演劇の創客について考える/(7)ポーラ美術館のような劇場自体のイントロダクションムービーを各劇場につくってほしい

カテゴリー: 演劇の創客について考える | 投稿日: | 投稿者:

●「fringe blog」は複数の筆者による執筆です。本記事の筆者は 荻野達也 です。

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●分割掲載です。初めての方は(予告)から順にご覧ください。

演劇作品の予告映像(トレーラー)をつくる上演団体は増えましたが、劇場の紹介映像はほとんど見かけません。本連載の「(4)創客に必要なのは劇団や演劇人のガイドブックではなく劇場のガイドブック」では、劇場自体の紹介を主眼にした親しみやすいガイドブックの必要性を訴えましたが、同様に劇場自体のイントロダクションムービーを制作してほしいと思います。

箱根にあるポーラ美術館では、企画展の紹介映像とは別に、美術館自体のイントロダクションムービーを公開しています。「秋編」「夏編」が制作されていますが、「たまには美術館もいいな」「昔行ったことがあるけれど、もう一度行ってみようかな」と思わずにはいられない内容です。


ポーラ美術館の場合、立地的に旅行を兼ねるものになりますので、自然を強調した構成になっていますが、都市部の劇場なら、逆に喧騒の中のオアシス、自分自身と出会う場として訴求すればよいと思います。常設展の作品が効果的に使用されていますが、劇場なら過去の代表作やフランチャイズカンパニーの素材を使わせてもらえばいいでしょう。後半、ポストカードが並ぶミュージアムショップは美術館ならではのシーンですが、劇場ならロビーのポスターやチラシでカオス的な雰囲気を出す方法もあるでしょう。

創客のためには、ポーラ美術館のような叙情的なつくりがよいのではないかと思いますが、アーティストとコラボレーションした映像にしたい場合は、今年4月にオープンした大分県立美術館の開館100日前プロモーションビデオ「踊るミュージアム」が参考になるでしょう。出演は大分出身のバレエダンサー・首藤康之氏です。

多くの演劇人が、劇場には「場の力」があると言います。けれど、実際には演劇のプロモーション=作品のプロモーションになっていて、劇場自体を主役にしたアプローチが少なすぎるのではないかと感じます。普通の人は、劇場を単なる〈ハコモノ施設〉だと思っているかも知れません。劇場に「場の力」があり、特別な存在だと言うのなら、演劇を観たことがない人には、こうしたイントロダクションムービーで訴えないと伝わらないと思います。

イントロダクションムービーは大劇場だけのものではありません。むしろ、老舗の小劇場こそエピソードに事欠かないのではないかと思います。趣向を凝らした劇場自体のイントロダクションムービーが、各劇場公式サイトのトップを飾るようになれば、敷居もずいぶん下がるのではないでしょうか。

あなたが箱根旅行を計画し、ポーラ美術館のサイトにアクセスしたと想像してみてください。トップページに出ているイントロダクションムービーを見たら、絶対に行きたくなると思いませんか。

大切なのは何を見るか ではなく
誰と どんな場所で それを感じるか

(中略)

何を思い 何を感じるのかを知ること
それが自分と向き合う時間

イントロダクションムービーの最後に登場する正面エントランスのアプローチ、箱根の景観に配慮して大部分が地下につくられた美術館への誘いは、本当にワクワクします。

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