この春に演劇界が失ったものは少なくない。
朝日舞台芸術賞は、賞の枠組みを変更した矢先だったので、まさかの休止だった。ダンス色を鮮明に打ち出していたので、関係者の衝撃も大きかったのではないかと思う。「百年に一度」と言われる経済危機を他人事と思っていた演劇人も多いようだが、経済は確実に芸術にも影を落とす。演劇の現場に関係なくても、観客は大いに関係がある。そういう当たり前の感覚を忘れてはならない。
シアターテレビジョンの編成方針変更にも驚いた。親会社の方針のようだが、従来の番組を見るために契約していた視聴者へ事前説明が遅れたのは信じられない。事業継続のために番組を変えるにしても、有料チャンネルとしての手続きというものがあるだろう。「シアターテレビジョン」というチャンネル名も変えるべきではないか。ここは開局以来、放送権料をもらうのではなく、カンパニー側が持ち出しに近い形で収録に協力してきたはずだ。冷静になるよう書いている人もいるが、他の局が舞台中継するのとは訳が違う。コンテンツホルダーは怒ってよい。
著名だったブログも、いくつも更新が止まってしまった。個人がやっているものは、やはりいつなくなっても仕方ないのだ。個人が運営するとは、そういうことなのだ。
中島梓(栗本薫)さんの逝去については、「週刊StagePower」が詳しい。どちらかといえばミュージカル畑の方だったが、小劇場界で交流のあった人も少なくないだろう。ネットや著書で闘病記はずっと拝見していた。ご冥福をお祈りする。