この記事は2006年8月に掲載されたものです。
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必見『夕暮れ鬼とテディベア』

カテゴリー: fringeのトピック以前 | 投稿日: | 投稿者:

●「fringe blog」は複数の筆者による執筆です。本記事の筆者は 荻野達也 です。

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こまばアゴラ劇場「夏のサミット2006」参加のin→dependent theatre PRODUCE『INDEPENDENT』を13日に観ました。

in→dependent theatreグループ(大阪・日本橋)が毎年11月にプロデュースしている一人芝居フェスティバル『INDEPENDENT』5年間の上演作品50本から、厳選された10本を大阪・東京で再演するものです。東京公演はお盆期間中ということで、14日(月)も含め、約30分の一人芝居を連日10本上演します。便宜上、3本・3本・4本のブロックに分かれていますが、1枚のチケットで終日出入り自由で、ブロックの合間も劇場内にいることが出来ます。こまばアゴラ劇場の劇場支援会員オンライン予約画面がこの点わかりにくくなっていましたが、要は1日券しか存在しないわけです。前売2,000円(当日2,500円)で10本(約6時間)観られるわけで、これは格安だと思います。しかも1ドリンク付きで、ビール(発泡酒などではなく本物のビール)もあります(2本目から300円)。前売特典として配られるパンフレット(A4判・4C20ページ)は、10本の作・演出家と俳優のインタビュー、『INDEPENDENT』5年間の上演記録など、資料的価値が高いです。

劇場の使い方も非常にユニークで、客席の出入りにはロビー奥のエレベーターを使用します。相内唯史プロデューサーによると、ブロックの合間も常時DJを流し続けるため、階段を開放すると近隣に音が漏れてしまう恐れがあり、普段使わないエレベーターになったそうです。客席は通常のイス席以外に、壁際にテーブルを備えたものも。ドリンクの引き換えカウンターが下手後方につくられ、上演中も自由に飲めます(上演中は暗いため、引き換え自体はブロックの前後しか出来ません)。客席の養生は特にされていませんでした。公式ブログによると「座席配置はクラブやライブハウスのような特殊なスタイル」のことで、舞台に集中したい観客のために特別指定席の用意もあったそうですが、東京は普通に「1ドリンク付きの公演」という雰囲気でした。次回はぜひ『cafe independent』のようなつくり込みを期待します。

私は時間の都合で10本中4本しか観られませんでしたが、『夕暮れ鬼とテディベア』(脚本・演出/坂本見花=浮遊許可証、出演/片岡百萬両=ミジンコターボ)が必見です。ぬいぐるみの視点による作品ですが、驚愕の展開で胸を打ちます。着ぐるみ姿の片岡氏は西田シャトナー氏主宰のLOVE THE WORLD出身で、演技ではその影響も見られますが、モノを通して人間を描く手法が物語性を際立たせており、ぬいぐるみがゆえに抑制された感情表現も相まって、観る者に強烈な印象を残します。この作品だけで2,000円の価値があると思いました。14日は15:30からの上演ですが、片岡氏によるともう再演はないだろうとのことですので、お観逃しなく。

上演時間30分とはいえ、絶対的な間とテンポが要求される一人芝居を成立させられる俳優がこれだけ存在すること自体が関西の実力だと思いますし、この点は東京の演劇人も大いに刺激になるのではないでしょうか。