私も村上春樹氏の生原稿流出事件の詳細を知りたくて『文藝春秋』4月号を買ったクチですが、その冒頭で触れていた文芸業界における本人がいないところでの悪口については、演劇界も似たところがあるのではないかと思いました。
本人に対しては褒めそやし、いなくなると酷評するのは、演劇の現場でもよく見かけるような気がします。今後の関係を考慮しての行為なのでしょうが、そこまでする必要があるのかなと思います。逆に周囲の人がはっきり物を言ってくれないことは、相手の成長を阻んでいるような気さえします。身内だけの酒の席でしゃべっている内容を、もう少し本人に伝えてもいいんじゃないかと思います。
褒めるだけの人より、敢えて本音を伝えてくれる人のほうが信頼出来ると思いますし、もし本音を伝えて怒る相手なら、それはそれだけの器なのだと思います。波風立てずにお世話を言うのは簡単なことですが、そこで敢えて本音を語ってくれる意味を考えてほしいと思います。
作品に対して客観的な視線を忘れてはならない制作者にとって、酷評してくれる人は本当にありがたい存在です。ときには思い込みや理屈に合わない意見もあるでしょうが、お世辞を聞くよりずっと価値があります。率直な感想を述べて機嫌を悪くする制作者に出会うと、「だったらアンケートだけ読んでれば?」と思います。