多くの若手カンパニーにとって、ザ・スズナリやTHEATER/TOPSは一度は使ってみたい憧れの劇場だと思います。「小劇場すごろく」の是非は別として、こうしたステイタスを感じる劇場で公演したいというのは、制作者にとって自然な気持ちだと思います。
けれど、それを他の劇場で口にするのは配慮が必要だと思います。自分たちの内なる目標とするのはいいけれど、あからさまに「次は××でやりたい」「××に向けての作品」などと言うのはどうでしょう。それは、いまこの瞬間を支えてくれている周囲の関係者に対して、とても失礼なことではないでしょうか。
例えば、あなたが中小企業Aの人事担当者だったとします。面接で「本当は大手企業Bに行きたいけど、とりあえずAに入ります」と言う人を採りたいと思いますか。Bへのキャリアプランを描くの自由だけれど、それをAで公言するのはどうでしょう。まずは与えられた場でベストを尽くすのが筋だと思います。
演劇も「売れてなんぼ」のところがありますから、自分たちのことしか見えないカンパニーもあるでしょう。けれど、その裏側を支える制作者なら、自分たちを育ててくれた過程にも敬意を払ってほしいと思います。制作者である前に、よき社会人であってほしいと思います。