の集客ノウハウを取っている団体と、劇団・制作が観客に直接アクセスする方法にシフトしている団体で、動員が伸び悩んでいるところと順調なところに二分されているのではないかと考えています。

また、劇団や制作が観客にアクセスをする方法に切り替えたところもベストの手法が取れているかが疑問です。

今回、マーケティングというタイトルを選んだ理由ですが、大阪の演劇関係者の方から「マーケティング=商業主義」的な意味で使われているのを聞きます。定義しにくい言葉ではありますが、上記のような変化が起こっている大阪の小劇場において動員を伸ばしていく上で最も大切な概念が「マーケティング」ではないかと思っています。
(根本的にものを売るときに最も大切な概念がマーケティングだと言われそうですが、緊急性が高いという感じでご容赦下さい)

というのは、動員を伸ばしている劇団も観客の動員数を単純に最大化するためにセリング的な手法がメインになっているように感じます。特に公演回数が年に2回、多くても3回程度の小劇場の劇団では、セリングの欠点が表面化するのに時間がかかります。

「セリング的な手法とは?」と言われると難しいのですが、長期的に劇団のファンを増やすというより、今回の公演に一人でも多くの観客を来させようとする宣伝方法というと近いでしょうか。

こういうと熱心すぎる手売りなんかはすぐに連想されますが、平田さんも先ほどの言葉のすぐ後で「芝居を創っている本人たちが切符を売らないということで、自分のやっていることに誇りを持っていないということ。それは危機的な状況だなって。」と仰ってますし、手売りにしろ「今回の公演にまず来てもらう」という気持ちにしろ、無くてはならない大変重要なものです。

ただ、長所も欠点も考えた上でそのような行動を選択するのは正しいと思うのですが、まずは長期的な戦略(=マーケティングの視点)を持って劇団の成長を考えて欲しいです。
それが欠けていると、最終的には小劇場から観客を遠ざけることにもなってしまうと思います。

以前は、マスコミにしろ劇場にろ、観客との間で調整弁があったと思うのですが、その役割が弱くなっている昨今では、劇団自身がマーケティングの視点を持つ必要が強まっていると思います。

上記の2点が最近の大阪での動員状況を見ていて気になっていたことです。この考え方が正しいのかすら、まだ確信は持てていないのですが。このような仮説は成立するのか、その場合、個々の劇団はどのように動員を増やし成長していく戦略を考えていくのが正しいのかを多くの人と話してみたいなと思っています。

もし、ちょっと暇だしそんな話でもしてみようかなと思われた方は、4日の夜にお越しください。
そして、もう少しいろいろ自分の中で固めることができたら、宣伝に使ったお詫びにまたここで報告いたします。