この記事は2009年9月に掲載されたものです。
状況が変わったり、リンク先が変わっている可能性があります。



野外劇の雨具を考える

カテゴリー: フリンジのリフジン | 投稿日: | 投稿者:

●「fringe blog」は複数の筆者による執筆です。本記事の筆者は 荻野達也 です。

Pocket

今年の関東地方は、7月14日に梅雨明け宣言が出たあともぐずついた天気が続き、本当に真夏なのかと思える状態だった。一日中晴れということがなく、いつか必ず雨が降りそうな雰囲気だった。野外イベントを計画していた主催者も想定外だったと思う。

そんな中、千葉城前での野外劇『三条会の「八犬伝」』に7月27日足を運んだ。三条会の地元で、恒例となった夏の野外劇を一度観ておきたかったのだ。客席に屋根のない青天井での観劇、雨だけは勘弁と思っていたのだが、記録を見ると6日間の公演期間中、この夜だけ雨だったらしい。私としては不運だが、逆によく1日で済んだと思う。この夜も雨脚が開演後に弱まったし、三条会は強運の持ち主だと思う。

今回の公演では、チラシに「雨天の場合はカッパをご用意いたします」とあったので、私は折り畳み傘しか持っていなかった。渡されたカッパは100円ショップで売っているものと同程度で(近所のダイソーで購入して比べてみた)、上着だけで下はない。時間雨量1.5mmだったのでなんとかもったが、翌早朝に降った23.5mmと重なっていたら、とても耐えられなかっただろう。

三条会は「雨天の場合はカッパをご用意いたします」と書かずに、「カッパをご持参ください」と書くべきではなかったか。「カッパをご用意いたします」と書くと、観客はそれぞれ自分の理想のカッパをイメージしてしまう。そこに百均カッパ(決めつけて申し訳ないが、そうとしか思えないので)が出てくると、落差が激しい。ここは自己責任で、各自に好きなカッパを持参させたほうがよかったのではないかと思う。

維新派『呼吸機械』のサイトを見ると、「屋根もないため、防寒、防雨等の準備をされたうえでご来場ください」と明記している。「お尻が痛くなる方もいらっしゃると思いますので、必要な方は座布団などのご持参をおすすめします」とまで書いている。このように、野外劇では客席の状況を紹介し、必要な準備は観客にさせたほうがいいのではないだろうか。野外コンサートでもカッパは持参が基本だ。今回たまたま雨天は1日だけだったが、6日間すべてが雨でもおかしくない雲行きだった。そうなると、カッパ代だって馬鹿にならない。

カッパの持参と併せて書くべきなのは、傘の禁止だ。この日は最後列の中年カップルが傘を差していたので、スタッフが「他のお客様に危険な場合があるので……」とやめさせていた。これも最初から傘の禁止を明記しておけば、トラブルが避けられると思う。野外コンサートでは、傘の禁止をはっきり謳っている場合が多い。

そうは言っても、カッパを忘れてくる観客も中にはいるだろう。そういうときのために、百均カッパはある程度用意して有料販売すればいい。その状況では不可欠なものなので、観客も納得して買うだろう。好天で出番がなければ、他の野外劇に卸せばいい。そうやって、野外劇の雨具は観客の責任という風にしたほうがいいと思うのだ。

この日、私がことさら雨を気にしたのは、バッグの中にノートパソコンが入っていたからだ。事情があって、どうしても持参したまま会場に行かざるを得なかった。最寄りの千葉モノレール県庁前駅でコインロッカーを探したが、見当たらなかった。受付テントで預かってもらいたかったが、そんな雰囲気でもなかった。百均カッパの裾でなんとかガードしながら観たわけだ。

私の前方に座った若い女性客は、大きなビニール袋を持参してリュックをすっぽり覆っていた。手慣れた様子で、私も用意すればよかったと激しく後悔した。「雨天の場合はカッパをご用意いたします」と書いてあると、なんだか万全の体制が整っているような気がして、すっかり油断してしまったのだ。

カッパを提供するのは三条会のホスピタリティだと思う。それはわかる。夏の野外劇だから、多少濡れるのもアリだろう。それもわかる。そういうことも含めて野外劇の醍醐味なのだと思うが、観客だっていろいろ事情がある。雨具は自己責任で用意させたほうが、意識のズレが防げていいのではないかと実感した。