昨年、東京で公演を重ねていた若手カンパニーが改名をしました。
公式サイトを見ると旗揚げから支えた制作者の退団という出来事があり、一時は解散も考えたようです。そこで組織を変えて心機一転、名前も新しいものにしたというですが、改名のもう一つの理由として、「お客様が覚えにくい」と説明されていたのには驚きました。それはないんじゃないか、と思いました。
確かに以前の名前は特殊な専門用語で、多くの観客が耳にしたことのない言葉でした。「覚えにくい」という意見もあるでしょうが、そんなことは旗揚げのときからわかっていたはず。「覚えにくい」を理由に改名すると、それまでの4年半はなんだったのかということになります。
以前の名前は少し長めでしたが、含蓄のある専門用語で、私は一発で覚えました。「お客様が覚えにくい」というのは、本当に一般客の多数意見なのでしょうか。名前というのは個性です。覚えにくい名前だからこそ、逆に注目を集める場合もあります。名前が浸透していないことを自覚していたなら、逆にそれをバネにすべきだったのではないでしょうか。
作品が本当に魅力的なら、観客はイヤでも名前を覚えるでしょう。このカンパニーは私も足を運んだことがあります。丁寧に人物を描いたウェルメイドな作風で好感を抱きましたが、この集団にしかないオリジナリティ、この集団なら次回もぜひ観たいと思わせるオリジナリティが足りないように感じました。名前を覚えてもらえない真の理由はなんなのか、それを突き詰めて考えない限り、改名の効果は出ないのではないでしょうか。
厳しい書き方になりましたが、「覚えにくい」を理由にしてはいけないと思いましたので、率直に記しました。仮に「覚えにくい」が本音でも、それは観客に言うべきことではありません。なぜなら、その名前で4年半応援してくれた観客を裏切ることになるからです。