ウェブログ「某日観劇録」が「芝居の費用を計算する」という長文のアーティクルを書かれています。純粋な観客の方ですが、公表されている資料を基に積算されていて、基本的な考え方は合っていると思います*1 。
結論として客席1席あたり商業演劇は4,755円、小劇場は4,615円ぐらいではないかということで、大差ないことになります。小劇場は週末のみの公演・経費300万円で計算されていますが、劇場費や人件費の効率が悪いため、公演期間が延びるほど1席あたりの経費は膨らみ、ロングランなら完全に中劇場・大劇場を上回ってしまうでしょう。
中劇場なら数日で済む公演を敢えて小劇場で2週間やるのは、その距離感を大切にしているためです。中劇場が借りられないわけではなく、作品のために小劇場を選んでいるのです。この点は観客の方々がもっと実感し、評価していただいてもいいと私は考えます。寿司屋はトロばかり注文されると赤字だそうですが、小劇場公演はお客様のためにトロだけを出しているようなものなのです。
「某日観劇録」が指摘されているように、現状ではカンパニーの経営を考えると、より大きな劇場を目指すのは仕方ないことですが、それってつまらないことだなと私は感じています。寿司屋に「トロはお一人様2カンまで」と貼ってあったら寂しいでしょ。猫も杓子も中劇場を目指すというのは、そういうことなんです。小劇場のイスをよくして、至近距離で芝居を楽しむことがステイタスであるかのような発想の転換を私はさせたい。格闘技のリングサイドが数万円で売れるように、小劇場で数万円のチケットがあってもいいじゃないですか。
そんなチケット代を払えるかという方には、こんな発想はいかがでしょう。演劇の経費のうち、文芸費と出演料の占める割合は約25%と言われています。チケット代が3,000円なら、劇作家・演出家・役者に入るのは750円ということです。ならば劇場費のかからない稽古場で、スタッフワークなしの素舞台で上演し、告知はWeb上のみにしたら、この750円で公演が成立する理屈になります。稽古場で通し稽古を見学するレベルになってしまいますが、それでもいいという方なら750円でお見せ出来るわけです。これが公演かどうかは意見が分かれると思いますが、本公演に先立つトライアウトを稽古場で上演し、チケット代は本公演の4分の1にするという考え方は制作上ありだと思います。
実際には、こまばアゴラ劇場のように劇場費無料のところもありますし、公演期間が長くなれば劇場費を割り引いてくれるところもあり、それらと助成金の合わせ技で小劇場ロングランがなんとか成立しているわけです。いくら芝居が好きでも、上演するたびに赤字が増えるようなバカなことはしたくありません。そのギリギリの兼ね合いの中、制作者は日々試行錯誤しているのです。
- 「某日観劇録」のサーバ移行に伴い、再掲載された記事にリンクし直しました。オリジナルの内容はInternet Archive「Wayback Machine」(2005年3月6日保存)で確認出来ます。 [↩]
続・芝居の費用を計算する
以前書いた「芝居の費用を計算する」でfringeからトラックバックをいただいたのですが、そこで計算し忘れた部分を指摘されたので追記しておきます。公演を追加する場