この記事は2007年12月に掲載されたものです。
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赤坂RED/THEATERが起こす“赤い革命” 

カテゴリー: しのぶの東京晴れ舞台 | 投稿日: | 投稿者:

●「fringe blog」は複数の筆者による執筆です。本記事の筆者は 高野しのぶ です。

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 365日間欠かさず劇場に通っても、全ての演劇公演を観つくすことが不可能な東京で、何を観るべきかを決めるのは楽しみでもあり、同時に悩みでもあります。
 その悩みをある程度解決しつつ、観客の好奇心を刺激する新しい世界へと導いてくれるのが“劇場”であってくれたらと、つねづね思います。作家や演目、出演者などについての知識がなくても、劇場を信じてチケットを買えるからです。

 私が年会費を支払って会員になっている劇場は、公立だと新国立劇場世田谷パブリックシアター、民営ではこまばアゴラ劇場王子小劇場です。これらの劇場はラインナップに個性があり、独特の主張や新しいことにチャレンジしようとする姿勢が感じられます。私はそんな元気な劇場と一緒に、舞台芸術を楽しみながら学ばせてもらっています。

 最近気になってきたのが2006年末にオープンした赤坂RED/THEATERです。はじめて伺ったのが映画監督の本広克行さんが演出された『Fabrica[10.0.1]』。劇場によるプロデュース公演『絢爛とか爛漫とか』も今年5月に上演されました。その後、中野成樹+フランケンズ真心一座身も心も山の手事情社ポツドールシベリア少女鉄道など、今の東京の小劇場界を牽引する団体がラインナップに名を連ね、Team申プロペラ犬という映像の世界で活躍する有名俳優の2人芝居もその中に加わっています。

 さらに先月、赤坂RED/THEATERが大胆にその姿勢を示す新プロジェクト「赤坂RED/REVOLUTION」が発表されました(私のサイトでもご紹介しました)。劇場が上演する戯曲と演出家を決定し、全キャストをキャリア、ジャンル、有名・無名を問わない、完全公募のオーディションによって選定します。書類審査合格者が上演台本を購入し、自分が演じたい役を指定して次の審査に挑むのです。有名な作・演出家や俳優ばかりがもてはやされることに少しずつ飽きてきた一演劇ファンとしては、待ちに待った企画の誕生でした。※オーディション応募〆切は12/25(火)消印有効。

 イープラスの得チケ情報や主催団体・劇場からのメルマガなどでチケット購入者への特典のお知らせが届くと、ちょっと嬉しい気持ちの裏で「あぁ、この公演は集客が伸び悩んでいるんだな」と邪推してしまいます。この数ヶ月でそう感じることが多くなってきました。それはインターネットを利用した観客への直接的な広報・宣伝手段が発達したからでもありますが、「想定していたよりも観客がその公演に興味を持たなかった」というケースが増えたのが原因ですよね。もっと言うと、「この有名俳優が出ているから、これだけの集客が見込める」という計算が成り立たなくなってきたのではないでしょうか。

 つまり、演劇の観客は有名俳優見たさだけでチケットを買うことを控えるようになってきたのだと思います。開幕まで待てばネット検索をして感想が読めますし、信用できる友人からのクチコミも携帯メールでオンタイムにGETできますしね。当日券予約のシステムが充実してきたのも、その傾向の表れかもしれません。
 来年3月の赤坂RED/REVOLUTION第一弾『東京』(作・演出:赤堀雅秋)が演劇界の事件となってくれることを期待したいと思います。